相続土地国庫帰属制度によって、福岡県内に住む男性の所有から、国のものとなった土地。農地と住宅が混在する地区にあり、男性の実家が建っていた=2025年1月28日、福岡県、山田史比古撮影
相続で取得したものの利用の予定がない土地を手放し、国のものとする「国庫帰属」制度が始まって2年余り。国のものとなってもその後の活用が困難な場所もあり、国によって管理される土地が増えればそのコストも高まるため、国は管理のあり方を見直す検討を始めた。周辺への悪影響が見込まれない場所などでは管理を簡素化することも検討する。
一部地域をのぞいて土地の価値は下落する一方、超高齢化で相続も増えている。「相続土地国庫帰属制度」は、相続した土地が放置されて周囲に悪影響を及ぼしたり、登記も更新されずに所有者がわからなくなったりすることを防ぐため、2023年4月に導入された。
ただ、国が引き取るには要件が定められている。建物があったり、他人の使用権があったりする場合などは認められない。また、10年分の管理費に相当する負担金を納める必要もあり、通常の宅地や農地は面積にかかわらず20万円となる。
制度を所管する法務省によると、今年6月末までに4001件の申請があり、そのうち1776件で国への帰属が決まった。国のものとなった土地は、農用地は農林水産省、森林は林野庁、宅地やそれ以外の土地は財務省が管理する。1776件のうち、宅地は660件、農用地は553件、森林112件、その他451件だった。
また、従来この制度とは別に、相続が放棄されるなどして誰も相続人がいない場合、一定の手続きをへて残った財産があれば国に帰属する仕組みがあり、この場合は農用地や森林も財務省が管理する。同省によると、相続人不存在によって2024年度内に国庫に帰属した件数は226件。人口減少や少子高齢化を背景に増加傾向にあり、今後も増える見通しだ。
コメント