マイクロソフト、「Windows 10」向けESUに無料オプションを追加–個人ユーザーに1年の猶予

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「Windows 10」のサポート終了が数カ月後に迫る中、Microsoftは、Windows 10を搭載した数千万台の消費者向けPCの所有者が、まだ新しいPCへの買い替えに踏み切れておらず、また、年間30ドルの「Extended Security Updates(ESU)」サブスクリプションの購入にも消極的であるという現状を、ようやく認識したようだ。

こうした状況を受けて、Microsoftは米国時間6月24日、ESUプログラムに関する新たな「無料登録オプション」と、ユーザーが登録するための具体的な手順を明らかにした。Microsoftのクラウドベースの「Windows Backup」を試す、あるいは1週間にわたり毎日数分間「Bing」検索エンジンを利用することで、30ドルのサブスクリプション料金を支払うことなく、ESUを無料で利用可能である。

この発表は、「Windows 11」の魅力を紹介しながら、企業向けに古いPCの買い替えや、「Windows 365」といったクラウドサービスへの移行を勧めるブログ投稿の中で紹介されていた。

今回の発表は、Windows 11のシステム要件を満たしておらず、無料アップグレードの対象外となっている数千万台の消費者向けPCに向けたものである。一方、法人顧客はこの無料オプションの対象にはならず、最大3年間の商用ESUを利用するには、1台当たり年間61ドルからという高額な料金を支払う必要がある。これらの法人向けESUは、既にMicrosoftのボリュームライセンスプログラムを通じて提供されており、Microsoftのクラウドサービスプロバイダーパートナーは、9月1日から商用ESUの販売を開始できるようになる。

消費者向けの登録プロセスは次の通り。

Microsoftによれば、「登録ウィザード」は通知や設定画面から利用可能となり、個人のWindows 10 PCから直接ESUに登録できるようになるという。その時点で、ユーザーは次の3つの選択肢からオプションを選べる。

  • Windows Backupを使って設定をクラウドに同期する(追加費用なし)
  • Microsoft Rewardsの1000ポイントと交換する(追加費用なし)
  • 30ドルを支払う(地域によって価格が異なる場合がある)
  •  発表によれば、「ユーザーがオプションを選択し、画面の案内に従うことで、PCは自動的にESUに登録される」という。また、個人向けデバイスに対するESUの提供期間は、2025年10月15日から2026年10月13日までとされている。

    登録ウィザードは現在、Windows Insiderのプレビュービルドで利用可能となっている。Microsoftによれば、7月には一部のWindows 10 PCに対して段階的な展開が始まり、8月中旬までには広く利用できるようになる見込みである。

    これまで述べてきたように、このオプションは「個人利用」に限定されており、法人顧客が割引価格でセキュリティアップデートを取得することを防ぐ目的があると考えられる。Microsoftが管理していない環境にある中小企業では、この制限を技術的に強制することは難しく、同社が積極的にそれを制御しようとする可能性も高くはない。

    Windows Backupを利用して「設定をクラウドに同期する」という方法は、一見すると手軽な選択肢のように思えるが、その利便性は実際の実装方法に左右される。現在のWindows Backupでは、個人データも「OneDrive」のクラウドストレージに保存される仕様となっている。もし保存するデータ量が多く、「Microsoft 365 Home/Personal」のサブスクリプション、あるいは追加のストレージプランを契約していない場合、標準の5GBの容量をすぐに使い切ってしまい、予期せぬトラブルが発生する可能性がある。

    Microsoft Rewardsのポイントを1000ポイント交換する方法は、比較的簡単な選択肢である。Microsoftアカウントで「Edge」に個人プロフィールを設定している場合、必要なポイントが既に貯まっている可能性がある。仮にポイントがゼロの状態から始める場合でも、モバイル版Bingアプリをダウンロードして2日間使用すれば500ポイントを獲得できる。その後、数日間にわたりMicrosoft Rewardsのサイトで検索クイズや投票、その他の簡単なタスクをこなせば、1日当たり100~200ポイントを獲得でき、短期間で必要なポイントを集められる。

    今回の発表は、Microsoftにとってかなりの譲歩であり、10月以降もWindows 10を使用しているPCが予想以上に多く残る可能性が高いことを、暗に認めた形となっている。新たに提供されるESUオプションは、Windows 10の公式なサポート終了日を変更するものではないが、価格に敏感な消費者に対しては1年間の猶予を与える措置となり、Microsoftにとってはサポート終了による批判を少しでも緩和する手段となるだろう。

    この記事は海外Ziff Davis発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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