日本全体の「1.5倍の電力」を爆食い
〈10年後には地球上の誰もが、いま最も影響力のある人よりも多くのことを達成できるようになるでしょう〉(2025年2月のブログ投稿より)
AIの発達が、人類にバラ色の未来をもたらす……OpenAI創業者のサム・アルトマンは、おそらく宣伝もかねて、こんなことをしばしばネット上に書き込む。その一方で、彼が率いるOpenAI内部では、耳を疑うような計画が進行中だという。
「われわれは2033年までに、250ギガワット規模の計算能力を実現する」
250ギガワットと言われても、ピンと来ないかもしれない。一般的に、大規模な火力発電所1基や、原子力発電所1基のパワーが1ギガワットとされる。
日本の電力需要は、ピーク時でも約170ギガワット。つまりOpenAIは、8年後までに「たった1社で」、日本列島の1.5倍という途方もない電力を消費するつもりだというのだ。
テックジャーナリストの小久保重信氏が言う。
「国際エネルギー機関(IEA)が今年、AIの普及にともなうデータセンターの電力消費量予測をまとめています。それによると、世界全体のデータセンターの電力消費量は、生成AIの普及が始まる直前の2022年と比べて、来年2026年には倍増する見込みです。
AIの開発に取り組んでいる企業・組織の中では、やはりOpenAIがインフラ拡大で先行しています。10月初めにも、半導体企業の米AMDと提携し、6ギガワット規模のGPU(画像処理装置)を導入すると発表しました。この電力需要は、シンガポール一国分に匹敵します」
「勝者総取り」の瞬間を夢見て……
現時点で、すでにOpenAI、グーグルなどのビッグテックがもつAIデータセンターは、ひとつで10ギガワット規模の電力を消費しているとされる。それが10倍、20倍などと拡大してゆくとすれば、地球は未曾有の「大エネルギー消費時代」を迎える。
本当にそんな荒唐無稽なことが起こるのか、と疑う人も多いに違いない。AI業界では、半導体メーカーがGPUを売って得たカネをビッグテックのAIに投資し、ビッグテックはAIで稼いだカネでまたGPUを買う……という「循環取引」がバブルを招いているとの指摘もある。
ただ、過去のITバブルなどと同じく、すぐにAIバブルも崩壊すると断じるのは、尚早かもしれない。
AIには、計算に使うチップの数やデータを増やせば増やすほど性能が上がり、ある規模を超えたとたん、飛躍的に賢くなるという「スケーリングの法則」がある。
数年〜10年ほどの間、死ぬ気で投資して、人間の能力を完全に超える「超知能」を完成させれば、ノーベル賞級の発見や新規ビジネスの発案も次々とできる……。
そんな「勝者総取り」を確信しているからこそ、ビッグテックはバブルを承知で、湯水のごとくカネをつぎこんでいるのだ。
後編記事【地球が壊れる…!AIが巻き起こす「電力争奪戦」原発再稼働・火力発電所の大増設、そして待ち受ける「地獄絵図」】へ続く。
「週刊現代」2025年11月10日号より


コメント