少子高齢化や都市部への人口集中に伴い、地方の実家を相続したものの、住む予定がないまま「空き家」として放置している方は少なくありません。使わないなら費用はかからない、と思われがちですが、実際はそうではありません。
本記事では、空き家にかかる年間の維持費用と、水道光熱費をゼロにできるのかについて解説します。
空き家の年間維持費は意外にかかる
実家を空き家として放置する場合、最低限かかる費用として「固定資産税」「保険料」「水道光熱費」「管理・修繕費」が挙げられます。本章で、順に見ていきましょう。
1. 固定資産税・都市計画税
不動産を所有しているかぎり、毎年必ず支払う必要があるのが固定資産税と都市計画税です。例えば評価額が800万円程度の一戸建て住宅なら、軽減措置を受けたうえで年間10〜15万円程度が一般的な目安です。
ただし、空き家の管理が不十分で「特定空き家」や「管理不全空き家」に指定されると、軽減措置が外れ、税額が一気に6倍程度に跳ね上がるケースもあります。これは大きなリスクです。
2. 火災保険・地震保険
空き家でも、万が一の火災や自然災害に備えて保険には加入しておくべきです。
保険料は建物の築年数や立地、構造によって変動しますが、年間で2〜5万円程度が一般的です。空き家向けの保険商品を選ぶことで、保険料を抑えることも可能です。
3. 水道・電気・ガス代
使っていないからといって、水道・電気・ガスを完全に解約してしまうと、再契約時に費用がかかったり、設備の劣化が進んだりする恐れがあります。通常は、基本料金だけ払い続けるという選択をする方が多いです。
例えば、水道基本料金は月1000〜2000円、電気の基本料金は20アンペア契約で月500〜1000円前後。ガスも同様に月1000円前後かかると考えられます。年間合計では、水道光熱費だけで4〜6万円程度になります。
4. 管理・修繕・草刈りなど
空き家でも定期的に換気・清掃をしなければ、建物の傷みが早まり、資産価値が下がってしまいます。また、庭の草木が伸び放題になれば、近隣トラブルや害虫の発生にもつながります。
自分で管理できる場合は費用を抑えられますが、管理代行業者に依頼する場合、年5〜10万円程度が目安となるでしょう。加えて、台風被害による修繕や雨漏り対策など、突発的な費用が発生することもあります。
■年間の維持費合計は?
これらの項目を合算すると、空き家の年間維持費は安くても15万円前後、高ければ30万円以上にのぼることもあります。何もしていないように見えても、実は継続的にコストがかかっているのです。
水道光熱費は0円にできる?
「誰も住んでいないなら、水道や電気を完全に止めれば費用がゼロになるのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、必ずしもそうとはかぎりません。
本章では、水道・電気・ガスの契約を完全に止める場合の注意点や、費用を抑えるための現実的な方法について説明します。
完全解約のデメリット
水道・電気・ガスを完全に解約すると、確かに基本料金はかからなくなります。しかし、再度使用する際に契約の再開手続きや機器の点検・修理が必要になり、場合によっては数万円のコストが発生する可能性もあります。
また、水道管やガス管を長期間放置すると内部の劣化や腐食が進み、将来的に使用できなくなるケースもあるため、通水・通電は定期的に行うことが望ましいとされています。
削減できる範囲での工夫
水道・電気の契約を見直し、最安プランに切り替える、あるいは契約アンペアを下げることで基本料金を下げることができます。例えば、20アンペアから10アンペアにするだけでも、月数百円は安くなります。
また、一部の地域や事業者では電気や水道を一時的に「休止状態」にしておくことも可能で、その間は基本料金が一部免除されるケースもあります。各自治体や業者に確認して、空き家の実情に合った最適なプランを選ぶのが大切です。
空き家放置は資産の目減りにつながる
空き家の維持費をもったいないと思って放置し続けると、いずれは資産価値の大幅な下落や、修繕不能なダメージにつながる恐れがあります。さらに、行政から特定空き家や管理不全空き家に指定されると固定資産税の増税や、最悪の場合は強制撤去の命令が出る可能性もあります。
こうしたリスクを避けるためにも、空き家は定期的に管理し、将来的な活用(売却・賃貸・リフォーム等)を視野に入れた対応が必要です。
空き家の維持費を把握して計画的に管理しよう
実家を空き家として放置しておくと、年間で15〜30万円程度が一般的な目安ですが、建物の状態や管理方法によってはさらに高額になる場合もあります。
水道光熱費は使っていなくても基本料金が発生し、完全にゼロにするのは現実的ではありません。設備の維持や再利用のしやすさを考慮すると、最低限の契約を継続しつつ、できるだけ負担を抑える工夫が求められます。
「使わないから放っておいてもいい」と思いがちな空き家ですが、放置によるコストやリスクは決して小さくありません。所有しているかぎり、責任を持って管理することが、将来の選択肢を広げる第一歩です。
出典
内閣府大臣官房政府広報室 政府広報オンライン 空き家の活用や適切な管理などに向けた対策が強化。トラブルになる前に対応を!
国土交通省「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)
国土交通省 管理不全空家等及び特定空家等に対する措置に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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