【全国赤字ワースト病院ランキング100】病院が大赤字で「突然死」し始めた…急患を「受け入れ停止」「門前払い」の恐るべき実態

「今年いっぱいで診察はおしまいです」

大阪・伊丹空港のほど近くに建つ近畿中央病院は、1956年の設立以来、住民の健康を見守ってきた。しかしまもなく、閉鎖することが決まっている。80代の男性患者が言う。

「この病院は、僕にとっちゃ別荘みたいなもんでね。大腸がん、脳梗塞、腎臓の手術もしてもろた、命の恩人ですわ。

でも、こないだ先生に『今年いっぱいで診察はおしまいです』と言われて、近くのクリニックを紹介されましてん。『手術や大がかりな治療が必要なときは、申し訳ないけど別の大病院を探してくれ』って。

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『先生は、どうしはるの?』と聞いたら、『次の勤め先は決まってません。もう歳やし、(仕事を)探すのが大変で』と言ってましたよ。医者がそんなんで、看護師さんとか事務員さんは、どうすんねやろ」

「カラスが死ぬのを待っている」

半官半民の同病院は、老朽化のため近くの市立伊丹病院と再来年に統合される予定だったが、経営があまりに苦しく、持たなかったというわけだ。先日まで入院していた70代の女性患者も語る。

「看護師さんは親切やけど、建物がホンマ古いわ。病室の壁にカビがこびり付いとるし、お湯は出えへんことがあるし、水道管が古いんか、濁った水が出てくる。

一番イヤなのは、カラスや。病室のすぐ外に、カラスがぎょうさん来てジッと見てくる。うちが死ぬんを待っとるようで、かなわんかった」

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コロナ後、全国の病院の経営が猛スピードで悪化している。医療施設の経営を支援する独立行政法人福祉医療機構の調べによると、2022年には赤字の病院はおよそ3割だったが、2023年以降はおよそ6割が赤字経営に転落した。

とりわけ苦しいのが、県立病院・市立病院といった公立病院や、共済組合などが母体の半官半民病院だ。コロナで注入された補助金がガクッと減ったせいで、赤字病院が急増し、昨年度は7割にのぼった。

病院経営に詳しい税理士の上田和朗氏が指摘する。

「補助金が減らされたことに加えて、右肩上がりの人件費と物価が経営を圧迫しています。医療行為だけの『純医業収支』でみると、少なからぬ公立病院が大赤字を補助金でおぎなって、なんとか事業を維持していることがわかります」

高齢の救急患者が「門前払い」

本誌は、医療機関のデータ分析を行う株式会社ケアレビューの協力を得て、全国およそ900の公立病院、東京都立病院(2022年に独立行政法人化)の「純医業収支」を精査した。そのデータから、赤字額の大きい「ワースト100病院」をランキングにしたものが下の一覧表だ(小児科・精神科専門病院は除いた)。


『週刊現代』より

『週刊現代』より

90億円近い赤字額でワースト1位となった東京都の多摩総合医療センターをはじめ、ランキングを眺めると、各地域の要として救急医療や夜間医療を担う大病院がズラリと並ぶ。

公立病院は、民間病院が敬遠するような急患にも対応せねばならないが、その足元が揺らいでいるのだ。

都内でクリニックを営む、ある医師が証言する。

「いつも急患を受けてくれていた近隣の半官半民の大病院で、数年前に腎臓内科の医師が突然辞めました。代わりの医師も見つからず、その病院は腎臓関連の患者の受け入れを停止してしまったんです。

外科にも異変が起きています。コロナ前までは、急性腹症(急激な腹痛)の患者さんを受け入れて、すぐに手術してくれる大病院が複数ありましたが、いまは全然受けてくれません。まして80歳を過ぎている、認知症があるといった患者さんは、門前払いです」

事実、全国の公立病院の中には、経営難や人材不足により、施設を閉鎖・縮小したり、診療を休止するところも出始めている。

その実態を、後編記事〈【全国赤字ワースト病院ランキング100】病院の「突然死時代」が始まった…建物はボロボロ、医療ミス頻発で「貧すれば鈍する」赤字病院の怖すぎる未来〉で報じる。

「週刊現代」2025年07月21日号より

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