戦争開始から4年、プーチンは二重に失敗した、ウクライナでは東部のドンバス地方さえ征服できず、また、妨害と破壊工作で欧州を威圧しようとしてかえって反撃を受けていると 、2026年2月26日付ワシントン・ポストで、イグネイシャスが論じている。
今回の戦争で見逃されがちなのは、欧州がプーチンへの抵抗を強めていることで、欧州はロシアの「影の戦争」に対し独自の破壊活動で反撃し、一部の政府関係者は今や欧州は全面戦争の可能性にも真剣に備えるべきだと主張している。
最近、欧州の複数国の治安当局が新たな対ロ制裁を発表し、より強硬な情報活動を求めた。オランダの情報機関は2月19日付の報告で、ロシアは北大西洋条約機構(NATO)との紛争の可能性に備え始め、西側に事態をエスカレートさせる意思があるかを試すべく、放火、小包爆弾、航空機への妨害、海底ケーブルの破壊等を行っていると主張した。
英情報機関M16の長官も昨年12月、ロシアは空港や基地にドローンを飛ばす、放火や妨害工作を行う等、「戦争の一歩手前のグレーゾーン戦術で我々を試している」と警告し、ロシアは「威圧し、恐怖を利用し、操作しようとしている」、「これに反撃するのが情報・治安当局の仕事だ」と述べた。イギリスは今週、ロシアの戦争を支援しているとされる300の個人・企業に新たな制裁を課した。ドイツの情報機関BNDの長官は、今月のミュンヘン安全保障会議で「ハイブリッド戦争から生じる脅威が認められる」、「これと闘うべくBNDはより動ける組織になる必要がある」と述べた。
脅せば欧州はロシアのウクライナ攻撃を容認するとプーチンが当初考えていたのは明らかである。ところが、ロシアが核戦争をちらつかせても西側がウクライナ支援を止めなかったため、プーチンは対欧州「ハイブリッド戦争」活動を始めた。
ライデン大学の調べによると、こうした隠密攻撃は2023年の13件から24年には44件に増加した。しかし圧力をかければ欧州は後退する、とのプーチンの目算は大きく外れた。
「ロシアの隠密の妨害工作は裏目に出て、ロシアは戦略的優位を獲得するどころか、ロシアは敵対勢力だとの見方を強化した」とエストニアの報告書は言っている。欧州がまずしたのは隠密工作に関わったロシアの情報関係者600人の追放で、ロシアはその結果生じた穴をギャングで埋めたという。
また、昨年9月以降、欧州はロシアの影の艦隊のタンカーや、海底通信ケーブルを破壊、あるいはロシア産石油を輸送したとされる船を拿捕、さらに、ウクライナに小包爆弾を送ろうとした容疑や、米英加・エストニア・ポーランドに発火性の小包を送ろうとした容疑で10数人を逮捕した。追跡は宇宙空間にも及び、今月、欧州の治安当局は欧州の衛星通信を傍受した可能性のあるロシアの衛星2個を特定した。
ロシアの戦争は続いているが、コストは毎月上昇し、ロシアの死傷者数は130万人に近づきつつある。経済も破綻し始め、ロシアの統計によるとロシアの石油収入は昨年24%も減少した。財政状況も21年の黒字から昨年は700億ドル以上の赤字に転落した。
プーチンの戦争は意図せぬ結果の法則の具体例と言える。彼はウクライナを抹殺しようとしてかえってウクライナ人を結束させ、ロシア憎悪を生んだ。
同様に、欧州を服従させようと隠密裏に攻撃し、欧州の抵抗と国防へのコミットメントを強化してしまった。プーチンのウクライナでの大失敗は、歴史家バーバラ・タックマンが著書『愚者の行進』(邦題は『愚行の世界史』、中公文庫)の中で示した愚行のリストの最上位近くに位置するだろう。
* * *
情勢判断を誤るプーチン
イグネイシャスのこの論説は、ロシアのハイブリッド戦争に対して欧州各国がどう反撃しているかを描写している。プーチンは諜報機関KGBの出身であり、情報収集や工作活動をしてきた人であり、ハイブリッド戦争のような手段に頼る傾向がある人である。欧州諸国がそれに反撃しているのは結構なことである。
ウクライナ支援をしている日本に対しては、ロシアがハイブリッド戦争を仕掛けているとは見ていないが、欧州での諸事例を踏まえて、日本としても状況に応じて対応策を考えていく必要があると考える。
イグネイシャスは冷静な情勢判断をする人であるが、この論説では、プーチンはウクライナで大失敗をしているとして、いわば愚か者と断じている。その意見に賛成である。14年、プーチンは一兵も失うことなく、クリミアのロシアへの併合を成し遂げたが、その成功経験に目をくらませられて、ウクライナ戦争を始めたものと考えられるが、諜報機関出身者としては情勢判断を大きく間違ったのではないか。
高まる戦争終結への観測
ウクライナ戦争の今後については、もう 4 年も続くこの戦争は少なくとも今年中にはウクライナが生き残る形で終わるのではないかとの希望的観測を持っている。ロシアはその国際的地位を弱くした形でこの戦争は終わるように思われる。


コメント