無ろ過焼酎とは? その特徴と魅力を探る【焼酎用語集】

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「無ろ過(無濾過)」とラベルに書かれた焼酎を飲んだことがありますか? 「無ろ過焼酎」とは、ろ過を行わない焼酎のこと。「にごり焼酎」とも呼ばれ、コアなファンの支持を集めています。今回は無ろ過焼酎にフォーカスして、その特徴や魅力を探ります。

無ろ過とは? 通常の焼酎との違い

無ろ過とは? 通常の焼酎との違い

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ろ過って何?

ろ過とは、無数の細かい孔を持つ「ろ材」を使い、液体や気体に混じった混合物を取り除くこと。紀元前6000年頃から用いられている技術で、ワインなどのアルコール飲料の精製に役立てられてきたといわれています。
身近なところでいえば、ペーパーフィルターを使ってコーヒーを濾したり、揚げ物に使用した油から揚げかすを取り除いたりする作業も、ろ過にあたります。

焼酎造りでろ過を行う理由

焼酎はもろみを加熱し気化した蒸気を冷却することでアルコールを抽出しますが、蒸溜を終えたばかりの原酒にはアルコール発酵時に生成される油成分、フーゼル油が含まれています。
このフーゼル油は香気成分として注目されているものの、含まれる量によっては焼酎の風味を損なう油臭や、にごり(白濁)の原因となることがあるため、多くの製品ではろ過によって取り除かれます。

無ろ過焼酎とは、ろ過を行わない焼酎のこと

蒸溜したての原酒に含まれるフーゼル油は旨味成分でもあるため、あえてろ過せずそのまま残したり、表面に浮いた油分をすくい取る程度で出荷されることもあります。
このようにろ過を行わないことを「無ろ過仕上げ」といい、無ろ過仕上げの焼酎を「無ろ過焼酎」と呼びます。フーゼル油を残すことでうっすらと沈殿物(焼酎の華)が生じ、焼酎全体が薄く濁って見えることから、「にごり(濁り)焼酎」の名で呼ばれることもあります。
ただし、焼酎は蒸溜酒なので、濁るといっても日本酒のどぶろくのように白濁するわけではありません。
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無ろ過焼酎の特徴

無ろ過焼酎の特徴

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無ろ過焼酎の特徴

無ろ過焼酎の大きな特徴は、通常の焼酎では除去されがちな素材本来の香り、旨味を堪能できる点にあります。その素朴かつ濃厚な風味は、ろ過技術が確立する以前の味わいに近いと考えられていて、「昔懐かしい」と評する声もあるようです。
なお、焼酎には賞味期限がありませんが、フーゼル油は酒質劣化の原因にもなりうるため、品質管理には通常の焼酎以上に気を配る必要があります。

無ろ過と荒ろ過の違い

無ろ過仕上げと似た製法に、荒ろ過(荒濾過)仕上げがあります。これはろ過の技術が確立される以前の手法に倣い、手作業で油分を取り除くというもので、無ろ過同様、素材由来の香りや旨味が生きた、味わい深い焼酎に仕上がります。
このほか、分離し表面に浮き上がってきた油分をすくって薄い布で濾す、「手すき(手漉き)ろ過」という製法も。これを無ろ過に分類する蔵元もあり、厳密な定義づけはされていないようです。

無ろ過焼酎の魅力とおすすめ銘柄

無ろ過焼酎の魅力とおすすめ銘柄

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無ろ過焼酎の魅力

無ろ過仕上げの焼酎の魅力は、何といっても通常の焼酎以上に香味や旨味を味わえるということ。これは、いい換えると、蔵元が培ってきた個性や銘柄本来の味わい、素材ごとの特徴がより顕著に伝わってくるということです。
荒削りでクセはあるものの、素朴さと豊かな風味がたのしめるのが無ろ過焼酎の魅力。芋麦米といった素材や麹の違いによっても印象は大きく変わるので、いろいろと試してみてください。

無ろ過焼酎のおすすめ銘柄3選

無ろ過焼酎のおすすめ銘柄を原料ごとに紹介します。

【無濾過 にごり芋】

黒瀬杜氏の技を受け継ぐ鹿児島県の焼酎蔵、鹿児島酒造の渾身作。フィルターによるろ過を行わず、原酒を数か月間貯蔵し、冷却した状態で不純物をすくい取って仕上げる手間暇かけた1本です。
製造元:鹿児島酒造株式会社
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【釈云麦(じゃくうんばく)】

黒麹で風味を引き出し、常圧蒸溜・無ろ過で仕上げた全量大麦の麦焼酎。麦そのものの甘さや香ばしさを余すところなく堪能できるこだわりの1本です。
製造元:西吉田酒造株式会社
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【球磨拳(くまけん)】

吟醸酒に使われる黄麹と酵母で低温発酵させ、さらに無ろ過で仕上げた個性豊かな米焼酎。米麹を従来の焼酎の約2倍に増やして使用しているので、より深みのある味わいがたのしめます。
製造元:株式会社恒松酒造本店
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無ろ過や荒ろ過仕上げの焼酎には、フィルターろ過を行っている焼酎では味わえない魅力がぎっしり。蔵元や素材、製法ごとの個性を堪能したい人は、ぜひ一度お試しください。

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