「国のため戦うか?」日本13%、韓国67%の衝撃。「日韓関係の現在地」とは? 澤田克己×みたらし加奈対談(前編) | きばいやんせ!鹿児島

「国のため戦うか?」日本13%、韓国67%の衝撃。「日韓関係の現在地」とは? 澤田克己×みたらし加奈対談(前編)

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なぜ、韓国の若者は「国のために戦う」と答える比率が高いのか?(写真:Yeongsik Im/PIXTA)

ロシアによるウクライナ侵攻、中東情勢の悪化、そして台湾有事への懸念など、世界情勢が混迷を極めている。一方で日本では、戦後80年が経過するなかで戦争の「記憶」は痛みの伴わない「記録」へと変質している。

そんな折に出版されたのが、伊藤忠商事元社長で元駐中国大使の丹羽宇一郎氏による最後の著書、『Z世代は戦後初めて銃をとる世代になるかもしれない』だ。戦中・戦後を生き抜いた財界の重鎮からの最後のメッセージは、現代を生きる若い世代の目にはどう映るのか。

今回は、日韓関係に精通する毎日新聞論説委員の澤田克己氏と、若手世代の代表として各メディアにも出演する臨床心理士のみたらし加奈氏が、「日韓関係」の現在地について語り合った特別対談をお届けする。

前編では、丹羽氏の著書を起点に、日韓関係の「世代による意識差」について2人が語り合った。

日本のパスポート保有率は「2割以下」

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澤田克己(以下、澤田):『Z世代は戦後初めて銃をとる世代になるかもしれない』で丹羽宇一郎さんは、日本人が「外の世界」を知ることの重要性を強く訴えていました。現在、日本人のパスポート保有率は17.8%(2025年外務省統計から算出)と2割以下です。

商社のトップを務め、駐中国大使として外交の最前線に立っていた丹羽さんだからこそ、Z世代を含む若い方にリアルな国際情勢を知ってもらい、平和について自分の頭で考えてほしいという切実な願いが込められているのでしょう。

みたらし加奈(以下、みたらし):資本主義の構造自体や拡張的な側面そのものが戦争を生み出しているという観点も重要ですが、現場で起きていることを実際に体感することで得られる視点もあると感じました。

澤田さんが専門とされている韓国の情勢も、インターネットで知ることと、実際に行って得られることは違いますよね。

澤田:韓国社会の日本に対する感情は、ここ数十年でかなり変化しています。僕と同じ50代以上の世代と、Z世代とではまったく感覚が違います。

最大の理由は「経済力の変化」でしょう。今の豊かな韓国からは想像しにくいかもしれませんが、30年前の韓国は、日本と比べて大きな経済格差がありました。1人当たりの名目GDPは、日本のわずか4分の1程度しかありませんでした。

さらに、1980年代の冷戦期まで、北朝鮮と軍事的に対峙する韓国は西側ブロックの「最前線」でした。北朝鮮の後ろに控える中国、旧ソ連、ハンガリーなど東欧諸国とは一切国交がなかった。それが、この30年で劇的に変化したわけです。

50代以上の世代の韓国人には、経済格差を背景とした日本に対するコンプレックスの裏返しとしての「反発」がありました。しかし、今の若い人たちには対日コンプレックスがありません。日本による植民地支配に対する批判的な考えは持っているだろうけれど、変にバネを効かせて反発するようなことは少ないと思います。

言葉の近さと、歴史的な距離感

みたらし:以前、韓国の独立記念日にソウルの博物館を訪れたときのことです。日本の歴史においては「暗殺者」と評価が分かれるような人が、韓国では「英雄・独立義士」として紹介をされている展示などがありました。その場では日本語を話すこともはばかられるような視線を感じることは、実際にありました。

一方で、同世代の韓国の友人たちと、その歴史について話したときの温度感はまったく違います。もちろん人によるとは思いますが、年代や地域など、ある程度のフィルターを通すことで友好関係は変わる側面もあるかもしれません。

そもそも、私が韓国の友達と仲良くなったきっかけは、「セタッキ(洗濯機)」「カジョク(家族)」など言葉が似ていることでした。しかし「言葉が似ている」という部分に対しても、さまざまな見方があると聞きました。そのあたりは、いかがですか。

澤田:漢字はもともと中国から来たものですから、「日本と言葉が似ていて良くない」という感覚はあまりないと思います。

ソウルに「独立門」という有名な門があります。あれは日本からの独立という意味ではなく、清からの独立を意味しています。それは、日清戦争で日本が勝利し、清に朝鮮を放棄させたという国際政治のダイナミズムの中で起きたことでもあります。でも今は、韓国でもその歴史的な背景を知らない人が多いですね。

みたらし:なるほど。歴史の上で起きた事象を、事実ベースで知っていくことはすごく難しいと感じます。しかし時にはそれが、次世代の交流につながることもあるのかもしれません。

エンタメと「反日」認識

澤田:日本では、エンタメによる文化交流の影響も大きいと思います。世代だけでなく男女差もあり、特に女性は韓国に親しみを感じる人が多いとされています。2024年の世論調査(※内閣府が実施)によると、韓国に対して「親しみを感じる」「どちらかというと親しみを感じる」と答えた人の割合は、男性が49.8%、女性は62.9%でした。

みたらし:SNSを見ていると韓国で制作されたコンテンツや、著名人の発言などが「反日だ」と流れてくることがあります。以前、私が観たもののなかで印象的だったのは、『京城クリーチャー』というNetflixの韓国ドラマです。

「日本の植民地支配があった時代、日本軍が韓国の人々に対して人体実験をする」といった内容です。私は特に「反日」だというようには感じられなかったのですが、SNSにあるそういった流れを受けて、分断されてしまう可能性もあるのでしょうか。

澤田:先ほどみたらしさんがソウルの博物館での展示を、「日本では暗殺者とされる人」とおっしゃったように、見る方向が違えば歴史の評価はまったく変わります。

澤田:植民地支配は、日本だけがしていたわけではありません。イギリス、オランダ、フランスの支配が、日本より紳士的かというとそうとも言えません。

そして、支配に抵抗する独立運動が起こり、武装闘争が起こるのも歴史の必然です。その国の歴史の中では「正当な戦い」と評価されるのは当然のことです。

だから、植民地支配の時代背景を舞台としたドラマがすぐに「反日」だとは言えません。ただ、みたらしさんの話を聞く限り、そのNetflixのドラマに関しては、事実関係に問題があるように思えます。反日的だと感じる人がいるのは理解できます。

みたらし:難しい問題ですよね。日本と韓国、どちらの歴史的な物の見方に立つかによって、前提が変わる場合もある。そこに、両国が抱える歴史的関係性の複雑さがあるのでしょう。

「徴兵制」と「国防意識」の関係

澤田:別の社会、別の国、別の歴史があって、別の常識があるということをちゃんと認識することが大切ですね。それが、丹羽さんもお話しされていた「外の世界のことをちゃんと知る」ことにもつながるのだと感じます。

みたらし:別の社会といえば、韓国は徴兵制が存在していることが日本との大きな違いですよね。徴兵制の存在は、戦争に対する意識に影響するのでしょうか。

澤田:『Z世代は戦後初めて銃をとる世代になるかもしれない』では、「もし戦争が起こったら、国のために戦いますか?」という意識調査が取り上げられています(※「世界価値観調査」による22年の調査結果)。

調査では、日本で「はい」と答えたのは13.2%であるのに対して、韓国で「はい」と答えたのは67.4%でした。

(画像:『Z世代は戦後初めて銃をとる世代になるかもしれない』 p.94より抜粋)

日本社会には「国のために戦いますか」と聞かれたときに、「戦う」と答えなければいけないという規範意識はありません。

しかし、韓国の事情は違います。北朝鮮との軍事的な緊張状態が続いており、徴兵制もあるのですから、やはり「戦う、と答えるべきだ。答えなければいけない」という規範意識が働くわけです。

澤田:もちろん体感的に言っても、日本よりも韓国のほうが国防意識が高いように感じるのですが、その違いが世論調査の数字ほどかけ離れているのかはわかりません。

みたらし:BTSのメンバーが徴兵される時に、デモが起きましたね。

澤田:ただ、それは女性などが中心ですよね。「BTSは徴兵免除すべきだ」という議論が巻き起こりましたが、やはり同世代の若い男性からすると「公正に扱え。特別扱いするな」という主張になります。現在の韓国では「公正かどうか」が、とても強く意識されるんです。

以前は、家の事情などで兵役を短縮される人もいましたが、今の韓国は少子化で、基本的には例外なく全員が徴兵されています。

韓国社会では、「海兵隊」や「ブラックベレー」など精鋭部隊だった人は尊敬されるという軍事文化が根付いてもいます。

みたらし:人間には、「利用可能性ヒューリスティック」という、繰り返し見聞きする出来事ほど選択肢として思い出しやすいという傾向があります。澤田さんのおっしゃる徴兵制があるからこその戦争への意識というものも、「何かあった時にその選択を取る」というところにつながるでしょう。

澤田:10年に、仁川の沖合で韓国海軍の哨戒艦「天安」が北朝鮮の魚雷攻撃によって沈没させられ、46人が死亡しました。その8か月後には、北朝鮮による砲撃で韓国軍の兵士2人、民間人2人が死亡しています。

当時、徴兵されて軍隊にいたという韓国人男性とその事件について話すと、「自分と同じように徴兵で軍務に就いていた仲間が殺された。北朝鮮には強い反感を抱いた」と話していました。当時、徴兵されていた年代の男性で、北朝鮮に悪いイメージを持っている人は多いとも言っていました。

韓国外交と対米関係

みたらし:北朝鮮との緊張状態があるからこそ、日本や中国とは平和的な外交を望むというような流れはありますか。

澤田:冷戦後、韓国が意識してきたのは、日本、アメリカ、中国、ロシア、この4つの国です。特に日米中との関係をどうマネージしていくかが大切でした。

澤田:中国と韓国は、92年に国交樹立しています。中国は、01年にWTOに加盟して「世界の工場」となって経済発展を果たしました。そして韓国は、中国に部品や素材、設備を売って利益を得たのです。

そうした関係は、10年代以降に大きく変わりました。現在の対中依存は、日本で考えられているほどではありません。ただ、それでも経済的に無視できる相手ではありません。それに中国は韓国にとって陸続きの隣国ですし、歴史的にも圧迫されてきた。この感覚は残っているように感じます。

もちろん北朝鮮に対する影響力を中国に期待するという面はあるのですが、それを抜いても、韓国にとって中国と喧嘩するという選択肢はないように思います。

在日米軍と在韓米軍の決定的な違い

みたらし:丹羽さんの書籍には、日米の関係性が、戦争に巻き込まれるかどうかに強く関係すると書かれています。では、韓国とアメリカの関係性はどうなのでしょうか。

澤田:実は、60年代から70年代にかけてのベトナム戦争では、米軍に次ぐ規模で韓国軍が派兵していました。それは、アメリカから要請されたのではなく、韓国が「うちが出します」と言ったんです。

というのも、当時の韓国は53年に北朝鮮との戦争が「休戦」したばかりで、常に北朝鮮の脅威にさらされていました。韓国軍よりも在韓米軍のほうが装備も良く、練度も高くて、軍事的に強い。だから、北朝鮮は韓国軍よりも、在韓米軍のほうを怖がります。

もしアメリカがベトナム戦争にかかりきりになり、米軍がすべてベトナムへ行ってしまったら困る。だから「韓国軍が(ベトナムへ)行くから、在韓米軍は韓国にいてください」ということです。もちろん、アメリカから最新式の装備をもらうなどというメリットも大きかったのですが、基本は在韓米軍の抑止力を切実に必要だと考えていたことがあります。

極東地域全体に展開するための基地が在日米軍です。それに対して在韓米軍は、韓国を北朝鮮から守ることが基本的な任務になっています。21世紀になってアメリカは、他地域にも投入できるよう在韓米軍の性格を変更してきましたが、基本は変わっていません。日本と韓国では、駐留する米軍の性格がかなり違います。

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