ウクライナ侵攻をめぐり、ロシアはイランから大量のミサイルや無人機の支援を受けてきた。そんな中東の友好国イランを突然、イスラエルによる大規模攻撃が襲った。プーチン政権にとっては想定外の事態で、攻撃から1週間がたつも、対応に苦慮する様子が見える。
■イランを守る姿勢は見えず
イスラエルとイランの軍事衝突が続く中、ロシア第二の都市サンクトペテルブルクで今週、国際経済フォーラムが開かれた。20日、メインイベントに登場したプーチン大統領は、中東情勢についても言及。「原子力の平和利用を含めた、イランの正当な利益のための戦いを支持する」と述べ、イランを擁護した。
しかし、中東の友好国を本気で守る姿勢は見えてこない。ロシアはイスラエルとイランの双方と接触するも、仲介役は目指さず、あくまで紛争解決のアイデアを提供していると述べるにとどめた。
プーチン大統領は14日、アメリカのトランプ大統領との電話会談で「イスラエルとイランの仲介役を担う用意がある」と伝えていた。しかしトランプ大統領からは「まずは自分のところを仲裁してくれ。中東は後だ」と突き放されたと報じられている。
また国際経済フォーラムで各国の通信社と懇談した際、プーチン大統領は「イランは軍事支援を求めていない」とも述べた。両国の包括的戦略パートナーシップ条約には、北朝鮮と違い、軍事条項は含まれていないとも指摘。軍事支援に動く姿勢は一切見せなかった。
■プーチン大統領の“誤算”
写真:代表撮影/ロイター/アフロ プーチン大統領とイラン・ペゼシュキアン大統領(今年1月)
ロシアの独立系メディアは20日、ロシアの外交筋の話として「プーチン政権はイスラエルとイランの軍事衝突の勃発を予測できず、対応に苦慮しており、イランを支援する力もない」と伝えた。軍事行動に否定的なトランプ大統領なら、ネタニヤフ首相の強硬姿勢を止めるはずだと評価していたようだ。
プーチン大統領は先制攻撃を加えたイスラエルを非難するも、それ以上の対応がとれないまま、衝突から1週間が経過。イランの苦境はより鮮明となっている。
■イランの現体制が崩壊すれば…ダメージ必至
こうした中、プーチン大統領は19日、中国の習近平国家主席と電話会談し、中東情勢をめぐって協議した。両国はイスラエルによる攻撃を非難し、外交的な解決を求める方針で一致した。今のロシアにとっては、アメリカによるイランへの攻撃を食い止めることが最優先事項となっている。そのために両国が連携し、けん制した形だ。
またイスラエルは、イランの最高指導者ハメネイ師の暗殺や政治体制の転換といった狙いも排除してない。もしもイランの現政権が崩壊すれば、去年のシリア・アサド政権の崩壊に続くことになり、中東におけるロシアの影響力の低下は致命的となる。このまま手をこまねいて友好国をみすみす見捨てるようになれば、威信の失墜にもつながりかねない。今後も対応に苦慮することになりそうだ。
最終更新日:2025年6月21日 15:23
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