九州発ビジホ「ホテルAZ」なぜ急拡大?独自のサービスに専門家「ドーミーインの夜鳴きそばに匹敵する」 | きばいやんせ!鹿児島

九州発ビジホ「ホテルAZ」なぜ急拡大?独自のサービスに専門家「ドーミーインの夜鳴きそばに匹敵する」

「HOTEL AZ」/株式会社アメイズ公式プレスリリースより引用「HOTEL AZ」/株式会社アメイズ公式プレスリリースより引用

無料駐車場&ロードサイド立地で空室を埋める

九州を中心に展開する「HOTEL AZ」。シングルルームは朝食付きで6380円(税込)。ゴールデンウィークやお盆、年末年始であっても原則として同じ料金で宿泊できるとあって、人気を集めている。またリーズナブルな統一価格を維持する一方、チェーンの規模を拡大。2024年11月末の87施設から、2026年5月末時点で93施設に増やしている。

ただ、同一価格で経営を安定させるには、平日や閑散期にも客室をある程度埋めなければならないだろう。そこで強みとなるのが同ホテルの立地だ。

HOTEL AZの多くが建つのは、大都市の駅前ではなく郊外の幹線道路沿い。そのため広い平面駐車場を有しており、宿泊客は無料で利用できるため、車で各地を回ったり、翌朝そのまま仕事先や遠征先へ向かったりしやすいのである。実際、公式サイトでは、団体や長期滞在、スポーツ合宿での利用も案内している。

出張や工事現場の仕事、物流の仕事、スポーツ団体の遠征などは、年間を通して見込める需要だ。郊外への出店は、安い土地を確保するためだけではない。駅前ホテルとは重なりにくい、車移動を前提とした宿泊客の需要に照準を合わせた戦略といえる。

ホテル評論家の瀧澤信秋氏が解説する(以下「」内は瀧澤氏のコメント)。

「ロードサイドホテルは以前、車で移動する出張客が中心でした。しかし近年は、家族で車の旅をする人にも利用されています。中心部のホテル料金が高騰すれば、少し離れた場所に安く泊まり、車で移動しようと考える人も増えるでしょう」

平日と休日で異なる需要を取り込めるようになっているということか。

「帝国ホテルも真似できない発想」

ただ、郊外の幹線道路沿いの立地には、周辺に飲食店や商店が少なく、夕食を取ろうにも徒歩圏内に店が見つからないといった弱点もある。車移動をすればいいが、そうすると飲酒できない。

HOTEL AZはその不便を館内のサービスで補っている。施設によっては100円ショップを設け、菓子や日用品などを販売。館内レストラン「志高」では、夕食バイキングを1210円(税込、3歳以上小学生以下は990円、3歳未満無料)で提供し、追加料金でアルコールの飲み放題も選べる(2026年9月現在)。

「ホテルの中で買い物をすると割高なイメージがあるでしょう。ところが、HOTEL AZはあえて100円ショップを入れているなど、ローコストというホテルイメージともマッチしている。帝国ホテルといったハイクラスの施設には無論真似できない発想でしょう」

「HOTEL AZ」/株式会社アメイズ公式プレスリリースより引用イメージギャラリーで見る

瀧澤氏は、100円ショップや夕食バイキングを、有料ではあるがお得感という点で同ホテルの代名詞となるコンテンツと捉えているそうだ。「ドーミーイン」の「夜鳴きそば」のように、サービスがホテルの象徴として定着すれば、再び選ばれる理由にもなる。

こうしたサービスに力を入れる一方、客室は必要最低限の機能に絞る。設備や備品を増やさず、導入費用や清掃の手間を抑えながら、無料朝食や駐車場、館内飲食など、利用者にとって必要性の高い部分は充実させる。このメリハリのある設計が低価格を支えているという。

個々のサービスだけなら他チェーンにもまねできるだろう。同じくダイナミックプライシングを採用せずに同一価格を掲げる大手ホテルチェーン「東横イン」もある。HOTEL AZの特徴は、郊外立地と車移動の需要を軸に、簡素な客室、無料駐車場、館内飲食を組み合わせた点にあるのだ。

ホテル業界が値崩れしたときに試されるモノ

固定客を増やしながら、このモデル全体でチェーン展開するのは簡単ではないだろう。

だが、このモデルの優位性は、都市部のホテル料金よりリーズナブルであることが前提である。供給が需要を上回り、駅前のホテルが一斉に値下げへ動けば、状況は悪化しかねない。

「現在はインバウンドの活況で中心部のホテル料金が高騰しているため、低価格を維持するHOTEL AZの存在感が際立っています。ただ、ホテル業界は浮き沈みが激しく、いずれ値崩れする可能性もある。中心部の比較的設備が整ったホテルがHOTEL AZの価格と同等かそれ以下になったとき、同ホテルがどのような立ち位置になるかは考えなければなりません」

ホテルに荷物を持って入るアフリカ系アメリカ人男性Photo by iStockイメージギャラリーで見る

そのとき力を持つのが、これまでに築いたリピーターとの関係だと瀧澤氏はみる。

「人は、困っているときに助けられたことを覚えています。中心部のホテル料金が高騰していても、HOTEL AZは価格を変えずに泊めてくれた。そうした経験があれば、次も利用しようと思う常連客もいるのではないでしょうか」

HOTEL AZにとって、その信頼を九州の外でも築けるかが次の課題だろう。

アメイズは近畿や北関東への同ホテルの出店も見据える。地価も交通事情も異なる地域で、九州のロードサイドで育った「365日同一価格」のモデルはどこまで通用するのか。今後の出店が、その答えを示すことになるのかもしれない。

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