九州に「陸の孤島」、高速道路の開通を見通せず…整備された1360km、面積の近いオランダの半分以下 | きばいやんせ!鹿児島

九州に「陸の孤島」、高速道路の開通を見通せず…整備された1360km、面積の近いオランダの半分以下

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 2月6日朝、宮崎県南端の串間市。JR日南線・串間駅から約2キロ西にある山あいの造成地で、「カン、カン、カン」とつち音が響いていた。約40人が高速道路の高架を支える 橋台きょうだい を建てるため、足場などでの作業に励んでいた。

東九州道の串間IC(仮称)の建設が進む工事現場(奥は宮崎県日南市方面、手前は鹿児島県志布志市方面)(2月6日、宮崎県串間市で)=秋月正樹撮影

 整備しているのは、東九州自動車道の串間インターチェンジ(IC、仮称)だ。都井岬の野生馬で知られる串間市にはまだ高速道路がなく、「陸の孤島」とも呼ばれる。

 北九州市から鹿児島県までを結ぶ東九州道(総延長469キロ)のうち、日南東郷IC(宮崎県日南市)―志布志IC(鹿児島県志布志市)の約41キロが最後の「ミッシングリンク」(未開通区間)だ。串間市はその間にある。国土交通省はこの区間を全て事業化しているが、用地取得はまだ4割程度。開通時期は見通せていない。

 市の人口は約1万4500人。30年間で約4割も減った。「高速道路がないと、なかなか企業に来てもらえず、若い人たちが串間に残れない。自治体で条件の差が出ている。早く整備し、地域間の差を是正してほしい」。武田浩一・串間市長はこう訴える。

 市内で肉牛の繁殖に励む武田亮さん(31)は、JAみやざきが検討している県内7か所のセリ市場の再編を懸念しており、「串間の市場がなくなれば、宮崎市など遠くまで運ぶのに高速道路がないと難しい。畜産を続けていくために東九州道だけはしっかりつないでほしい」と話す。

 救急搬送や、南海トラフ地震が起きた際の避難路・支援路としても期待されており、市消防本部は「東九州道は命の道」とする。

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九州道全線開通から30年…東九州道はつながっていない 

 九州の高速道路網(高規格道路の中九州横断道路を含む)は未完だ。これまでに計約1360キロが整備され、九州道、長崎道、大分道、宮崎道は全線開通した。九州道の全線開通は1995年だが、30年以上過ぎた今も東九州道はつながっておらず開通率は91%だ。暫定2車線区間も多い。

 さらに、西九州道(開通率71%)、南九州西回り道(同73%)、九州中央道(同43%)や、中九州横断道(同31%)の計約190キロも事業中だが、残る約70キロの整備の見通しは立っていない。山口県の日本海側を通る山陰道は約4割(鳥取、島根県を含む)が残っている。

 一方、九州に近い面積のオランダの高速道路延長は約2800キロあり、九州の完成延長の倍以上だ。九州とオランダは2000年頃は経済規模がほぼ同じだったが、現在のオランダは九州の倍の規模まで成長した。国交省幹部は「失われた30年の長期停滞で、地方の公共投資は著しく抑制されてきた。その結果が九州とオランダとの差に表れている」と話す。

「豊後伊予連絡道路」九州と四国の直結に期待 

 「本州、九州の全体にインパクトを与えるプロジェクトだ。九州の半導体関連産業の盛り上がりを本州に広げていく可能性がある」

 今月2日、関門海峡に巨大つり橋を建設する「下関北九州道路」(下北道路)の整備を検討する、国交省の有識者会議の第1回会合が東京で開かれ、委員の一人はこう強調した。

 既存の関門橋は開通から52年、関門トンネルは68年経過し、修繕による通行止めも多いため、下北道路は整備の切迫性が高まっている。会議は夏に基本方針をまとめる予定で整備手法、事業主体などを検討する。

 委員の小林潔司・京都大名誉教授(国土計画)は「資金調達、事業、運用で今までの枠組みにとらわれない新しいスキームを開発していくべきだ」と語った。

 下北道路のノウハウは、九州と四国を橋や海底トンネルでつなぐ「豊後伊予連絡道路」(大分市―愛媛県伊方町)の整備にも影響を与えるとみられている。

大分市側から望む豊予海峡。奥に見えるのが愛媛県伊方町の佐田岬(大分市佐賀関で)

 同連絡道路は、瀬戸内海を中心とする巨大な循環型経済圏を西日本に形成する突破口になるとされ、九州地方知事会や九州市長会、九州経済連合会が政府に調査を要望している。

 2月に大分、熊本両県の経済同友会が大分市で開いた交流懇談会では、地元経営者が「九州の製造拠点と四国の素材産業が直結されれば、精密部品や重要素材を短時間で運べる。世界最強の半導体ベルト地帯が誕生する」などと語り、経済界の期待も高まっている。

 また、熊本県と熊本市は、都市高速道路の整備に向けた検討を進めている。

民間資金の活用カギ…官民連携投資が重要に

 「老朽化した橋や下水道などの修理、更新を進めるのは当然だ。だが、それだけでは九州、日本の成長、発展はない。将来に向け戦略的に幹線道路の整備を進めていくべきだ」。国交省元技監で国土政策に詳しい大石久和氏はこう語る。

 ただ、新規の大プロジェクトを進めるには、政府の財政状況にも配慮する必要がある。このため、今後は官民連携投資が重要になる。民間資金の活用が実現のカギを握る可能性が高い。

 国内の大手金融機関では、道路などのインフラ事業に国内外の投資資金を呼び込み、新たなマネーの循環をつくろうと研究を進める動きも出てきた。海外事例を参考に可能性を探る。

 半導体関連産業が集積する九州は、日本の経済安全保障の要であり、食料供給基地としての重要性も高まっている。一方で、交通インフラ整備の立ち遅れが、経済損失を招いているとの指摘が各方面からあるため、対応を急ぐ必要がある。

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