2026年2月8日の衆議院選挙の投開票が、いよいよ目前に迫りました。物価高が続き、「給料は上がらないのに、支出ばかり増える」と感じている人も多いのではないでしょうか。選挙戦では「減税」や「手取り増」が叫ばれていますが、私たちの家計を圧迫する本当の正体はどこにあるのでしょう。
税と社会保障に関する各党の公約1/6
出所:各党の公約をもとにLIMO編集部作成
今回は、衝撃の数字「国民負担率46.2%」の実態と、その背景にある社会構造について解説します。
1. 【国民負担に影響】高齢者3割社会「支える側」を増やしても追いつかない現実
日本の人口構造は、いま大きく変わりつつあります。2026年1月時点の推計では、人口減少が続く一方で、65歳以上の高齢者が全体の約3割を占めています。
総人口の推移2/6
出所:総務省統計局「2026年(令和8年)1月報 (2025年(令和7年)8月確定値、2026年(令和8年)1月概算値)」(2026年1月20日公表)
かつては、現役世代が高齢者を支えるバランスがある程度保たれていました。しかし現在は、女性や高齢者の就業が進み、「支える側」を増やす努力を続けているにもかかわらず、それ以上のスピードで高齢化が進んでいるのが実情です。
1.1 社会保障は「一生のコスト」へ。人口構造の変化が家計を直撃
わたしたちの生活と社会保障制度3/6
医療、年金、介護、子育て支援。私たちは生まれてから老後に至るまで、さまざまな場面で社会保障制度と関わり続けます。
この「生涯を通じた支え合い」は、日本社会の大きな特徴ですが、人口構成が変わることで、制度を維持するための費用のかかり方も大きく変化します。かつては、現役世代が高齢者を支えるバランスがある程度保たれていました。現在は、多くの高齢者の方々が現役として働き続けるなど「支える側」も多様化していますが、少子高齢化の進むスピードが非常に速く、従来の仕組みだけでバランスを保つことが難しくなっているのが実情です。
2. 【国民負担率46.2%】国民全体の所得「半分近く」税と保険料に。
負担の重さを示す代表的な指標が「国民負担率」です。これは、個人や企業の所得に対して、税金と社会保険料がどの程度を占めているかを表したものです。簡単に言えば、「日本全体で稼いだお金のうち、どれくらいが公的な負担に回っているか」を示す数字です。仕組みは以下のようになっています。
<国民負担率の計算式>
- (税金 + 社会保険料) ÷ 国民所得 = 国民負担率
※国民所得=個人や企業の所得を合わせた、国全体の稼ぎ
つまり、分子である「税金」や「社会保険料」が増えれば、当然この比率は高まります。
2.1 国民負担率(租税負担、社会保障負担)の推移
国民負担率(租税負担、社会保障負担)の推移4/6
1970年度の国民負担率は24.3%でしたが、2025年度の見通しでは46.2%にまで上昇しています。半世紀で、負担はほぼ2倍になった計算です。
特に増えているのが社会保険料です。給与明細を見て「思ったより手取りが少ない」と感じるのは、個人の感覚ではなく、社会全体の構造変化が背景にあります。
3. 【国民負担】社会保障費約137兆円「保険料だけ」で約82兆円を負担
では、集められたお金はどこに使われているのでしょうか。2025年度予算ベースで見ると、社会保障給付費の約44%が年金、約31%が医療に充てられています。
社会保障の給付と負担の現状(2025年度予算ベース)5/6
高齢化の進行により、この2分野の支出が突出していることが分かります。
注目すべきは、その財源です。社会保障にかかる費用の約6割(82.2兆円)は、私たちが支払う社会保険料で賄われています。税金(公費)よりも、保険料の負担が大きいのが現状です。
3.1 医療・年金が増えるほど「現役世代の手取りが減る」構造
医療費や年金給付が増えれば、その分、社会保障全体のコストも膨らみます。結果として、保険料の引き上げや負担増につながり、現役世代の手取りを直接圧迫します。
もちろん、現在の高齢者世代も、かつては保険料を負担してきました。私たち自身も、将来は給付を受ける側になります。問題は、世界でも例を見ないスピードで進む少子高齢化に、従来の制度設計が追いついていない点にあります。
4. 【社会保障】働き盛りに負担集中!ライフサイクルでみる「給付と負担の構造」
厚生労働省の資料「ライフサイクルでみた社会保険及び保育・教育等サービスの給付と負担のイメージ」をみると、一生を通じた給付と負担を見てみると、傾向ははっきりしています。
ライフサイクルでみた社会保険及び保育・教育等サービスの給付と負担のイメージ6/6
幼少期には、出産・育児支援や教育といった給付が多く、高齢期には年金や医療、介護が中心となります。一方、20代後半から50代にかけての働き盛りの時期は、給付よりも負担が大きく上回る期間が長く続きます。
この時期には、税金に加えて健康保険料や年金保険料が継続的に差し引かれ、さらに子育て世代では教育費や生活費も重なります。「収入はあるのに、余裕がない」と感じやすい理由が、ここにあります。
5. まとめにかえて
今回の衆院選では、「減税」や「負担軽減」という言葉が数多く並びます。しかし、その背景には、人口構造の変化と、社会保障制度が抱える重い現実があります。
「なぜこんなに引かれるのか」その理由を知ることは、漠然とした不安を減らし、選挙で何を基準に判断するかを考える手がかりになります。
選挙は、政治の話であると同時に、私たち一人ひとりの家計と将来に関わる選択です。投票前のいまこそ、負担の仕組みを知り、自分の暮らしと向き合う時間を持ってみてはいかがでしょうか。
参考資料
- 総務省統計局「2026年(令和8年)1月報 (2025年(令和7年)8月確定値、2026年(令和8年)1月概算値)」(2026年1月20日公表)
- 厚生労働省「令和6(2024)年財政検証関連資料②ー年金額の分布推計ー」
- 厚生労働省「社会保障の負担」
- 厚生労働省「社会保障の給付と負担(ミクロベース)」
- 厚生労働省「社会保障制度関係資料一式」
- 自民党「政権公約2026」
- 日本維新の会「政権公約マニフェスト 2026」
- 中道改革連合「2026主要政策パンフレット」
- 国民民主党「2026政策パンフレット」
村岸 理美








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