パーキンソン病は、高齢者に多い病気と言われていますが、若い世代でも発症することがあります。実際のところ、「どんな人がなりやすいのか」「どのような初期症状があるのか」など、気になる人も多いのではないでしょうか。今回は、パーキンソン病の発症リスクや初期症状について、「あさり内科クリニック」の浅利先生に解説していただきました。
パーキンソン病の初期症状
編集部
まず、パーキンソン病について教えてください。
浅利先生
パーキンソン病は、脳内で「ドーパミン」という神経伝達物質が減少することで、運動機能に影響を及ぼす病気です。手足の震え(振戦)、動作の遅れ(寡動)、筋肉のこわばり(筋固縮)、バランスが取りにくくなる(姿勢反射障害)などの症状が特徴です。
編集部
パーキンソン病の初期症状には、どのようなものがありますか?
浅利先生
初期症状は非常に軽微で、気づきにくいことが多いですね。片側の手や指にわずかな震えが生じたり、歩行時に腕の振りが減ったり、字が小さくなる(小字症)といった変化が起こり得ます。また、動作が遅くなったり、表情が乏しくなったりする症状も初期段階でみられることがあります。
編集部
手足の震えがあるとパーキンソン病の可能性が高いのでしょうか?
浅利先生
たしかに、手足の震えはパーキンソン病の代表的な症状の1つですが、パーキンソン病を特定する症状ではなく、ほかの神経疾患や本態性振戦(加齢に伴う震え)にも同様の症状がみられます。パーキンソン病の震えは、安静時に出現するのが特徴ではありますが、自己判断せずに医師の診察を受けることが重要です。
編集部
パーキンソン病は、どのように診断されますか?
浅利先生
主に、症状の観察と神経学的検査によっておこなわれます。CTやMRIなどの画像検査や血液検査などで異常がないかを調べて、ほかの病気との鑑別もおこないます。さらに、パーキンソン病に用いられる薬を服用して効果を確認します。それではっきりしない場合は、「心筋シンチグラフィ」や「ドパミントランスポーターイメージング」などの検査をおこなうこともあります。
パーキンソン病になりやすい人の特徴
編集部
パーキンソン病は遺伝するのでしょうか?
浅利先生
一部の遺伝子が関与する家族性パーキンソン病が存在しますが、全体の割合でみると遺伝によるものは少数です。多くのケースでは環境因子や加齢が発症に関係していると考えられています。
編集部
パーキンソン病になりやすい人の特徴はありますか?
浅利先生
パーキンソン病の原因について現段階で詳しくは解明されておらず、何かの要因が病気を引き起こすわけではありません。統計的には、50歳以上の高齢者に多く、加齢が大きなリスク要因とされていますが、40歳以下でも発症する「若年性パーキンソン病」もあります。日本では女性に多いのですが、海外では男性が多いというのも特徴です。また、農薬や重金属などの環境因子が影響する可能性も指摘されています。
編集部
パーキンソン病は進行性の病気なのでしょうか?
浅利先生
はい。進行のスピードには個人差がありますが、一般的には数年〜数十年かけて徐々に進行します。早期に診断を受け、適切な薬物治療やリハビリテーションをおこなうことで、活動性や生活の質を維持することが可能です。
編集部
パーキンソン病は完治する病気なのですか?
浅利先生
現在のところ、完治させる治療法は確立されておらず、薬物療法やリハビリテーションによって症状をコントロールしながら、日常生活を続けることが治療の目標とされています。進行した場合には、脳深部刺激療法(DBS)という手術が検討されることもあります。特に近年は、薬物療法やそのほかの治療についても研究が進められており、新たな治療法の開発が期待されています。
パーキンソン病の治療法
編集部
パーキンソン病の薬物治療について教えてください。
浅利先生
主に不足しているドーパミンを補う目的で、ドーパミンの前駆物質であるレボドパや、ドーパミンの受容体に直接作用してドーパミンの作用を補う薬などが処方されます。ほかには、ドーパミンの減少で相対的に作用が強まってしまう、アセチルコリンの働きを抑える薬が使われることもあります。患者さんそれぞれの症状や年齢、活動性などに応じて、医師が薬の種類や量を調整します。
編集部
リハビリテーションについても教えてください。
浅利先生
リハビリテーションで適度な運動を続けることで、筋力やバランス感覚を維持して、症状の進行を遅らせることができるとされています。ウォーキングやパーキンソン体操、ストレッチなどの軽い運動でも効果が期待できることに加え、近年はパーキンソン病に特化した専門的なリハビリテーションも開発されています。
編集部
パーキンソン病が疑われたら、どの診療科を受診すればいいですか?
浅利先生
手足の震えや動作の遅れ、バランスの崩れなどが気になる場合は、早めに脳神経内科を受診して適切な検査を受けましょう。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
浅利先生
パーキンソン病は進行性の病気ですが、適切な治療やリハビリテーションを続けることで、症状を和らげたり、生活の質を維持したりすることができます。早期発見が大切なので、不安な症状などがあったら、気軽にご相談ください。すでに診断を受けている人も、新しい治療法が増えているため、一度専門の医療機関で相談してみることをおすすめします。ご自身の体調についても、気になることがあれば遠慮なくお話しください。1人で悩まず、一緒に最適な治療法を考えていきましょう。
編集部まとめ
パーキンソン病は高齢者に多い病気ですが、早期に発見し適切な治療を受けることで、生活の質を維持することが可能とのことでした。手足の震えや動作の遅れ、歩きにくさなどの症状が気になったら、早めに脳神経内科を受診し、医師の診察を受けることが大切です。今回紹介したような症状が出て、日常生活で違和感を覚えたら、無理をせず脳神経内科に相談してみましょう。
この記事の監修医師
浅利 博基 医師(あさり内科クリニック)
大分大学医学部卒業。その後、浜松医科大学医学部附属病院、静岡市立清水病院内科・神経内科で経験を積む。2021年、静岡県静岡市に「あさり内科クリニック」を開院。日本内科学会認定総合内科専門医、日本神経学会認定神経内科専門医、日本認知症学会認定専門医、日本リハビリテーション学会認定臨床医、日本プライマリ・ケア連合学会認定医。
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