「腎臓寿命を延ばす」ために知っておきたい食事の常識5選 腎臓病患者が食生活でガマンする時代は終わった | きばいやんせ!鹿児島

「腎臓寿命を延ばす」ために知っておきたい食事の常識5選 腎臓病患者が食生活でガマンする時代は終わった

腎臓大復活

腎臓病の人もちょっとした工夫で普通の人と変わらないものが食べられるようになっています(写真:オクケン/PIXTA)

昔といまを比べると、腎臓病の常識は大きく変わりました。たとえば、以前は「腎臓が弱い人は運動なんかしないで安静にしているほうがいい」「腎臓病になったら非常に厳しい食事制限に耐えなくてはならない」「腎臓病はいったん悪くしたらよくならない」といったことが当たり前とされていました。

しかし、これらはすべてウソ。いまは腎臓病の人も適度な運動をするほうがいいとされていますし、食事もちょっとした工夫で普通の人と変わらないものが食べられるようになっています。もちろん「腎臓病はよくならない」というのも誤りで、「腎臓リハビリ」というメソッドを実行すれば、着実に進行を抑えたり病状を回復させたりできるようになっているのです。

この「腎臓リハビリ」のメソッドの提唱者として、従来の腎臓治療の〝誤った常識〟を大きく変えてきたのが上月正博・東北大学名誉教授。上月教授は、新著『腎臓大復活』の中で、腎機能を強化して人生をよみがえらせていくためのノウハウを惜しみなく紹介しています。

以下では、その上月教授が「腎臓病の健康常識のどこがどう変わったのか――食生活編」について解説します。

「じゃ、いったい何を食べろっていうんだ」

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腎臓が悪い人の食事というと、真っ先に「厳しい食事制限」を思い浮かべる人も多いでしょう。もしかしたら、みなさんの中にも「たんぱく質を摂りすぎちゃダメ、塩分も控えなきゃダメ、糖分にも気をつけて」と医師や栄養士から口酸っぱく注意されている方がいらっしゃるかもしれません。

でも、そんなにいろいろなものを制限していたら、毎日の献立づくりもたいへん。「じゃ、いったい何を食べろっていうんだ」という気にもなりますよね。

それに、食事の制約が多いと、一緒に食卓を共にする家族にも多大な労力や忍耐を強いることになります。いくら腎臓の健康のためとはいえ、日々の食生活面でのストレスや疲労が限界点に達しているという人も多いのではないでしょうか。

しかし、いまは腎臓病治療の常識が大きく変わり、慢性腎臓病の人でも「ちょっとした食事の工夫」をすることによって、普通の人とほとんど変わりのない食生活を送れるようになってきているのです。

通常、慢性腎臓病で腎機能が低下してきた人は、「塩分」「糖質」「たんぱく質」などを制限するよう注意を受けるものですが、私が考案した「腎臓リハビリ」では、これらを厳しく制限することもなく、なおかつ日々ストレスなく明るい食生活を送れるように、さまざまな工夫を凝らしています。

では、腎臓病の食事の常識がどのように変わったのか。食事でどんな点を工夫すればいいのか。新旧の常識を見比べながら、ひとつずつ紹介していくことにしましょう。

変わってきた「腎臓」のための食事の常識

古い常識……腎臓病の人は厳しい食事制限をガマンするのが当たり前

【新常識1】腎臓病の人は食を細らせてしまうのがいちばん危険!

腎機能が低下してくると医師や栄養士からさまざまな食事面の制限を課せられるわけですが、なかにはこうした食事制限をまじめにやりすぎて、食を細らせてしまったり、体重を落としてしまったりする人も少なくありません。

でも、じつはそれがいちばん危険なのです。とくに70代以上の高齢者の場合、食事量の低下は病気や衰えを進ませる第一歩。食事量が減ってたんぱく質などの栄養が不足すると人の体は自らの筋肉を分解して不足分を補おうとするため、筋肉量がてきめんに減ってしまうのです。なかには、短期間のうちにサルコペニア(筋肉減少症)やフレイル(虚弱)を進ませてしまう人もいます。

しかも、栄養不足によって「筋肉→たんぱく質」の分解が進むと、結局たんぱく質をたくさん摂取したのと同じ状況となり、腎機能をいっそう弱らせてしまう事態につながることが多いのです。ですから、全体の食事量を減らしてしまうのは絶対にNG。1日3食「ちゃんと食べる」ことを徹底するべきです。

それに、食事制限というものは、あれこれガマンして細かく守って行なおうとするよりも、食べ方を工夫したうえで少々アバウトなくらいの姿勢で臨むほうがいいのです。目を吊り上げてがんばるよりも、肩の力を抜いて必要なポイントだけを守って少しいい加減に行うくらいのほうが結果につながりやすいんですね。

また、そういうおおらかな姿勢でやっていれば、「これも食べられる、あれも食べて大丈夫」といったポジティブな思考で食生活を送れるようになるはず。「腎臓病は『食べて治す』」という前向きなマインドセットが大切なのです。ぜひみなさん、その点を心得たうえで、毎日の食事にリラックスした姿勢で臨むようにしてみてください。

ところで、「食べ方を工夫して、必要なポイントだけ守って(少しいい加減に)食事に臨む」といっても、塩分や糖分、たんぱく質を摂る際、具体的にどのようなポイントを守っていけばいいのでしょう。

「少しゆるめ」くらいがちょうどいい

古い常識……腎臓が悪い人は塩分や糖分に神経質なくらい注意するべき

【新常識2】塩分は「みそ汁」、糖分は「甘い飲み物」をやめるだけでもいい!

塩分摂取は1日6gまでにしてください」とか「糖質の摂りすぎも禁物です」といった栄養指導を細かく守ろうとすると、日々の食事がとても「味気ないもの」になってしまいがちです。なかには、そのせいで食欲が落ちたり食事量が減ったりするケースも多く、制限を守ることにあまりに神経質になると、かえって弊害のほうが大きくなる場合もあるのです。

ただ、塩分はみそ汁や漬物をやめるだけでもかなりの量を減らすことができますし、糖分は甘い飲み物を飲む習慣をやめるだけでもびっくりするくらいの量を減らすことができます。そして、それを実行するだけで塩分や糖分の制限基準を軽くクリアできてしまうものなのです。「何かひとつをやめるだけで、あとは普通の人と同じ食事を摂れる」ということになれば、塩分や糖分の制限はグッとラクになることでしょう。

古い常識……腎臓が悪い人はたんぱく質を摂る量を減らさなきゃならない

【新常識3】たんぱく質は「減らす」のではなく「ギリギリまで摂る」が正解!

たんぱく質が代謝されてできる老廃物は腎臓に負担をかけるため、栄養指導ではたんぱく質を減らす指導が行われます。しかし、その一方、減らしすぎてたんぱく質が不足すると筋肉量が落ちてしまうことになります。当然、「じゃ、減らすのか、摂るのか、どうすりゃいいんだ」ということになりますよね。

この場合の正解は「たんぱく質は自分が摂っていい量の上限ギリギリまで摂る」という姿勢です。とくに高齢の方は「たんぱく質を摂って腎臓に負担がかかるリスク」よりも「たんぱく質を減らしすぎて筋肉量を落としてしまうリスク」のほうがずっと大きいと考えてください。

だから、「減らそう」という気持ちは捨てて、「毎食たんぱく質を摂る」というスタンスをとるべき。摂っていい量は慢性腎臓病の進行段階によって変わってきますが、その限界ギリギリのラインまで摂るようにしていくといいでしょう。「ギリギリまでできるだけ摂ろう」という意識でいると、「こんなに摂って構わないんだ」という気持ちになり、プラス思考でたんぱく質食品とつき合っていけるようになるはずです。

塩分、糖分、たんぱく質以外にも、「腎臓リハビリ」では、次のようなポイントを〝新常識〟として食生活を送ることをおすすめしています。

肉は食べない方がいいのか

古い常識……腎臓が悪い人は肉は食べないほうがいい

【新常識4】腎臓が悪くても肉は普通に食べられる!

肉にはたんぱく質が多いため、腎臓病患者向けの栄養指導では「なるべく食べないように」と言われることが少なくありません。

しかし、私は食べ方を工夫すれば、肉をガマンする必要はなくなると考えています。その工夫とは「主食のごはんを低たんぱく食品に替える」という作戦。お米のごはんにはけっこう多くのたんぱく質が含まれているのですが、このたんぱく質含有量をゼロ近くまで減らした「パックごはん」が市販されているのです。つまり、これを利用すればごはんのたんぱく質が浮いた分、肉を普通に食べられるというわけ。肉好きの方には朗報でしょうし、うまく活用すれば食事の幅がグッと広がるはずです。

古い常識……リンって何? 食事で減らすなんて聞いたこともない……

【新常識5】食品添加物をなるべく避けて「リン過剰」を防ぐべき

近年の研究で、普段からリンの多いものを摂っていると腎機能低下が早く進んでしまうことが分かっています。リンと言われてもピンと来ない方も多いかもしれませんが、リンは「スーパーやコンビニに並ぶ食品のほとんどに入っている」と言われるほど、多くの食べ物に含まれています。なかでも気をつけなくてはならないのが加工食品。加工食品の食品添加物に含まれている「無機リン」は体内への吸収率が非常に高く、「とくに警戒するべきリン」とされているのです。

リンが多く使われている加工食品はソーセージ、ハム、ベーコン、練り物、カップ麺、スナック菓子などなど。腎機能のいっそうの低下を防ぐには、こうした加工食品の食品添加物に的を絞って減らしていくのがおすすめなのです。

ここまで腎臓病の食事の「新しい常識」を挙げてきましたが、みなさんどうお感じでしょう。「なんだ、これを守るだけでいいのなら、別に普通と変わらない食事ができるじゃないか」ということに気づかれた方も多いのではないでしょうか。

私は、「腎臓病患者が食生活でつらいガマンや忍耐を強いられる時代はもう終わった」と考えています。常識は時代とともに変わるもの。いまはもう、「腎臓病患者も普通の人と変わらず食事をおいしく楽しめる」というように常識が変わってきているのです。

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上月 正博
東北大学名誉教授、山形県立保健医療大学理事長・学長

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