2025年8月22日に日産は新型「ルークス」を先行披露しました。新たなルークスにはどのような特徴があるのでしょうか。
日産新型「ルークス」開発者インタビュー 「先進技術が生み出す上質の軽」を目指した革新への挑戦
日産が2025年8月に先行披露した新型「ルークス」は、軽スーパーハイトワゴン市場に新たな価値を提案する意欲的な1台と言えそうです。
「先進技術が生み出す上質の軽」をコンセプトに掲げ、従来の軽自動車の概念を覆す数々の革新技術を搭載しています。
開発を担当した日産の第二製品開発部の坂幸真氏に、新型ルークスに込めた開発チームの思いと、画期的な機能の数々について詳しく話を聞きました。
●「軽自動車の常識を変える」という強い意志
「我々が目指したものは先進技術が生み出す上質の軽です。
スタイリッシュな機能的空間、そして断突に安心できる走り。
これを是非、今回の市場でご体感いただけたらと思います」
坂氏はこう語り、新型ルークスの開発コンセプトを明確に示しました。
同氏によると、今回のルークスは現行モデルの優れた点を継承しながらも、4つの主要テーマで大幅な進化を遂げているといいます。
●軽No.1の広さと上質な室内空間の実現
まず注目すべきは、車体サイズは軽自動車規格内に収めながらも、軽No.1の室内長2315mmを実現した点。
「車体サイズはご存じの通り、軽自動車は規格で決まっていますが、今回のルークス、軽ナンバー1の室内長、そして視界の良さ、ここを大きく進化させました。
特に室内長は、競合車と比べてもトップという数字を頂き出しております」
この広さを支える技術的な工夫として、坂氏は統合型インターフェースディスプレイ「モノリス」を中心とした洗練されたインストルメントパネルデザインを挙げています。
特に印象的なのは、軽自動車として最大となる12.3インチのセンターディスプレイの採用です。
「今回、軽では最大となる12.3インチのセンターディスプレイをご用意いたしました。
これによって、7インチのメーターディスプレイと相まって非常に表示が美しく、見やすいメーターとなっています」
●ゼログラビティシートの進化:自宅のソファのような快適性
新型ルークスで坂氏が特に力を入れて説明したのが、進化したゼログラビティシート。
これまでフロントシートのみに採用されていた技術を、今回は後席にも拡張しています。
「今回是非皆さんにご体感していただきたいポイントは後席です。
非常に座り、触り心地が良くて、自宅のソファのようにくつろげるシートをご用意いたします」
この快適性の実現には2つの技術的革新があります。
・メランジ生地の日産初採用
「服やシートにも使われる柔らかく伸びるメランジ生地と呼ばれている生地を日産初採用いたしました。
これによって生地が非常に伸びやすい特性を持っておりますので、体を包み込む柔らかさを感じていただけるのではないかと思います」
この生地の採用により、従来比で約2倍の伸びやすさを実現しているようです。
・体圧分散シート形状の最適化
「今回のシートは高密度ウレタンを採用するとともに、後席のクッション層、これを23mm現行車から伸ばしています。
特に太ももの裏のところの圧迫感がなくなって、非常にくつろぎやすい後席シートとなっております」
・軽初のGoogle搭載:コネクテッド機能の革新
さらに新型ルークスの大きな特徴の一つが、軽自動車として初めてとなるGoogle機能の搭載。
「軽初のGoogleを搭載しました。使い慣れたGoogleマップがクルマの中でも使えるということです。
そしてご自身のアカウントを同期していただければ、スマホの登録情報がそのままクルマで使えるということと、もう1つ大きなポイントは、今回自然言語を使用したGoogleアシスタントの機能が使えるということです」
具体的な使用例として、坂氏は「OK Google、エアコンつけて」「OK Google、近くのカフェに行きたいんだけど」といった自然な語りかけで車両機能をコントロールできる利便性を強調しました。
さらに、Google Playストアからアプリをダウンロードし、大画面で楽しめる機能も搭載しています。
●進化したコネクテッドサービス
安心機能では「し忘れアラート」として、車両のロック忘れをスマホに通知する機能や、「リモートフォトショット」として、ドライブレコーダーのカメラを使って駐車場の状況を自宅から確認できる機能を新たに追加している。
快適機能では「乗る前エアコン」により、出発前に車内を快適な温度に調整できるほか、ドライブレコーダーの画像を思い出としてスマホに保存する機能も提供する。
●充実の運転支援装備:360度セーフティの実現
安全性能の向上も新型ルークスの重要な進化点。坂氏は「本当の意味で360度セーフティを実現した」と自信を示しています。
・軽初の3D機能付きアラウンドビューモニター
「軽初3D機能付きのインテリジェントアラウンドビューモニターです。
インビジブルフードビューと我々呼んでますけども、フードの下がまるで透けて見えるかのような映像をディスプレイで確認できます」
この技術により、車両前方の死角を可視化し、落下物の確認なども容易に。
3Dビュー機能では、運転者が車両を回って確認することなく、カメラ映像で周囲の障害物を立体的に把握できる。
・フロントワイドビューの活用
「今回私が1番推奨したい、確認していただきたいポイントはフロントワイドビューです」
坂氏によると、この機能では事前に登録した地点に近づくだけで自動的にワイドビューが立ち上がり、見通しの悪い交差点での安全確認をサポート。登録可能地点は41カ所にも及びます。
・フロントサイドレーダーの軽初搭載
「軽自動車として初となってるのはフロントサイドレーダー、これをリアだけじゃなくてフロントにも搭載したことです。
交通事故でやはり日本で特に多いのは交差点での出会いがしらだったり、右折時の歩行者だったり、自転車なんですね。
これらをフロントサイドレーダーを使って、かなり遠くの距離から車に近づく歩行者などを検知して、ドライバーにお知らせすることができます」
●疲れにくく酔いにくい車両の実現
新型ルークスでは、セレナで好評を博した「酔いにくさ」の技術を軽自動車に応用しています。
坂氏によると、車酔いには体性感覚、視覚刺激、嗅覚、ストレスという4つの影響因子があり、それぞれに対して技術的な対策を講じているといいます。
「高応答のショックアブソーバーを備え、そして サスペンションのゴムブッシュを最適にチューニングすることによって、クルマのいわゆる揺れにくさを抑えると共に、また今回、後席に乗られている乗員もしっかりと保持する後席のシートバック形状を用意し、またシートのクッションの高密度化、これをやることによって振動を吸収するということができております」
また静粛性の向上にも力を入れており、「今回スーパーハイトワゴンとして初の遮音ガラスを採用いたしました」と坂氏は説明します。
これにより、競合車と比較してダントツの静かさを実現したようです。
空調面でも進化を遂げており、プラズマクラスターを前席の吹き出し口から放出し、リアシーリングファンと組み合わせることで車内全体を快適に保つシステムを採用しています。
「後席頭部温度のシーリングファンの効果も出しておりますけども、これも今回の新型ルークスの大きなポイントとなっております」
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今回、坂氏へのインタビューを通じて見えてきたのは、新型ルークスが単なる軽自動車の改良モデルではなく、軽自動車という枠組みの中で上質さと先進性を両立させた革新的な1台であるということ。
Google機能の搭載、3D機能付きアラウンドビューモニター、進化したゼログラビティシート、そして軽初となる数々の安全技術の搭載は、軽自動車に対する既存の概念を大きく変える可能性を秘めています。
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