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「年を取る」こと自体が腎臓を悪くする要因–と言うのは、腎臓リハビリテーションの第一人者である上月正博医師(東北大学名誉教授・山形県立保健医療大学理事長・学長)だ。加齢だけでも誰の腎臓も少しずつ弱っていく。実際、慢性腎臓病は高齢者ほど多く、75歳以上で3人に1人が発症するといわれる。今日からできる腎機能を低下させない方法は?
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「ぜひ今日から始めていただきたいのが、運動です」
上月医師は、こう断言する。「運動は腎臓病にはNG」が長らく常識だった。運動は腎臓に負担をかけ症状を悪化させると考えられており、医師は腎臓病患者に「安静第一」と言うのが常だったのだ。上月医師らは2001年、“腎臓病の常識”を覆す論文を発表した。
「適切な運動が腎臓を守る効果があることを動物実験によって証明したのです。その後、ヒトを対象にした臨床試験でも、適切な運動が腎機能の低下を防ぎ、体力向上や生活の質(QOL)を改善することが明らかになりました」(上月医師=以下同)
運動が腎機能の低下を防ぐ理由として、主に3つのことが挙げられる。
【血流が良くなる】
加齢によって誰もが血流が悪くなる。血管が硬くなり、筋肉が減って血液を心臓へ押し戻す力が弱くなるからだ。腎臓は「体に不要な老廃物や余分な水分を濾過する」という働きをするが、それは、十分な血液量があってこそ十分に行われる。
【フィルター機能が保たれる】
腎臓には毛細血管が糸のように絡み合ったフィルター器官「糸球体」があり、そのキモが「タコ足細胞」だ。毛細血管の表面に張り付く無数の細胞がタコのように“足”を伸ばし、それらが絡み合ってフィルターとなる。
「血液が毛細血管を通る時、フィルターの目より小さい老廃物や水分がふるい落とされ、たんぱく質は血管内にとどまります」
ところが、前項でも触れた通り、加齢で血管が硬くなると、毛細血管に圧がかかり、タコ足細胞が毛細血管から剥がれ落ちやすくなる。するとフィルター機能が低下してしまう。高血圧や糖尿病があるとなおさらだ。
それを食い止めるのが運動で、毛細血管への圧を下げ、タコ足細胞を剥がれにくくすることが明らかになっている。
【血管を守る物質が増す】
運動は、一酸化窒素(NO)や抗酸化酵素(SOD)を増やす。
「運動で血流が増えると、その刺激を受けて血管内皮細胞でNOが盛んに作られます。NOは血管を広げて血圧を下げ、血管を柔らかくしなやかにする働きがあります。さらに運動で分泌が増すSODは、血管を傷つける活性酸素を無毒化する働きがあります。NOやSODによって、腎臓の毛細血管も本来の働きを維持することができるのです」
一般的に腎機能の低下は40~50歳代で顕著になり、60歳代以降に加速化するといわれる。中年以上であれば、今から対策を始めて早すぎることはない。
■慣れない人は歩幅を広げることから
では、どのような運動をすればいいのか? 上月医師らが複数の研究データを分析し、出した目安が「1週間に合計150~180分の中強度ウオーキング」だ。
「合計150~180分をどのように分割するかは自由です。1日1回30分を週5回、あるいは10分を1日3回週5回でもいい。平日は10分くらいしか歩く時間がなければ、週末にまとめて歩くのでも構いません」
習慣がある人なら、出勤の行きと帰りに10分ずつ歩き、不足分を土日で歩くという手もある。ただし、重要なポイントがひとつある。
「中強度、すなわち息切れするかしないか程度の速歩きにしてください。腎機能の低下を防ぐには『だらだら歩き』や『誰かと楽しくおしゃべりしながら歩く』ではほとんど効果がありません。背筋を伸ばし、腕を大きく前後に振り、歩幅を広く、リズミカルに、スピードを上げて歩くこと。スマートウオッチを利用する場合、1分間の心拍数が安静時より20~30回増える強度を目指してください」
運動経験がない人は、初めは「今より歩幅を広めに歩く」ことから始め、徐々にスピードを上げていくといい。
「続けていれば必ず速く歩けるようになり、歩ける時間も長くなります。継続のために、その日の記録を記すことをお勧めします。体力向上が一目瞭然となり、モチベーションアップにつながります」
ウオーキングをまとめた時間で行う場合は、念入りな準備体操も忘れずに。「かかとの上げ下ろし」「両手を大きく回す」「足を片方ずつ前後に振る」などを行うことで、ケガ予防になる。早速、歩幅を広げて歩いてみてはどうだろう。


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