「自分の代で墓を終わりにしたい」と、親から打ち明けられて戸惑ったことがある方も少なくないようです。近年は、少子化やライフスタイルの変化など、さまざまな背景によって「墓じまい」をする方が急増しています。
しかし、お墓を整理するとなると、気になるのが墓石の撤去を含む改葬費用です。
本記事では、墓じまいにかかるおおよその費用やその内訳、注意すべきポイントについて解説します。
墓じまいとは
「墓じまい」とは、今あるお墓を撤去して更地にして、墓地の使用権を管理者に返還し、遺骨を別の場所に移すことです。遺骨を別の場所に移すための行政手続きとして「改葬(かいそう)」が行われます。
墓じまいをする際には、お墓の管理者だけでなく、お墓がある地方自治体の許可を得なければなりません。
厚生労働省が公開する衛生行政報告例によると、2023年に改葬した件数は16万6886件と、過去最多を記録しました。
墓じまいする理由として、「跡継ぎがいない」「お墓の管理が難しい」「お墓から離れた場所に住んでいる」など、さまざまな事情があります。最近では、「樹木葬」や「散骨」「永代供養」など、宗教の枠にはまらない供養を望む人が増えていることも、墓じまいの件数が増えている要因と考えられるでしょう。
墓じまいにかかる費用相場と内訳
墓じまいにかかる費用は、お墓がある場所や状態、移転先によって大きく異なりますが、約30万〜100万円が一般的な相場です。高額な場合は、数百万円かかるケースも珍しくありません。
墓じまいにかかる費用には、大きく分けて「石材店や業者に支払うお金」と「お寺や僧侶に対して支払うお金」があります。
石材店や業者に支払うお金
石材店や業者に支払うお金として、墓石の撤去費用として10万〜30万円、遺骨の取り出し費用として1万〜3万円、そして遺骨を運ぶ際にかかるコストが挙げられます。遺骨の運送費用は、移動距離に応じて変動するものの、数万円程度かかります。
なお、日本郵便のゆうパックでは遺骨の郵送が認められており、数千円程度で遺骨を移送できます。ゆうパック以外は、遺骨の配送に対応していないことに注意しましょう。
お寺や僧侶に支払うお金
お寺や僧侶に支払うお金として発生するのが、「閉眼供養の際のお布施」と「離檀料」です。
閉眼供養とは、遺骨を取り出す前に行う供養で、お墓に宿る魂を抜く儀式です。閉眼供養にかかるお布施は、3万〜10万円程度が相場ですが、事前に確認しておきましょう。
また、檀家としてお墓を管理してもらっていた場合は、檀家を離れる際に、これまでの感謝の気持ちとして「離檀料」を包むことが多いようです。相場は、3万〜20万円程度とされています。ただし、寺院墓地以外に墓があるケースや檀家に入っていない場合は、離檀料はかからないことが一般的です。
行政手続きにかかる費用
墓じまいをする際には、原則としてお墓の使用者本人が行政の手続きを行う必要があります。「改葬許可申請書」や「改葬許可証」などの手続きで、数千円程度かかります。原則として、遺骨1体ごとに改葬許可証を発行しなければなりません。また、お墓のある自治体によっても、必要な書類や手続き方法が異なるため、事前に確認しておきましょう。
墓じまいの費用に差が出るポイントとは?
墓じまいにかかる費用は、お墓の状態や地域によっても大きく差があるものです。
一般的に、都市部にあるお墓や、山間部のように機材の搬入が難しいエリアでは、費用が割高になる傾向にあります。
また、墓石の形状や大きさ、材質によっても、撤去費用は大きく変動します。大型の墓石や硬い石材は、撤去費用が高額になりやすいため、複数の撤去業者に見積もりを依頼して、費用の妥当性を確認してください。
なお、お寺や僧侶に支払う「離檀料」にも費用差が生じます。新しい墓地に遺骨を移したり、散骨や永代供養を利用したりする場合は、別途費用がかかることを覚えておきましょう。
予想外の出費に備えて計画的に墓じまいを進めよう
「墓じまい」がお墓を片付けるためだけの行為と考えると、思った以上に費用がかかることが多いため、慎重に準備を進めなければなりません。
実際に墓じまいをする際は、複数の石材店や業者から見積もりを取り、どの程度の費用がかかるか確認しておきましょう。
出典
e-Stat 政府統計の総合窓口 厚生労働省 衛生行政報告例/令和5年度衛生行政報告例 統計表 年度報
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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