ドイツの次はインドに抜かれ、世界5位に転落…「高市政権誕生」に騒ぐ人が知らない"崖っぷち日本"の実態今やるべきは党利党略、政権抗争ではなく成長戦略 | きばいやんせ!鹿児島

ドイツの次はインドに抜かれ、世界5位に転落…「高市政権誕生」に騒ぐ人が知らない"崖っぷち日本"の実態今やるべきは党利党略、政権抗争ではなく成長戦略

たった3年で世界4位→5位へ転落

国際通貨基金(IMF)の最新の推計によると、2026年、わが国の名目の国内総生産(GDP)はインドに追い抜かれる見通しだ。わが国経済は、ドイツに追い抜かれてからわずか3年で世界4位から5位に転落する見通しだ。

為替レートの円安が続いているため、ドルベースで比較されるGDPが過小評価される部分はあるものの、わが国経済の凋落ぶりはかなり厳しい。

本来であれば、国が一丸となって、真剣に経済を立て直すことを考えるべきなのだが、最近の政権抗争を見ると、どうしても悲観的にならざるを得ない。「今、政権抗争などやっている場合ではない」と叫びたい気分になる。

【図表1】2024年 名目GDP(億ドル)

World Bank Groupより編集部作成

永田町はどこへ向かって政治をしているのか

第2次世界大戦後、わが国ではホンダやソニーが新しいモノを生み出してヒットにつなげ経済は急速に回復基調を辿った。ところが、1990年代初頭にバブル崩壊以降、わが国の経済は活力を失ってしまった。その後、リーマンショックなどもあり、わが国経済の復活への道は見えてこない。

ただ、足元、わが国でも前向きな動きはある。半導体やAIデータセンター分野での投資はそうした兆候ともとれる。政府が関連分野での企業の投資や人材育成をより強力にバックアップすれば、息の長い景気回復を実現することは可能だろう。政治も与野党対立などに時間を使わず、わが国の国力を回復する具体策を議論すべきだ。

現在の政治は、財政支出や金融政策で目先の景気を支え、有権者の支持獲得につなげようとするだろう。それで持続的に経済成長率を高めることは難しい。この状況が続くと、わが国経済の凋落を止めることはできないだろう。わが国の先行きは心配だ。

米国・中国を上回る成長が見込まれるインド

10月14日、IMFは世界経済見通しの改定版を公開した。その推計データは、衝撃的なものだった。2026年、わが国がインドに追い抜かれて世界5位に転落する見通しを示したのだ。

ムンバイの東海岸のスカイラインの夕暮れ

写真=iStock.com/Sanjog Mhatre

2026年、わが国の名目GDPは4兆4636億ドルになる見通しだ。1ドル=150円で換算すると、約670兆円である。物価の影響を除いた実質GDP成長率は、前年比0.6%のプラスの予想だ。経済が成長すること自体はよいことなのだが、他の国や地域に比べ成長率は圧倒的に低い。

IMFの推計によると、2026年、米国の実質GDP成長率は前年比2.1%のプラス、不動産バブル崩壊の中国は同4.2%の成長が見込まれている。これらの国を上回る成長を実現する、と期待されているのがインドだ。

インドの2026年の実質GDP予測は、前年比6.2%増の予想だ。2025年からやや減速するものの成長率は高い。

【図表2】日本とインドの名目GDP推移(1970年~)

World Bank Groupより編集部作成

投資が投資を呼ぶ好循環ができあがっている

その要因の一つとして、近年、中国からインドへ事業拠点を移管する多国籍企業は増加していることがある。人口の増加を背景に、エネルギーや自動車などの需要も拡大傾向にある。数学など自然科学分野に秀でた人材が豊富なこと、海外直接投資の増加を追い風に、半導体、ITコンサルティングなどの分野でも企業の成長期待は高い。

モディ政権は、補助金の支給などで“メイク・イン・インディア”政策を推進し、工業化を加速させようとしている。こうした政策もあり、投資が投資を呼ぶ環境ができあがっている。ロシアからの安価な石油輸入も、インドのエネルギーコストの低減、成長加速に寄与した。

それに対して、わが国の景気は停滞気味だ。特に、名目賃金の伸びは、コメや食品など物価の上昇率を安定的に上回っていない。個人消費に勢いはない。供給制約を解消する政策も見られない。

高付加価値のモノ・サービス(新しい需要)を創出し、経済の実力を高める施策も見当たらない。わが国が、自力で経済成長率の向上を目指すことは難しくなっている。少子化、高齢化、人口減少の加速により、自治体の存続が危ぶまれるところも増えている。その裏返しとして、世界経済におけるわが国の存在感は低下した。

日本経済がここまで凋落した根本原因

わが国の凋落要因の一つは、円安の進行である。2021年から2025年10月半ばまで、日本円はドルに対して約50%下落した(ドル高・円安)。

世界経済のGDPは米ドルで評価する。ドル建てに換算したわが国の名目GDPの額は目減りした。その間、わが国と米国などの内外の金利差は拡大した。2021年春ごろから世界的にインフレが進行し、2022年春以降、米欧、新興国などで中央銀行は急速に利上げを実施した。

対照的に、わが国は“異次元緩和”と呼ばれた金融緩和策を継続した。根底にあったのは、景気の長期停滞の記憶だろう。1990年初頭の“バブル崩壊”により、わが国は“失われた30年”などと呼ばれる停滞に陥った。

1997年には金融システム不安も発生し、デフレ環境が深刻化した。それ以降、賃金は伸び悩んだ。個人も企業も、そして政府も、リスクテイクを恐れた。経済全体が守りの姿勢に入り、現状維持を優先した。

その結果、中長期的に成長期待の高い分野に、ヒト、モノ、カネの経営資源が回らなくなり、経済運営の効率性を高めることができなかった。景気が持ち直しても利上げは難しい状態が続いた。

目論見は外れ、国民生活は厳しい状況に

2011年11月、アベノミクスが本格始動すると、政府は日銀と協定を結び異次元緩和でデフレ脱却を目指した。物価が上昇しづらい環境下、異次元緩和で円安は加速し、企業業績は“かさ上げ”され、先行きの期待は高まった。

その一方、構造改革はできなかった。“デジタル後進国”ぶり、効率性の悪いコメの流通構造、人手不足の深刻化、AI先端分野での競争力の低さ、そして解雇規制緩和の遅れなどによる名目賃金の上昇ペースの鈍さなどから確認できる。

政治は金融緩和などで目先の景気を支えれば、いずれ経済成長ペースは回復すると考えたのだろう。しかし、個人消費の弱さなどを見る限り、今なお政治家の想定した経済環境は実現していない。

日本経済を上向かせるラストチャンス

わが国の存在感が低下するようだと、国際世論におけるわが国の発言力の低下は避けられない。投資先としての日本の魅力度も低下する。

それを回避するため、今すぐに政治は協力して成長戦略を取りまとめ、実行に移すべきだ。取り組むべき範囲は広くなるだろう。成長期待の高いAI、ロボット、再生可能エネルギー、量子計算分野など、わが国の製造技術の重要性が高まる分野は多いはずだ。産業競争力の根幹をなす、基礎研究の強化も待ったなしだ。今ならまだ挽回のチャンスはある。

規制緩和などの構造改革により、一時的に企業の倒産が増えたり、失業率が高まったりするという痛みは避けられない。しかし、痛みなくして経済運営の効率性を高めることは難しい。世界経済の環境に合わなくなった法律や制度を改変する。起業支援を拡充し、人々のチャレンジ精神や新しい取り組みを増やす。

新しい発想、取り組みを増やし、持続的な経済の成長につなげる。そのための政策議論こそが、今のわが国に必要であり、重要なことと考えられる。もし、成長戦略が実行に移されれば、企業の設備投資や人材育成は加速し、成長期待は高まるだろう。

優先すべきは政権抗争ではなく成長戦略

それにより、個人金融資産(6月末で2239兆円)の50%を占める現金・預金が消費に回る可能性は高まる。個人消費の増加は、国内の企業が637兆円に膨れ上がった内部留保を賃上げや追加的な設備投資に回すことにもつながるだろう。

政府、政治家は多様な利害を調整し、人々のリスク許容度、成長期待を高めなければならない。党利党略に基づいた政権抗争ではなく、中長期の視点で日本経済の成長率を押し上げる政策議論が必要だ。

日本の国会議事堂

写真=iStock.com/CHUNYIP WONG

※写真はイメージです

海外では、実際にそうした取り組みを進めた国もあった。リーマンショック後、イタリアは挙国一致で実務家内閣を組閣し、痛みを伴う改革を断行した。それがあったからこそ、現在、イタリア経済はユーロ圏の中でもそれなりの底堅さを維持している。

不安なのは、現在、わが国の政治家から、そうした覚悟が感じづらいことだ。このままだと、世界経済における日本経済の凋落はさらに鮮明化し、わたしたちの生活負担はこれまで以上に高まると懸念される。

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