「腎臓の数値が悪い」ピンとこない人に伝えたい腎機能の低下を放置が怖いこれだけの"理由" 健康診断で見るべき項目は? | きばいやんせ!鹿児島

「腎臓の数値が悪い」ピンとこない人に伝えたい腎機能の低下を放置が怖いこれだけの"理由" 健康診断で見るべき項目は?

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「腎臓の数値が悪い」と言われても、ピンとこないという方は多いのではないでしょうか(写真:asaya/PIXTA)

健康診断の数値、見て見ぬふりをしていませんか? 疲れやすさ、むくみ、息切れ……小さなサインを見逃していないでしょうか。生活習慣病を放置した先にある、深刻な腎臓病と透析治療の現実――。10万人以上の患者と向き合ってきた腎臓内科医鈴木孝子氏の新著『からだの声を聴く習慣』より一部抜粋し再構成のうえお届けします。

増え続ける慢性腎臓病

前回(『糖尿病の3人が劇的に改善した”共通点” 「生活習慣病のフルコース」60代男性は人工透析を回避、インスリン治療回避した2人』)は、生活習慣を変えることで人生が好転した三人の患者さんをご紹介しました。彼らが直面していたのは単なる数値の異常ではなく、放置すればもっと深刻な病気へと進行していく可能性のある危険な状態でした。

ここで特に注目したいのが、腎臓への影響です。糖尿病や高血圧、高脂血症、肥満といった生活習慣病の増加に伴い、慢性腎臓病(CKD: chronic kidney disease)が大きな問題となっています。

国内の患者数推計は約2000万人。成人の5人に1人が該当するという数字です。慢性腎臓病は、今や新たな国民病ともいわれています(「CKD診療ガイド2024 日本腎臓学会編」より)。

偏った食生活や運動不足、飲酒、喫煙といった生活習慣は腎機能の低下を招き、腎臓病発症のリスクを高めます。慢性腎臓病は特定の病名ではなく、腎機能の低下やタンパク尿、血尿などが3カ月以上にわたって認められる場合に診断されます。

慢性腎臓病が怖いのは、行きつく先に「腎不全」が待っているからです。じわじわと時間をかけて悪化が進む慢性腎不全まで進んでしまうと、現代の医学では回復させる方法はありません。その後の治療は、できるだけ腎機能の低下を遅らせ、残存期間を延ばすことが目的となります。

腎臓の働きが通常の30%以下になると「腎不全」と診断され、さらに10%以下になると「末期腎不全」となります。この段階では、命を守るための選択肢は人工透析か腎移植の2つしかありません。

日本透析医学会の「わが国の慢性透析療法の現況」によると、国内の透析患者数は2023年末時点で約34万3500人となっています。そのうち男性が約22万人、女性が約11万人で、国民の362人に1人が透析を受けている計算です。

透析が必要になる原因として、以前は慢性糸球体(しきゅうたい)腎炎が多かったのですが、1998年から糖尿病による腎症が最も多くなり、現在では全体の約4割を占めています。

豊かさとともに変化してきた生活スタイル――特に糖質と脂質に偏った食生活、運動不足、ストレスなどが生活習慣病を引き起こし、最終的に透析が必要になる患者さんが増えているのです。

私の患者さんの多くも、こうした道筋をたどり腎臓を悪くしています。しかしその実、「腎臓の数値が悪い」とお伝えしても、ピンとこないという方が多いのが現状です。

腎機能の低下を放置すれば、着実に腎不全へと進行します。そのため、投薬で状態を安定させながら、生活習慣の改善に取り組んでいただけるよう説得するのが、腎臓内科医としての私の日常です。

人にとって腎臓とは

腎臓と聞くと、「尿を作るところ」というイメージを持つ方がいるかもしれません。しかし、胃や腸などと比べると、腎臓の働きについてはよくわからないという方も多いようです。

実際、腎臓は「肝腎要(かんじんかなめ)」といわれるほど、私たちのからだの中で重要な役割を担っている臓器です。ここでは、その多岐にわたる働きについて詳しくお話ししましょう。

私たちの体内では、血液が約1分で全身をめぐり、心臓に戻ることをくり返しています。この血液循環により全身に酸素や栄養が届けられる一方で、体内には老廃物などの不要なものも溜まっていきます。

何しろ1分でひとめぐりしてくるわけですから、そのままにしていたら老廃物はどんどん蓄積してしまいます。この老廃物を処理する役割を担っているのが腎臓です。

腎臓は背中側の腰の上あたりに左右対称に2つあり、それぞれ120~150gほどの握りこぶし大で、ソラマメのような形をしています。小さな臓器ですが、体内を循環する血液の約4分の1が流れ込むといわれており、常にフル稼働しています。

老廃物を含む血液は、腎臓内の「糸球体」というフィルター機能でろ過されます。きれいになった血液は体内に戻り、老廃物や余分な水分は「原尿」として尿の元になります。糸球体は左右の腎臓それぞれに約100万個、合計200万個もあり、これらが協力して血液をろ過しているのです。

糸球体でろ過された原尿は、「尿細管(にょうさいかん)」という管を通り、「腎盂(じんう)」という腎臓の内側に流れ込みます。そこから「尿管(にょうかん)」を通って膀胱に集められ、体外に排出されます。

健康な大人で1日に約150ℓの原尿が作られますが、その99%は体内に再吸収され、実際に尿として排出されるのは1%程度、約1.5ℓです。原尿には老廃物だけでなく、塩分やマグネシウム、アミノ酸、ブドウ糖などの栄養素も含まれています。尿細管を通る間に、からだに必要な成分が再吸収され、水分量や栄養バランスが調整されます。

腎臓の働きは尿を作ることだけではありません。血圧を調整する「レニン」や、赤血球を作る「エリスロポエチン」というホルモンを分泌し、血圧をコントロールしたり、貧血を防いだりしています。また、ビタミンDを活性化することで腸内でのカルシウム吸収を助け、骨を強くする役割も担っています。

このように腎臓は、多様な働きを通じて全身の健康を支える、まさに「要(かなめ)」の器官なのです。

なぜ生活習慣病が腎臓を傷つけるのか

このように重要な働きを担う腎臓が、なぜ糖尿病や高血圧といった生活習慣病によってダメージを受けてしまうのでしょうか。

私たちの血管には、「血管内皮細胞」という大切な細胞があります。この細胞は血管の内側を覆い、血液がスムーズに流れるよう調整したり、血液が固まりすぎないようにコントロールしたりしています。健康な状態では、血管の内側は滑らかで、血液がサラサラと流れています。

ところが、生活習慣病になると、この血管内皮細胞が傷ついてしまいます。糖尿病では、血液中の糖分が多すぎることで血管の内側が損傷します。高血圧では、強い圧力で血液が流れるため血管に負担がかかります。さらに、コレステロール値や尿酸値が高い状態も同様に血管を傷つける原因となります。

血管が損傷すると、血液の流れが悪くなります。これは全身の血管で起こることですが、特に腎臓への影響は深刻です。腎臓は非常に細い血管(毛細血管)が密集している臓器だからです。

腎臓内の「糸球体」というフィルターを覚えているでしょうか。このフィルターは、髪の毛よりもずっと細い血管が毛糸玉のように集まってできています。左右の腎臓を合わせると、200万個ものフィルターがあるとお話ししました。

血管が傷ついてくると、これらのフィルターが1つ、また1つと働けなくなっていきます。最初は200万個がフル稼働していたのに、やがて180万個、160万個……と減っていくのです。すると、残ったフィルターに負担がかかります。

たとえば、10人で行っていた仕事を8人、7人でこなさなければならなくなったら、一人ひとりがより頑張らなければなりません。でも、そんな状態が続けば、みんな疲れ果ててしまいます。腎臓でも同じことが起こるのです。これが、生活習慣病によって腎臓がダメージを受けるメカニズムです。

機能するフィルターが少なくなると、血液をきれいにする力が弱まり、本来なら尿として排出されるはずの老廃物が体内に溜まってしまいます。

この状態が続くと、心臓や脳にも悪影響を及ぼし、心筋梗塞や脳卒中のリスクも高まってしまうのです。

不眠不休で働く腎臓は、忍耐強く、なかなか声を上げません。限界を超えるまで症状がほとんど表れることがない「沈黙の臓器」なのです。手足にむくみが出たり、疲労感がとれない、貧血や立ちくらみといった体調の変化がサインになることはありますが、かなり悪化するまで自覚症状がない場合がほとんどです。

初期であれば食事療法や投薬治療で機能の低下を遅らせることもできます。しかし、腎機能の低下が進み「腎不全」になると、回復の手立てはありません。気がついたときには打つ手がなく、納得できないままに治療が必要になるという方も少なくないのです。

私のクリニックでは、多くの患者さんが「最近疲れやすくて」「むくみが気になる」といった症状で受診されます。詳しくお話を伺い、検査をしてみると、腎機能に問題が見つかることがあります。

特に働き盛りの方は、仕事を優先するあまり健診を受けなかったり、体調の変化に気づいても「今度時間ができたら」と先延ばしにしてしまうことが多いようです。

腎臓が悪いと全身に倦怠感が出るのですが、疲れのせいだと思い込み、危機感を持たずに生活を続けてしまうのが怖いところです。忙しくて医療機関にかかることなく、病状を悪化させてしまう患者さんは、日本の高度経済成長期に寝る間も惜しんで働いてきた世代に多いように見受けられます。

事の重大さがなかなか伝わらない方には、「このままでは大変なことになりますよ」と思わず声を大にして言うのですが、どう伝えれば危機感を持っていただけるのか、医師としてどのようにサポートすればいいのか、私はいつも自問自答しています。

サインを見逃さないで

腎臓病の初期サインとして、次のような症状があります。

・朝起きたとき、顔や足のむくみがある
・疲れやすさが続く
・尿の泡立ちが多い
・夜中にトイレに起きる回数が増えた
・食欲がない
・貧血や息切れを感じる

これらの症状があっても、「歳のせい」「疲れているだけ」と見過ごしてしまう方が多いのです。

また、健康診断で以下の項目に異常がある場合は要注意です。

・血圧が高い(130/80 mmHg 以上)
・血糖値やHbA1cが高い
・尿たんぱくが陽性
・血中クレアチニン値が高い
・尿素窒素(BUN)が高い

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これらの数値異常は、腎臓からの重要なメッセージかもしれません。ひとつでも当てはまる項目があれば、早めに医療機関を受診することをお勧めします。

前回ご紹介したAさん、Bさん、Cさんも、最初はこのような軽微な兆候から始まっていました。彼らが幸運だったのは、まだ間に合うタイミングで適切な治療を受け、生活習慣を変えることができたからです。

あなたの腎臓は、今この瞬間も休むことなく働き続けています。その健気な働きに応えるためにも日々の生活習慣を見直し、腎臓を大切にしてあげてください。

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