こんなのやってられんわ…"相続放棄でも草むしり義務発生"という空き家問題の意外な落とし穴二束三文の実家はいったいどうすればいいのか | きばいやんせ!鹿児島

こんなのやってられんわ…"相続放棄でも草むしり義務発生"という空き家問題の意外な落とし穴二束三文の実家はいったいどうすればいいのか

遺産にはプラスの財産だけでなく、マイナスの財産もある。母の末期がんと父の認知症を経験した永峰英太郎さんは「子どもは親の借金を相続することもあるが、相続放棄をすれば借金を放棄できる。だが、仮に空き家があった場合に相続放棄をすることで面倒や支出が増えるリスクがある」という――。

※本稿は、永峰英太郎『マイナス相続サバイバルガイド』(東洋経済新報社)の一部を再編集したものです。

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相続放棄したら葬儀費用は自腹なのか

私の友人は、父親の財産を相続放棄する際、知人から「葬儀費用はどうした?」と聞かれました。「父の口座から支払った」と答えると、「そうなると相続放棄は難しいのでは?」と言われます。

相続財産を放棄する際は「相続放棄前後、相続財産を処分したとみなされる行為はしてはならない」というルールがあります。処分すると、相続する意思があると判断され、単純承認になってしまう可能性があるのです。

しかし、結論から言うと、葬儀費用については、「問題はない」という判決が出ています。そのことを知り、友人は一安心でした。なお、葬儀費用を「香典」から支払っても問題はありません。香典は「喪主への贈与財産」だからです。そのほかの費用については、相続財産を処分したとみなされる危険性があるため、遺産から支払うのは避けるべきです。入院費用についても、です。

お金以外の相続財産については、価値のないもの(お金に換算できないもの)は、処分してもかまいません。一方、お金に換算できそうなものは、一切手を付けてはいけません。なかでも、厄介な存在となるのが、自動車です。

相続放棄が認められなくなる行為

出所=『マイナス相続サバイバルガイド

車に価値があると相続放棄は手こずる

古車買取業者に査定をしてもらい、「価値はない」と判断された場合は、そのまま処分してもかまいませんが、値段がついた場合は、被相続人の死後、相続放棄する人は、相続財産清算人を通して売却する必要が生じます。

とはいえ、車の売却のために、数十万円以上かかる相続財産清算人の選任申し立てを行うのは、現実的ではありません。一方で、勝手に売ってしまえば、単純承認になってしまいます。

駐車場代がかかっている場合、相続放棄すれば、支払う必要はありませんが、そうでない場合は、相続人がその支払いをずっと続けることになります。自動車の財産価値もどんどん下がるでしょう。

それだけに、相続放棄をすると決めたら、借金を抱える親は、早めに車を売却することが大切になります。あるいは名義変更するのもよいでしょう。そのほかの「価値のある財産」も、早い段階で売ってしまいましょう。

「プラスの遺産が空き家のみ」は注意が必要

私が父の遺産相続をする際は、その財産は「預貯金」と「空き家(土地・建物)」でした。単純承認し、そのすべてを相続しました。そして、父の死後、「空き家」は売却しました。このように「空き家」以外に、プラスの遺産がある場合は、単純承認の選択をするケースがほとんどでしょう。問題は、プラスの遺産が、基本的に「空き家」のみの場合です。

私は約8年間、無人の家を維持してきましたが、草むしりや部屋の換気、近隣への挨拶など、かなりの労力を強いられました。固定資産税も年6万円ほどかかりました。空き家を相続するということは、こうした負担が続くということなのです。

私の親の家は、その後、600万円で売却することができました。このように、利益が出るのであれば、家を相続すればいいのですが、利益が出そうにない場合は、相続する意味が見出せません。そこで浮かび上がるのが、「相続放棄」という選択肢です。

これによって、固定資産税はかからなくなりますし、二束三文の家を売る必要もなくなります。

空き家は「相続放棄すれば終わり」ではない

一見すると、「空き家=相続放棄」は、最善の策のように思えますが、注意すべき点があります。相続放棄後の家の管理です。

相続放棄の文字

写真=iStock.com/78image

※写真はイメージです

相続人全員が相続放棄した場合、空き家はどうなるのでしょうか。民法では、相続放棄に伴う管理義務の発生条件を明確にしており、それは「現に占有している者」(被相続人と同居していた者)となります。2023年4月以前は「相続放棄後も管理義務が発生」と定められていたのですが、民法改正によって「現に占有している者」と変更されました。

とはいえ、相続放棄した以上、配偶者や子どもは、その家を出なくてはいけません。居続ければ、不法占有となり、刑法上の罰則を受けることになりかねません。

それにしても、です。相続放棄したのに、ずっと家の管理をしなくてはいけないのは、あまりに酷です。そこで、家の管理は、家庭裁判所が選任した「相続財産清算人」に任せるという方法があります。

相続財産清算人に任せる方法もあるが…

相続財産清算人とは、相続人が誰もいない場合に、相続人に代わって相続財産を管理・清算するために指定される人のことです。多くの場合、弁護士が選ばれます。彼らは、プラスの財産があれば、債権者に分配するなどして、最終的に残った財産を国庫に帰属させます。

問題は、相続財産清算人への費用です。数十万円から100万円程度かかるのです。原則として、申し立てる者が負担しなくてはいけないのです。

そのため、相続放棄した人が、相続財産清算人の選任申し立てをすることは、ほぼないのが実情です。実際に相続放棄し、相続財産清算人の選任申し立てを先送りしている人に話を聞くと、「そんな大金出せないので……」ということでした。

なお、相続財産清算人の選任申し立ては、「現に占有している者」のほか、債権者なども対象になります。しかし、債権を大きく回収することは難しいため、彼らが申し立てを行うのは、まれです。

その結果、何が起こるのか。空き家を管理し続ける義務を負うということです。前述の人物は「年数回の草むしりは必須。換気もしている」そうです。

積み上げられた硬貨の上にCOSTの文字のキューブ

写真=iStock.com/patpitchaya

※写真はイメージです

空き家を相続放棄するリスク

一方、「現に占有している者」がいなかった場合は、空き家を管理する義務はありません。しかし、そうなると、空き家はどんどんボロボロになっていきます。その結果、近隣の家にダメージを与えてしまい、苦情が絶えないという事態になる可能性もあります。

永峰英太郎『マイナス相続サバイバルガイド』(東洋経済新報社)

永峰英太郎『マイナス相続サバイバルガイド』(東洋経済新報社)

皆さんは「相続放棄したんだから、もう無関係だ」と割り切って、空き家をほったらかしにすることはできますか?

私は、父が施設に入り、無人になった空き家を約8年間維持しましたが、ずっと「近所迷惑じゃないかな」と不安な気持ちばかりでした。草むしり、家の換気、近所への挨拶と、やることはたくさんあります。

「現に占有している者」でなくても、家の管理はやらざるを得ないのではないでしょうか? そして、一度相続放棄をすると、取りやめることはできません。空き家を相続放棄するということは、こうしたリスクを伴う可能性があるのです。

このリスクを回避したいのであれば、多少の面倒や支出は覚悟して、空き家の価値を確かめて、二束三文でも売ってしまうというのも、1つの手だといえるのです。

相続財産清算人の選任から国庫帰属までの流れ

出所=『マイナス相続サバイバルガイド

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