「傘が強風で飛んできて愛車に傷がついた」誰の責任になる!? 被害を受けた時に必ずした方がいい行動と保険の使い方は?

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 もし、誰かの持ち物が風で飛ばされて愛車が傷ついたら「これは相手の責任でしょ!」と思いたいですが、実際にはそう簡単にはいきません。風による被害では、損害賠償や保険補償の対象にならないかもしれないのです。

相手のモノが飛んできたのに、なぜ保険で直せない?

飛来物による被害は所有者に管理の過失があれば賠償請求可能だが、強風などの場合は過失立証が難しく、多くは自己保険で対応することになる(Adobe Stock@hakase420)
飛来物による被害は所有者に管理の過失があれば賠償請求可能だが、強風などの場合は過失立証が難しく、多くは自己保険で対応することになる(Adobe Stock@hakase420)

 基本的に飛来物による損害では、「土地の工作物(建物や看板、塀など)に設置や管理の不備があった場合、その占有者は損害賠償責任を負う」と定められた民法717条が適用されることが多いです。

 風による飛来物で被害を受けた場合で、飛んできた物の所有者に過失があった、例えば「適切に固定していなかった」「明らかに危険な状態で放置していた」といった事情があれば、所有者に対し責任を問える可能性があります。

 しかし、実際には「予想以上の強風だった」「通常の設置方法だった」と主張されてしまえば、過失を立証するのは難しいでしょう。このように、加害者が誰か分かっていても、その人に過失が認められなければ、損害賠償請求はできません。傷ついた自分のクルマは、自分の保険でまかなうしかなくなってしまうのです。

被害状況がわかりやすいように撮影をしよう!

トラブルが起きた際は少しでも状況が第三者にも伝わるように撮影をしておきましょう(Adobe Stock@Caito)
トラブルが起きた際は少しでも状況が第三者にも伝わるように撮影をしておきましょう(Adobe Stock@Caito)

 強風被害では、自身の車両保険を使います。

 一般条件の車両保険なら、相手がいない単独事故や自然災害による損傷も補償の対象になります。エコノミー型(車対車+A)でも基本的に補償されますが、強風での被害だと申請しても、経年劣化やサビ、風とは関係ない物損(駐車中に人がぶつけた傷やへこみ)が混ざっていると保険会社に判断されると、補償対象外となる場合もあるため注意が必要です。

 風害による損害を明確にするには、被害発生の日時や状況を正確に記録し、現場や損傷箇所の写真を速やかに撮影しておきましょう。さらに、修理業者や第三者から被害状況の見解をもらえば、補償申請時の説得力が高まります。

 また、似たような被害で誤解が多いのが、高速道路などでの「飛び石」です。前の車が巻き上げた小石がフロントガラスに当たりヒビが入った場合、「ナンバーを控えたから相手の保険で直せるだろう」と思いがち。しかし、通常走行中に自然と石が跳ねたケースは不可抗力とされ、相手に賠償責任は生じません。

保険に頼りすぎず、日頃の備えが大切

加害者になってしまった場合には知らないフリをすることも可能だが、保険屋に相談をしながら相手の力になるのが理想的だ(Adobe Stock@Boomanoid)
加害者になってしまった場合には知らないフリをすることも可能だが、保険屋に相談をしながら相手の力になるのが理想的だ(Adobe Stock@Boomanoid)

 風による飛来物でクルマが傷ついた場合、多くは「自然災害による不可抗力」とされ、自分で修理費を負担するしかないのは、これまで説明してきた通りです。では、強風による事故で、自分が加害側になってしまったら、どうしたらいいのでしょうか。

 明らかに自分の所有物が飛び、他人の車を傷つけた場合、先の例のように知らぬ存ぜぬを突き通すこともできなくはありません。不可抗力ではないことを立証する必要があるのは被害者側なので、法的な責任を免れることも出来るでしょう。

 しかしながら、被害者が困っている状況を放置するのは道義的に望ましくないのも事実。無理やり責任を押し付けられているケースでは、自分を守る必要がありますが、自己責任やむなしと感じる場合には、警察・保険会社などへ通報・相談の上で、自分の懐が痛まず相手の力になれる方法を考えた方が良いでしょう。

 自動車保険契約では、「個人賠償責任補償特約」などを利用することができるかもしれません。この特約を使っても、事故はノーカウント事故に該当するため、自身の自動車保険における等級も下がることはありませんから、自身の懐は痛まずに相手の力になることができますね。

 近年、異常気象による突風やゲリラ豪雨が多発しています。被害に遭ってから保険の重要性を認識するのではなく、転ばぬ先の杖として、自動車保険を活用していきましょう。また、駐車環境や自宅のベランダなど、危険なところには駐車しない、飛びそうなものは事前に屋内へと移動するといった、風への対策も忘れずに。

文:佐々木 亘/画像:Adobe Stock(メイン画像=yamasan)

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