親や祖父母から相続があると、意図せず不要な土地を相続するケースもあるかもしれません。不要な土地を相続したときは、国へ土地を渡す形で手放せる制度があるので、利用を検討しましょう。
今回は、相続した不要な土地を手放せる制度の概要や条件、固定資産税を支払うのとどちらが負担は軽くなりやすいかなどについてご紹介します。
相続したいらない土地を手放せる制度とは
いらない土地があるとき、「相続土地国庫帰属制度」を利用できる可能性があります。相続土地国庫帰属制度では、条件を満たしていれば、相続放棄をせずに不要な土地を国のものにできます。
内閣府大臣官房政府広報室の政府広報オンラインによると、制度ができた背景の1つは「所有者不明土地」です。所有者不明土地は、相続時に土地の所有者として登記をしないことで、その土地の所有者側からなくなったり、分かっていても連絡が取れなかったりする土地を指します。
所有者不明土地は、管理をする人が不在なので、空き地のまま放置され治安の悪化につながったり、環境の悪化を招いたりするおそれがあります。また、防災工事が必要になったときに交渉する相手が分からず、工事を進められないなどもデメリットです。
相続土地国庫帰属制度は、こうした状態を改善するために、所有者不明土地を予防する施策として作られました。
相続土地国庫帰属制度の利用条件
法務省によると、本制度を申請できるのは以下の条件を満たしている場合です。
●相続や遺贈で取得した土地
●共有で相続した土地の場合は相続した人物全員で申請をしている
また、土地が以下のいずれかに該当していると、申請できなかったり審査で却下されたりする可能性があります。
●建物がある
●担保権や使用収益権が設けられている
●墓所内の土地などほかの人が利用する予定の土地が含まれている
●土壌汚染されている
●土地の境界が明確でない
●所有について争っている
●一定の勾配・高さの崖があり管理に多大な費用や労力がかかる
●土地の管理や処分をするにあたって邪魔になる有体物がある
●土地の管理や処分をするにあたって邪魔になる有体物が地下にある
●隣接する土地の持ち主と訴訟を起こして争わないと管理や処分ができない
●上記以外の理由で管理や処分に多大な費用や労力がかかる
なお、有体物とは自動車や樹林、井戸などその場にあるものです。
もし申請が通れば、国に帰属する土地としていらない土地を手放せるでしょう。ただし、費用も発生するので、申請する前に資金を用意しておきましょう。
まず、申請時には審査手数料として1万4000円が必要です。さらに、申請が通ったあとは、土地の状況に応じて決められる土地管理費用(負担金)を10年分納付します。例えば、宅地や雑種地、原野などなら20万円の負担金が必要となる可能性があります。
もし制度を利用しないと固定資産税はいくらかかる?
固定資産税は、土地の評価額を基に決められます。以下の条件の更地があった場合の固定資産税を計算しましょう。
●地価公示価格は1坪5万円とする
●土地は100坪とする
●評価額は地価公示価格の7割とする
●評価額と課税標準額を同額とする
●税率は標準税率の1.4%
土地の固定資産税を求めるためには、まず評価額を確認しましょう。評価額は単純計算で今回のケースだと、評価額は「5万円×100坪×70%」で350万円です。課税標準額も同額なので、「350万円×1.4%」となり、4万9000円の固定資産税が課されます。
固定資産税は3年ごとに評価額が更新されますが、仮に同じ評価額のままだったとすると、5年目に20万円を超えます。
相続土地国庫帰属制度では、最初にまとまった額を支払う必要はありますが、長期的に考えると本制度を利用した方が金銭面での負担は軽くなるでしょう。
相続土地国庫帰属制度を利用すると国へ土地を渡せる
相続土地国庫帰属制度では、不要な土地で条件を満たしていれば国へ土地を帰属させられます。手数料が1万4000円と、土地の状況に応じて管理費用10年分の納付が必要ですが、長期的な視点で考えると固定資産税を支払い続けるよりは安くなるでしょう。
ただし、申請できない土地の条件も細かく決められているので、申請前に一度確認しておくとよいでしょう。
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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