3月2日放送のOBSラジオ「加藤秀樹が語る 日本の未来構想」では、選挙後の政治のあり方や政府が打ち出した「国民会議」の実態、そして生活に直結する物価高対策について語った。
緊迫するイラン情勢…物価に直結
加藤氏は、「選挙は『始まり』である」と強調する。選挙期間中、政治家や政党は、私たちに耳当たりの良い公約を掲げるが、選挙が終わるとメディアも有権者も安心し、「終わった」という扱いで政治家の行動を注視しなくなる傾向が強い。
加藤氏は「言ったことを本当に実行しているのか、1か月後、あるいは1年後に検証しなければならない。海外では一般の人がよくデモをしているが、それは一つの検証の形。日本ではそれを放置するので、政治家も緩む」と警鐘を鳴らす。今回の選挙における最大の争点は「物価対策」や「暮らし」、それに伴う「消費税減税」であった。
また、緊迫するイラン情勢も物価に直結する。中東の産油国からの石油は必ずホルムズ海峡を通るが、仮にイランがここを封鎖すれば石油価格は必ず高騰する。
我々の生活は依然として石油に大きく依存しており、電力など燃料費に限らず物価全体が跳ね上がる。「そうなると食料の消費税減税程度では対応できない。本気で円安を是正するなどこれまで以上に根本的な物価対策が重要になる」と加藤氏は指摘した。
名ばかりの「国民会議」への危惧
その脈絡で加藤氏は、政府が提唱した「社会保障国民会議(通称:国民会議)」の実態に疑問を呈した。消費税減税を含め、物価対策につながる議論を国民全体で行うという名目だったが、「蓋を開けてみるとおよそ『国民』とは言えない」と語る。
まず、会議の開催場所が首相官邸(総理のお膝元)であること。官邸で開くのは通常首相の諮問会議である審議会などだ。また、全政党が参加するわけでもなく、今のところ野党からは「みらい」だけ。声をかけられていない政党もある。
さらに、親会議の下に政府と与党(自民・維新)による「実務者会議」と、官邸が選んだ専門家らによる「有識者会議」が設置される仕組みとなっており、第1回目の会議はわずか15分で終了した。親会議は形だけの可能性が高い。
通常、政策は政府が原案を作り、国民の代表の議論の場である国会で議論される。しかし今回は、原案も示さずに会議体だけを立ち上げ、実質的に政府主導で進めようとしている。加藤氏は「『国民』という言葉を掲げながら、数を背景に強引に進めようとしていると言われても仕方がない側面がある」と危惧を示した。
「食料品の消費税2年間ゼロ」のコスパの悪さ
与党の公約であった「食料品の消費税を2年間ゼロにする」という政策の物価対策としての効果についても、加藤氏は厳しい見方を示す。
複数のシンクタンクの試算によれば、この政策による負担減は1人あたり年間平均8万〜9万円程度(1日あたり200~250円)に留まる。問題は、この恩恵が高所得者ほど大きくなる点だ。上位20%の所得層は、下位20%の層の約2倍のメリットを享受するというデータもある。
また、国全体で見ると、食料品の消費税撤廃により約5兆円の税収が減る一方で、経済効果は3000億〜5000億円程度と言われる。「5兆円の減収に対して10分の1の経済効果しか生まないわけで、一般企業であれば絶対にやらないコストパフォーマンスの悪さだ」と加藤氏は切り捨てる。
また、外食産業にとっては、提供する食事に消費税はかからなくても、材料費などには税金がかかるため負担が増す。自治体にとっても減税手続きの負担は重く、「2年後にまた元に戻すのか」という実務的な混乱も必至だ。
イラン情勢によってさらなる物価高騰が懸念される今、「求められているのは本質的な所得の再分配など違う次元の対策や、円安を食い止める施策」と加藤氏は主張する。
「絶対得票率27%」という現実を忘れてはならない
加藤氏は、「国民会議」や予算審議時間の大幅短縮など強引な政治手法に関連して、今回の選挙における自民党の「絶対得票率(全有権者のうち、その党に投票した人の割合)」にも触れた。
自民党の絶対得票率は約27%。これは、全465議席のうち120議席あまりにあたる。ところが316議席を獲得している。つまり、獲得議席のうち190人ほどは、有権者の27%の意思には含まれていない計算になる。
これには、小選挙区制の仕組みやSNSを通じた情報拡散などいくつかの要因はあるが、この現実は、国民の1/4程度の投票結果が国会での絶対的優位をもたらす(参議院で否決されてもそれを覆せる)という大きな政治リスクがあることを私たちは認識しないといけない。

構想日本代表・加藤秀樹氏
加藤氏は「圧倒的な議席数を持っているからこそ、より丁寧に議論を進めなければ、野党あるいは与党の中でも不信感が強まり、かえって政治が不安定化する可能性がある」と指摘。有権者に対しても「そういったことも含めて、選挙は『始まり』であり、今後の動向をしっかりと監視し続ける必要がある」と呼びかけた。


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