人手足りない、後継ぎいない、耕作放棄地が増える…田んぼを守るため鹿児島で始まった「乾田直播」、田植えも代かきもいらず人員半分 | きばいやんせ!鹿児島

人手足りない、後継ぎいない、耕作放棄地が増える…田んぼを守るため鹿児島で始まった「乾田直播」、田植えも代かきもいらず人員半分

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乾田直播で栽培される稲=8日、中種子町野間

 乾いた田んぼに直接種もみをまいてコメを育てる「乾田直播(ちょくは)」が、じわり広がっている。人手不足を補う栽培手法として注目を集め、2024年産の面積は過去最高を記録。鹿児島県内でも試験的に取り入れる生産者が出始めた。田植えなどの必要がなく、省力化を実現できる一方、収量が減るのが課題で安定生産が鍵となる。
 8日、中種子町の農地に10センチ前後に伸びた緑色の稲が整然と並んでいた。2月下旬にまいた超早場米コシヒカリの種もみが成長した。水を張っていないため、一見雑草のよう。農業生産法人「たすくる」の川南幸三社長(56)は「住民から何を作っているの、とよく聞かれる」と笑う。

●放棄地を減らせ
 たすくるは、種子島農業公社が25年に始めた乾田直播の試験栽培を担う。導入のきっかけはコメ農家の減少や耕作放棄地の増加だ。
 25年産は27アールに約18キロをまき、玄米(1等米)690キロ分を収穫。その後の二期作では652キロが取れた。農家ら試食した約40人からは「通常栽培するコメと比べて遜色はない」と好評だった。
 課題は収量だ。田に水を張る従来手法の6、7割にとどまった。
 それでも苗作りや田植え、田植え前に土と水をかき混ぜる代かき、田植え後の苗を食べるジャンボタニシ対策の手間が省け、必要人員は半分程度で済んだ。種もみは苗より安く、コスト削減効果もあった。
 今季は作付けを約30倍の8ヘクタールに増やした。「なつほのか」ともち米も栽培し、水やりのタイミングなど工夫を重ねる。川南社長は「放棄地対策にうってつけ。収量や価格、経費を考え、採算が取れるようになれば他でも導入が進むのでは」と期待する。

●過去最高2.3万ヘクタール
 農林水産省の調査では24年産の乾田直播面積は2万3041ヘクタールで過去最高。播種(はしゅ)機を付けたトラクターなどを使うが、ドローンでまく生産者もいる。
 県農産園芸課によると、県内は試験栽培が大半で本格導入には至っていない。省力化は図れるものの、地域や天候によって雑草や病害虫の防除が増えるのが一因とみる。
 南さつま市金峰の東馬場農場は今季から試験栽培を始めた。田植えの必要はないが、代かきをするのが、たすくるとは異なる。
 農地の水はけが良いため、V字の溝を設けて種もみをまく手法を採用。農閑期の冬場に代かきを済ませることで作業時期を分散できるメリットがある。
 3月上旬、30アールにイクヒカリの種もみ約18キロをまき、4月上旬に発芽を確認した。400キロの収量を目指す。作業効率を上げ、規模を広げていきたい考えだ。
 古田雅則社長(47)は「通常1回で済む除草材の散布が3回に増え、専用の農機具が欠かせない。機械がない農家にとってはハードルになるだろう」と語る。
 県農産園芸課も一定の栽培面積と農業機械の必要性を指摘する。「選択肢の一つとして情報収集し、支援態勢を整えたい」としている。

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