男性のがんで最も多い「前立腺がん」の最新技術による診療を、熊本大学病院が始めた。九州では九州大学病院に続いて2番目のスタート。診療チームは「南九州の前立腺がん患者の治療に貢献したい」と話している。
新たな前立腺がん診療は、このほど有効性と安全性が確かめられて保険適用された「PSMA標的治療」。PSMAとは前立腺の細胞膜に存在する特殊な糖たんぱく質で、とくに前立腺がんで過剰に現れる特徴がある。PSMA標的治療では、このPSMAにだけくっつく薬剤を注射して、まず前立腺がんやそこからの転移がんがあるかを診断する。
次に、PSMAにくっつく放射性同位体を含んだ薬剤をあらためて注射し、この薬剤が放出する高いエネルギーの放射線を使って、がん細胞だけを選んで壊す。いわばPSMAを標的とした「診断」と「治療」の2段階の組み合わせだ。
この診断と治療には、PET装置などの大型医療機器が用いられる。また放射線を使った治療となるため、周囲への被曝(ひばく)を抑える専用病室や、注入する薬剤の調合施設なども必要になる。熊本大ではこれらを整備し、2月から治療を始めた。
熊本大によると県内の前立腺がんの新規患者は年1300人。このうち検査によって前立腺がんが見つかる割合が11~16%で、このなかの4分の1にPSMA標的治療が有効になるという。治療チームを主導する泌尿器科の神波大己教授は「治療対象の患者数を年34~57人と推計し、対応できる体制をとった。前立腺がんの進行を遅らせる効果が期待できる」と話す。
治療期間は約8カ月で、6週間おきに計6回、1~2泊の入院を繰り返す。また治療を依頼してから開始するまでも1~3カ月かかる。治療費は計300万円を超すが、ほぼすべての患者が高額療養費制度の対象になるという。


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