年始には実家へ帰省する人が多くなり、家族で相続に関する話し合いが行われることが頻繁にあります。
特に、土地に関しては、「遠くに住んでいて利用する予定がない」「周りに迷惑がかからないようにきちんと管理するのは経済的な負担が大きい…」など、相続したものの手放したいケースがでてきます。
そこで、今回は「相続した土地を手放したいときの『相続土地国庫帰属制度』」と題して政府広報オンラインに記載されている情報を基に、制度の概要、費用、手続きなどを紹介します。
※投稿の画像は【写真】をご参照ください。
1. 【土地の相続】相続財産にふくまれる不要な土地を、損しないで手放す方法とは?
まず、相続した財産に土地が含まれている場合、どうやって取り扱えば良いのでしょうか?
いちばん簡単なのは、自分で住んだり賃貸にするなど有効活用するケースです。特に、都心部の土地は高値になる可能性もあり、売却することも検討できます。
しかし、相続した土地によっては活用できず、買い手がなく売却できない場合があります。特に、人の少ない地方部の土地は売れないケースも有り、管理費用や固定資産税の負担を考慮して「相続放棄」する選択肢を取る人も多い現状です。
相続放棄は、相続の開始があったことを知った日から「3か月以内」に家庭裁判所に申し立て、被相続人の権利や義務を一切受け継がないことにする手続きです。相続を放棄できますが、不要な土地だけでなく預貯金や株式など全ての資産の相続権も失うことになるので注意しましょう。
この放棄については、相続財産に不要な土地があっても、その土地だけを放棄することができず、土地を含め全て相続するか、他の資産も含め全て相続放棄するかしかありませんでした。
しかし、最近では土地を手放したい相続人が増加傾向にあり、土地が放置される「所有者不明土地」が発生する要因の一つとなり社会問題化しています。
そこで、所有者不明土地の発生を予防するため、相続登記の申請の義務化などとあわせ、相続した土地の所有権を国庫に帰属できる制度が創設されることになりました。
「相続土地国庫帰属制度」は、相続又は遺贈で宅地や田畑、森林など土地の所有権を相続した人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国に引き渡す(国庫に帰属させる)新制度です。
では、どんな人がこの制度を利用できるのか、条件などを紹介します。
2. 【土地の相続】不要な土地を国に引き渡すことができない条件とは?
出所:政府広報オンライン「相続した土地を手放したいときの『相続土地国庫帰属制度』」
不要な土地を国に引き渡す申請ができるのは、相続や遺贈で土地を取得した相続人だけです。
制度の開始前(2023年4月27日)に相続した土地でも申請できます。また、兄弟など複数で相続した共同所有の土地でも申請できますが、その場合は所有者(共有者)たち全員で申請してください。
なお、生前贈与を受けた相続人、売買などによって自ら土地を取得した人、法人などは、相続や遺贈で土地を取得した相続人ではないため申請できません。
制度ができたものの、全ての土地を国に引き渡すことができるわけではなく条件があります。ちなみに、以下の条件に当てはまる土地は、通常の管理や処分に当たり多くの費用や労力が必要になるので引き取り対象外です。
- 建物がある土地
- 担保権や使用収益権が設定されている土地
- 他人の利用が予定されている土地
- 特定の有害物質によって土壌汚染されている土地
- 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
また、「該当すると判断された場合に不承認となる土地」は、以下となります。
- 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
- 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
- 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
- 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
- その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
気になる費用ですが、申請する際には、1筆の土地当たり1万4,000円の審査手数料を納付する必要があります。
また、法務局による審査を経て承認されると、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費相当額の負担金を納付します。負担金は、1筆ごとに20万円が基本で、同じ種目の土地が隣接していれば、負担金の合算の申出をすることができ、2筆以上でも負担金は20万円が基本です。
なお、一部の市街地の宅地、農用地区域内の農地、森林などについては面積に応じて負担金を算定するものもあります。
3. 【土地の相続】「相続土地国庫帰属制度」を利用するための手続きを紹介
出所:政府広報オンライン「相続した土地を手放したいときの『相続土地国庫帰属制度』」
便利な「相続土地国庫帰属制度」を利用し、相続した不要な土地を国に引き渡すための手続きを紹介します。
まず、法務局へ相談してください。相談時には、「(1)相続土地国庫帰属相談票」「(2)相談したい土地の状況について(チェックシート)」「(3)土地の状況等が分かる資料や写真(可能な範囲で)」が必要です。
相談については、事前予約制で1回30分となり、法務局・地方法務局(本局)の窓口で対面相談又は電話相談ができます。相続土地国庫帰属制度の事前相談の予約は、「法務局手続案内予約サービス」を利用してください。
また、相談先の法務局ですが、承認申請する土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局(本局)の不動産登記部門(登記部門)で受付け。支局・出張所では相談を受け付けていません。
引き渡したい土地が遠方にあるなど、承認申請する土地が所在する法務局・地方法務局(本局)での相談が難しい場合は、近所の法務局・地方法務局(本局)でも相談できます。相談できるのは、土地の所有者本人だけではなく家族や親族も可能です。
そして、申請書・添付書類などの用意が必要となります。
新たに自分で作成する書類は以下の4点です。
- 承認申請書
- 承認申請に係る土地の位置及び範囲を明らかにする図面
- 承認申請に係る土地及び当該土地に隣接する土地との境界点を明らかにする写真
- 承認申請に係る土地の形状を明らかにする写真
さらに、用意する書類は以下です。
- 申請者の印鑑証明書
- 固定資産税評価額証明書(任意)
- 承認申請土地の境界等に関する資料(あれば)
- 申請土地に辿り着くことが難しい場合は現地案内図(任意)
- その他相談時に提出を求められた資料
申請先は、土地の所在地を管轄する法務局・地方法務局の本局です。支局・出張所には提出できません。提出は、窓口に持参する方法と郵送による方法があるので、遠方の場合でも対応できそうです。
申請書には、審査手数料の額に相当する収入印紙を貼り提出。申請後は、申請を取り下げた場合や、審査の結果で土地を引き取れないと判断されても、審査手数料は返ってきませんので注意しましょう。
承認後の負担金ですが、土地を国が引き取ると判断した場合、帰属の承認の通知とともに負担金の納付を求める通知が申請者に届きます。申請者は、記載されている負担額を当該通知が到達してから30日以内に納付しましょう。
負担金が納付された時点で、土地の所有権が国に移転。土地の所有権移転の登記は国が行うので、申請者が登記を申請する必要はありません。
なお、負担金の納付を求める通知が到達してから30日以内に納付しないと、国庫帰属の承認の効力が失われます。失効した場合、同じ土地の国庫帰属を希望するときは最初から申請し直す必要があるので注意です。
いかがでしたでしょうか。
土地や建物、マンションやアパートなど不動産を相続した場合、法務局で相続登記する必要があります。
2024年4月1日より前の相続でも、未登記であれば義務化の対象です(3年間の猶予期間あり)。正当な理由がないにもかかわらず、不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を行わなかった場合、10万円以下の過料の適用対象となるので注意が必要です。
参考資料
髙橋 マナブ





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