各地で早場米の収穫が進んでいます。
ことしはJAがコメを集荷する際、農家に前払いする「概算金」が去年より高いケースが相次いでいるため、新米の販売価格も上がるのではないかという見方が広がっています。
各地で、また専門家に、現時点の新米価格の見通しを取材しました。
福岡県のコメの卸売会社では
福岡県のコメの卸売会社には7月末に宮崎県の早場米が入荷し、現在、精米作業が行われています。
宮崎県産の新米は100トン以上入荷する見通しで、福岡県内の小売店に向けて出荷も始まっています。
関係者によりますと、宮崎県ではことし、JAが農家に前払いする「概算金」が去年よりも60キロあたり1万円以上高い、3万円ほどになるということで、新米の店頭での販売価格は去年より1600円ほど高い5キロあたり4000円台になるのではないかとみられています。
卸売会社 轟良生さん
「農家としては、やっと高くなったのでうれしいと思います。店頭での価格はスーパーが決めることになりますが、消費者からするとことしの新米も少し高いと感じるのではないかと思います」
福岡市のドラッグストアでは
一方、福岡市のドラッグストアでは早いところで福岡県産の新米の販売をまもなく始める見込みで、5キロあたりの販売価格は去年の同じ時期より1500円ほど高い4500円前後になる見通しだとしています。
ドラッグストア 杠和大マネージャー
「毎年新米が出る時期は新しいお米が供給できるので、小売り側としても期待をもって店頭に並べますが、ことしは米の高騰が続いており新米も4000円台半ばぐらいでの提供になると思うので、少し心苦しいです」
農家に前払いする「概算金」 各地のJAで引き上げ
新米を確保するため各地のJAでは、農家に前払いする「概算金」の目安や最低保証額を去年より引き上げる動きが広がっています。
概算金はJAがコメを集荷する際、農家に支払う前払い金にあたるもので、その年のコメの流通価格を形成する指標となっています。
概算金は例年、夏から秋にかけて決まり公表していないJAも多くありますが、一部では概算金の目安などを明らかにしているところもあります。
このうち、JA全農の新潟県本部ではことし3月、「一般のコシヒカリ」について60キロあたり2万3000円と提示し、去年から6000円、率にして35%引き上げました。最終的には2万6000円以上を目指すとしています。
また、JA全農あきたは「あきたこまち」を60キロあたり2万4000円と去年から7200円、率にして42%引き上げるほか、JA福井県は「コシヒカリ」を60キロあたり少なくとも2万2000円と去年から4800円、率にして28%引き上げる方針です。
このほかJA全農さいたまでは「コシヒカリ」を2万3000円、JA高知県でも「コシヒカリ」を2万2000円などと、全国的に60キロあたり2万円台前半の金額を示す動きが広がっています。
新潟県南魚沼市 ネットで販売するコメ農家は
米どころの新潟県南魚沼市ではJAによる概算金引き上げの動きなどを受けて、去年よりコメの販売価格を上げている農家もいます。
南魚沼市のコメ農家、駒形宏伸さん(46)はおよそ18ヘクタールの田んぼでコシヒカリを中心に栽培し、インターネットなどで販売しています。
駒形さんはことし3月、この秋に収穫予定のコメのうち、およそ4割にあたる30トンほどの「コシヒカリ」を5キロあたり税込み5500円から1万400円で販売しました。
販売価格はJA全農新潟県本部の概算金引き上げの動きなどを受けて、去年よりも2000円ほど高く設定したということですがおよそ2か月で完売したということです。
まだ販売していない残りのコメの価格はこの秋に決めることにしていますが、駒形さんが注視しているのが今後の気象状況です。
南魚沼市では連日厳しい暑さが続き、7月の雨量が35ミリと平年の1割あまりにとどまっています。
この影響で田んぼに入れる農業用水や地下水の量が減っていて、一部の田んぼではイネが枯れる被害も出ているということです。
これからイネの生育に大切な穂が出る時期を迎えますが、いまのような気象状況が続いてコメの収穫量が減れば、販売価格をさらに引き上げることを検討せざるをえないと懸念しています。
駒形さん
「価格を上げすぎるとコメ離れが進むおそれがあるので悩ましい。十分な品質と収穫量を確保できるようにやれることはやりたい」
専門家「産地によっては相当な水不足 不作だと上振れも」
コメの流通に詳しい流通経済研究所の折笠俊輔 主席研究員は、各地のJAが概算金の目安を引き上げ、60キロあたり2万円台前半を提示する動きが広がっていることについて「去年はJA系統の集荷率が26%まで下がったため、集荷率を上げたいという強い思いで、概算金の目安を早めに、金額も高めに出している。加えて、生産者の再生産を支援するという意味での価格設定になっている」と話しています。
そのうえで、ことしの新米の販売価格については「今の概算金の目安を見ると、5キロあたり平均でおそらく3500円前後になってくるのではないか。これはある程度順調に収穫できたときの相場感で、不作になると価格も上振れする可能性はまだまだ捨てきれない」としています。
また、猛暑が続く中でのイネの生育状況については「産地によっては梅雨が早く終わり雨が降らず高温で相当な水不足になっていて、生産現場は苦しい状況が続いている。今は稲穂が出てくるタイミングで、ここからの数週間が非常に重要だ。お盆くらいまでに雨がちゃんと降らないと、作柄としては結構厳しくなる可能性が出てきている」と指摘しました。
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