「歯周病を予防」するため日常生活で気をつけることはご存知ですか?【医師監修】

歯周病は、現代日本人のなかで患っている方が少なくなく、歯を失う主な原因の1つとしてあげられています。自分の歯で健康に過ごすためにも、歯周病はしっかりと予防することが大切です。

この記事では、歯周病の具体的な予防方法や症状、原因について詳しく解説します。歯科医院での予防方法だけなく、自分で行える予防方法なども具体的にお教えします。

本記事が、皆さんの歯周病や歯の健康に役立つことができれば幸いです。

歯周病について

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歯周病とはどのような状態ですか?

歯周病とは、歯肉が炎症したり、歯を支える骨が溶けてグラグラになってしまったりする病気です。歯と歯茎の隙間に細菌が入り込み、感染することで引き起こされます。健康な口腔内環境では、歯は歯根膜という繊維によって、骨から抜け落ちないようになっているのが通常です。しかし、歯周病になることによりその組織が破壊され、最終的には歯が抜け落ちてしまいます。日々の生活習慣によって起こる病気のため、現在では生活習慣病の1つとして数えられています。

歯周病はどのように診断されますか?

歯周病は初期の段階だと、ほとんど自覚症状がありません。そのため、歯科医院を受診してから病気が発覚することも少なくありません。歯周病の検査には、歯周ポケットの深さを調べるプロービング検査レントゲン検査、歯の周辺の汚れであるプラークを調べる検査などがあります。歯周ポケットとは、歯と歯肉の間にある隙間のことです。歯周ポケットは歯肉が腫れると深くなり、深くなれば深くなる程、歯周病が進んでいると考えられています。この歯周ポケットの深さで、重症度をはかります。レントゲン写真では、歯周病が進んだことで歯を支えている骨が溶けている範囲などを診ることが可能です。どれだけ溶けているかの程度なども正確に確認できます。プラークの付着は歯周病の直接的な原因です。染色液を使って付着率を調べ、治療の指標に用います。

歯周病の症状と原因

歯の模型とオーラルケアイメージ

歯周病の症状を教えてください。

初期は症状がほぼ見られませんが、細菌が炎症を起こすようになると、歯肉が腫れて出血などが見られます。この状態が歯肉炎と呼ばれるものです。そこからまた進んでいくと歯周ポケットがどんどん深くなり、歯を支えている繊維が壊され、歯がグラグラしてきます。この状態が歯周炎と呼ばれる状態です。その他の症状として見られるのは、歯周ポケットからの排膿や口臭などです。歯茎の腫れや出血も引き続き症状として見られます。また、歯茎の炎症は急激に起こることがあり、急性症状として強い痛みが引き起こされることもあります。歯周病は進行し、歯を支えている骨が少なくなると、歯を噛み合わせたときに痛みが生じることがあるため注意が必要です。健康な歯と比べ、噛み合わせがうまくいかなくなるため、歯が大きく動くなどの症状が見られることがあります。

歯周病になりやすい生活習慣を教えてください。

歯磨きの際に磨き残しがあると、歯周病の原因であるプラークが残ったままになるため、歯周病になりやすいです。そのため、歯磨きを怠っているということがあれば、もちろん歯周病の原因になるといえます。また、喫煙の習慣がある方は、非喫煙者に比べて歯周病のリスクが高いです。喫煙者は歯周病治療の効果が低く、治りも悪いです。たばこは口にくわえるもののため、歯は直接影響を受けます。たばこの有害物質は歯茎などから直接吸収され、血管が収縮し、歯茎の血流を滞らせます。血液循環が悪化すると、歯周病の原因となる細菌が繁殖しやすくなるため、喫煙は歯周病になりやすい生活習慣の1つといえるでしょう。

糖尿病などの全身疾患は歯周病の原因となりますか?

糖尿病などの全身疾患と口腔内の疾患は関連していることが少なくありません。糖尿病の症状として、免疫機能の低下が見られます。免疫力が低下すると細菌にも感染しやすくなりますが、それは口腔内も例外ではありません。歯周病の原因となる細菌にも感染しやすくなり、歯周病を悪化させるため、歯周病は糖尿病の合併症としても見られています。また糖尿病だけでなく、心疾患や慢性腎臓病、がんなどの病気との関連も報告されています。これらの例からも、全身の健康状態が口腔内の健康にも影響を与えているといえるでしょう。

歯周病の予防方法

歯ブラシ

歯周病を予防するための正しい歯磨き方法をおしえてください。

歯周病を予防するためには、歯の汚れであるプラークを取り除くことがとても重要です。プラークは毎日の歯磨きを正確に行うことで、少なくない量を取り除くことができます。歯磨きの際は1本ずつ丁寧に磨きましょう。適した磨き方は人それぞれ違いますが、歯周病予防や治療に有効といわれている磨き方が2つあります。1つ目は、スクラッピング法です。歯の表側は歯ブラシの毛先を歯に直角に当て、裏側は45°で当てながら軽い力で小刻みに動かします。2つ目はバス方法で、歯の両面どちらも歯ブラシの毛先を歯と歯茎の境目に45°で当てて、軽い力で小刻みに動かす方法です。それぞれ、歯が健康な方、歯茎に炎症が見られる方に向いています。歯ブラシをうまく使い、汚れをしっかり落とし、歯を清潔に保ちましょう。

効果的に歯磨きが行える歯ブラシの選び方を教えてください。

正しく歯磨きを行うには、歯ブラシ選びも重要です。予防に効果的な歯ブラシは、毛先が真っすぐのもので、3~4列ぐらいのものです。清掃がしやすく、通気性がよいものを選びましょう。また、毛先は幅が1cm以内で高さが1.2~1.4cm、長さは2.2cm~3cmのものが使いやすいです。健康な口腔内環境の方は普通からやや硬めのものを選び、歯茎に炎症が起きてしまっている方はやわらかめのものを選ぶのがおすすめです。磨く際は、鉛筆を持つのと同じ持ち方で持つと磨きやすいでしょう。

歯周病を予防するための歯ブラシ以外の効果的な口腔ケア用品を教えてください。

歯周病予防の基本は日々の歯磨きですが、それだけでは予防としては不十分といえます。歯磨き以外にも、歯間ブラシやデンタルフロスを使って隙間の汚れをしっかり除去しましょう。歯と歯の隙間に入れて、ゆっくりと歯茎などを傷つけないように磨いていきます。ブラシに太さが適切でないと歯や歯茎を傷つける恐れがあるため、自分の歯に合った適切なサイズを選びましょう。歯の隙間が大きい場合は歯間ブラシを使い、歯間ブラシが入らない部分はデンタルフロスを使いましょう。また、普通の歯ブラシだと、ヘッドが大きく奥歯などが磨きにくいことがあります。その場合は、部分磨き専用歯ブラシを使用するのがおすすめです。部分磨き専用歯ブラシを使用することで、奥歯や歯並びの悪い部分を磨くことができます。

歯周病を予防するため日常生活で気をつけることを教えてください。

歯周病の発症や悪化の原因となる喫煙は避けましょう。たばこに含まれているタールは、プラークの付着率を上げるため、日々のケアも大変になります。歯周病関連以外でも、有害物質も含まれているため、避けるほうが健康な日常生活を送れるでしょう。たくさん食べると、その分プラークは付きやすくなります。暴飲暴食は避け、食べ物は適切な量を食べましょう。ゆっくり噛むことで満足感を得ることができます。また、バランスのよい食事を心がけることも大事です。食物繊維やビタミンA、C、Dが豊富な食べ物をとりましょう。ストレスも歯周病の原因となります。自分なりのストレス発散方法を見つけ、実行しましょう。

どのくらいの頻度で歯科医を受診すればよいですか。

日本歯科医師会は、年1回の歯科検診と年2回の定期受診を推奨しています。日々の歯磨きだけではすべてのプラークや歯垢は取り除けず、歯周病の予防としては不十分です。定期的に歯科医院に通い、歯垢を取り除いてもらいましょう。また、歯科医院では自分に合った正しい歯磨き方法を教えてもらうことができます。歯科医院でのケアと自分でのケアで歯周病を予防していきましょう。

編集部まとめ

歯を診てもらう患者
歯周病は細菌に感染することで起こり、進行すると歯を失う原因になります。

歯周病は歯磨きで取りきれなかった汚れが主な原因で、その汚れを取り除くことが予防になります。

歯周病の第一の予防は、日々の歯磨きです。正しい方法で歯を磨き、できる限り汚れを取り除きましょう。

自分だけのケアではすべての汚れを取り除くことは不可能なため、定期的に歯科医院を受診し、歯石を取り除いてもらうことも大切です。

この記事の予防法を確認し、歯周病を防いで健康な口腔内環境で過ごしましょう。

参考文献

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