なぜか、実年齢より老けて見られてしまう―そんな悩みの真の原因が、いま次々と解明されている。若さには理由があるのだ。
「老化促進物質」が体内で広がる
「酒には弱いが、心肺には自信がある」「足腰は大丈夫だが、脂肪肝で悩んでいる」
こんなふうに、自分の健康状態について、いわば「得意分野」と「弱点」があると考えてはいないだろうか。
しかし最新の研究によれば、内臓や筋肉の衰えは、それぞれ別々に進むのではなく、互いに「つながっている」のだという。国立循環器病研究センター心血管老化制御部部長の清水逸平氏が解説する。
「最も有名な例だと、心臓と腎臓の機能低下が同時に起こることが報告されています。疲労感が続く、血圧が上昇するといった腎機能低下の症状が出た人では、動脈硬化が進みやすく、最悪の場合、心不全を起こすというものです。
腎臓は『クロトー』と呼ばれる、代謝の調整や炎症の抑制を行う抗老化たんぱく質を分泌します。それが心臓にも巡って、同様に老化を抑えているので、腎臓が老化すれば心臓も同時に衰えてしまいます。この現象は、血液中を流れる物質を通して各臓器が相互に影響を及ぼし合う『クロストーク』という作用によって起きていると考えられます」
このように、役割や特性がまったく異なる複数の臓器がほぼ同じタイミングで機能低下をきたす現象は、「多臓器老化」と呼ばれ、いま医学界の「大きな謎」として注目されている。腎臓の他にも、腸内細菌によって制御されているTMAO(トリメチルアミン―N―オキシド)という物質が動脈硬化や心不全リスクを高めることが多くの研究で示されているという。
多臓器老化は、自覚症状が現れないまま静かに進行することが多い。
「臓器の老化は、その内部で老化した細胞が増えることによっても起こります。
老化した細胞というのは、本来は常に行っているはずの分裂を止めてしまった細胞のこと。詳しいメカニズムはわかっていないのですが、老化細胞が溜まった臓器は疾患に対する防御力が落ちてしまいます。
その結果、病気にかかっていない時は問題なく生活できていても、わずかでも不調になれば、大きな病気を発症してしまうのです」(清水氏)
心肺トレーニングが老化を食い止める
多臓器老化を進めてしまう要因には、肥満や睡眠不足、運動不足などの生活習慣の乱れが挙げられるが、一見すると因果関係がわからないものもあるという。
「たばこの煙、排気ガス、PM2・5などで汚染された大気が、心臓の老化を加速させる可能性が報告されています。詳しいメカニズムはわかっていませんが、肺の細胞が大気汚染に晒されることで老化して、そこから老化促進物質が他の臓器に広がるのだと思います」(清水氏)
老化細胞の影響は血管を通じて、身体じゅうに広がってゆくので、食い止めることは難しい。ある臓器が健康な状態だとしても、他の臓器の老化が進めば、悪影響を免れられないのだ。
何か手立てはないのだろうか。東北大学スマート・エイジング学際重点研究センターの河村拓史助教が言う。
「我々が行った研究によると、高齢になっても一定以上の心肺体力を維持している人は、全身の老化の進行が遅いことがわかっています。
心肺体力を維持するには、ジョギングやサイクリングなどの有酸素運動が効果的です。毎日運動する必要はなく、息が少し上がる程度の運動を週に数回、定期的に続けることで、全身の老化を遅らせることができると考えられます」
多臓器老化は自覚しにくいからこそ、「まだまだ元気だ」と思っている時から手を打つことが大切だ。心臓、肺、腎臓など、大事な臓器の健康は、生きる活力の源になる。
「週刊現代」2025年10月27日号より


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