鹿児島・霧島で創業138年の老舗蔵でしか味わえない焼酎の秘密 6代目杜氏が語る2つのキーワード | きばいやんせ!鹿児島

鹿児島・霧島で創業138年の老舗蔵でしか味わえない焼酎の秘密 6代目杜氏が語る2つのキーワード

おとなの週末編集部

今、焼酎が熱い。特に香り系など個性的な味わいの揃う芋焼酎が、居酒屋で家庭でと広く楽しまれている。なぜおいしくなったのか?なぜ個性的な味わいが生まれるのか?その理由を探るべく、鹿児島県霧島市の『中村酒造場』を訪ねた。霧島山系の良質な伏流水、契約農家から仕入れる芋や米など原料はもちろん、石造りの麹室での米麹造りまで。こだわりの“手造り製法”でここにしかない味を醸す。今なお進化を続ける代表銘柄「なかむら」の味わいはなめらかで深い。

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記憶や感性に訴えるそのための麹造り『中村酒造場』@霧島市

煉瓦造りの外観が印象的な中村酒造場。明治21年創業、今年で138年になる老舗蔵には、昔から変わらぬ石造りの麹室がある。その場所を6代目の杜氏・中村慎弥さんは「蔵の心臓部」と呼んだ。

「この土地ならではの軸足のしっかりした焼酎を造りたい」。そう考えたときに、継承しかつ突き詰めたいと考えたのが、蔵が昔から大事にしてきた米麹造りだ。

『中村酒造場』米麹造りに使う麹蓋とそこに広げられた種麹。黄麹、白麹、黒麹は酒造りでは共存できないというのが定説だが、そんなことはなかった。100年以上蔵に棲む微生物たちが教えてくれた

でき上がった焼酎の旨みや味わいの深さ、口当たり。これらは数値化しにくいものだが、それらが飲み手の感性や記憶に訴えかけると考える。そこに関与するのが米麹だ。

「さつまいもと米麹の関係は、お寿司で言えばネタとシャリの関係だと思うんです」と慎弥さん。まず、シャリを突き詰めようというわけだ。目指すべきは繊細でありながら芯のある酒質を生む、美しく力強い麹。

ここだけの深い味わいの鍵は、“手造り”にあり

そのためのキーワードその一が「手造り」だ。現在、米麹造りは95%以上が機械化されているというが、中村酒造場ではすべての麹を麹蓋という小さな木箱を使い、人工的な熱源も使わず、一枚一枚時間をかけて手入れをしていく。制約のある中で健全な麹を育てるために頼りとするのは、手触りであり、香りであり、いわば五感のセンサーで造る酒なのである。

そしてもうひとつのキーワードが「微生物」。米麹作りに欠かせない種麹菌。発酵に必要な酵母。「ここにしか出せない味」を目指すのなら、蔵に棲みついている菌を生かしたい、そう慎弥さんは考えた。日本酒などで蔵付き酵母による発酵は知られるが、のみならず、麹室に棲み着いた同蔵だけの種麹菌も使用したい。

5年をかけて「室付き麹」も実現させた。代表銘柄『なかむら』の新しい試みとして生まれた『なかむら三種混合麹』では室付きの白麹、黒麹、黄麹のハイブリッドな麹菌を使用。ひとつの液体の中に温度帯によって三種の個性が顔を出す、なんとも魅力的な味わいだ。

『中村酒造場』2022年よりリリースされた「なかむら新焼酎」シリーズ。「旬を届ける」「今を切り取る」がコンセプトで、毎年テーマを変え、その年出来た酒から個性を見極めブレンドされている

蔵オリジナルの微生物とも語らいながら、じっくり手造りされる同蔵の焼酎は、いずれもなめらかで、まろやかな口当たり。やさしい味わいが印象的だ。そこには霧島の大地が生む、美しい水や米、さつまいもも息づいている。

慎弥さんの言葉を借りればまさに“風景の浮かぶ酒”。もちろん頭の中にあるのは「シャリ」だけではない。まだまだ続いていく挑戦が楽しみだ。

『中村酒造場』6代目杜氏の中村慎弥さん

6代目杜氏の中村慎弥さん。効率化しては造り得ない「ここにしか出せない味」を手仕事にこだわり追求している。

『中村酒造場』

『中村酒造場』@鹿児島県霧島市

[名称]『中村酒造場』
[住所]鹿児島県霧島市国分湊915
[電話]0995-45-0214

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