ホテルやおにぎり屋が開業予定の山中氏邸のイメージ(株式会社ラッカン提供)
歴史的な町並みが残る鹿児島県志布志市の志布志麓地区を含む志布志東部地区エリアで、明治時代に建てられた歴史的建造物の「山中氏邸」と「木下氏邸」を生かしたまちづくりが進んでいる。両施設を改修した分散型の“武家屋敷ホテル”や飲食店などが来年5月にオープンする予定。歴史を感じる街に生まれ変わることが期待されている。
東部地区はJR志布志駅から北東に約2キロの志布志麓を中心としたエリア。この地にある山中氏邸は1882(明治15)年頃に建てられた土蔵造りの商家。2階建ての主屋と土蔵、1階建ての土蔵で構成される。木下氏邸は分棟型の二ツ屋形式で、明治期に建造された。
ともに外観を生かして間取りを変えずに改修し、営業する。両施設を所有する市にとって初の試みを支えるのは、民間事業者有志が立ち上げたラッカン・リタ共同事業体だ。公募に手を挙げ、市と今年7月、15年間の賃貸借契約を結んだ。
山中氏邸主屋は商家の建物を生かしたホテルの2客室とおにぎり屋、二つの土蔵はそれぞれベーカリー、美容・着付けサロンとなる。元々しょうゆ、菜種油を扱う豪商の商家だったことから、ラッカンの武元隆代表取締役社長(45)は「建物が歩んできた歴史を踏まえ地域に長く愛される店を作りたい」と意気込む。
ホテルは分散型で、武家屋敷の外観が特徴の木下氏邸は1棟貸し用に整備。武元さんは「ゆっくりした時間を過ごし、伝統文化の大切さや職人の技、歴史の息づかいを再確認できる場所にしたい」と語る。
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志布志麓は日本遺産の一つに認定されている。市は2020年3月に「歴史遺産を活用した魅力ある観光まちづくり計画」を策定。古民家再生を観光まちづくりの先行計画と位置づけ、古民家再生のノウハウがある民間事業者と連携協定を22年に結び、利活用に向けた準備を進めてきた。
山中氏邸と木下氏邸の改修は、国と市による補助事業。補助額は市が企業版ふるさと納税を活用した6600万円、国は約1億2000万円で、総事業費は約2億7000万円の見込み。
志布志は昔から港を中心に栄え、人や金が集まる歴史的遺産の集積地となってきた。東部地区は県内でも文化財指定物件が多いエリアで、国指定2件、国登録2件、県指定12件に上る。
市教育委員会生涯学習課文化財グループの小村美義グループリーダー(57)は「市が管理・利活用する文化財と民間による事業の両輪で志布志東部地区に人の流れを作れる。点が線に、線が面になっていけば」と語る。
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市は志布志麓を中心に、文化財を生かしながら守る取り組みを続けてきた。
国指定名勝「志布志麓庭園」の一つ「福山氏庭園」は文化庁の補助を活用して17年度から保存修理が進み、24年7月に開園。これまでの来園者は延べ約3200人で、うち8割は市外から訪れていた。ただ、一定の集客効果は出ているものの、貸し館利用(1時間400円)は3件にとどまり、PRに課題が残る。
この地の魅力を発信しようと、市観光特産品協会は26年2月15日、「志布志麓マルシェ」を開く予定だ。飲食・雑貨出店や甲冑(かっちゅう)試着体験、観光ガイドによる周辺散策を企画する。今別府健一事務局長(47)は「体験型観光に取り組む中、クルーズ船誘致や富裕層向けメニューを新たに醸成したいと考えていた。市と連携してPRし志布志をよりディープに知ってもらう機会を作っていきたい」。
山中氏邸の近くには商店街があり、周辺では26年開業予定の小児科専門医院、多世代交流施設の建設工事も急ピッチで進む。文化財の価値を生かしつつ、人を呼び込む新たな名所となるために、商店街や周辺施設との連携、歴史と今を結び付けるストーリー作りが鍵になりそうだ。
■ラッカンの武元隆社長 「美容と食を掛け合わせた唯一無二の店を」
武家屋敷ホテルと飲食店を開くため「ラッカン」を立ち上げた武元隆さん(45)=肝付町出身=は鹿屋市で美容室「BASE」を経営する。新たなビジネスに踏み出す経緯と狙い、まちづくりへの思いを聞いた。
-活用のきっかけは。
「鹿屋で美容室を2012年に開き、新型コロナ禍を経て今後を考えていた時に沖縄で飲食業を営む同級生と再会、『美容と食を掛け合わせた唯一無二の店を作ろう』と意気投合した」
「志布志に縁はなかったが、不動産サイトに志布志の武家屋敷が載っていた。その物件は契約されていたが、志布志麓を見学し諦めきれず市に相談すると、志布志東部地区エリアのまちづくりを考える会に誘われたのがきっかけになった」
-山中氏邸の土蔵は美容・着付けサロンとなる。
「コロナ禍や社会環境の変化で、大隅で結婚式を挙げるカップルが減っている。将来的には和装挙式プランを作り、志布志東部地区エリアで前撮りから挙式、宿泊まで提案できれば」
-飲食を加えた理由は。
「立派で入りづらさがある建物を気軽に入れる場に生まれ変わらせようと、沖縄の友人らと美容・飲食・宿泊を柱にした法人を24年に立ち上げた。地元食材を生かしたベーカリー、おにぎり屋、チーズケーキ屋を構え、地域の人が日常的に足を運ぶ店にしたい」
-社名由来と目標は。
「ラッカンは『楽観的に仕事を楽しもう』が由来。地域の人に信頼され愛される施設になるよう、まず無事にオープンさせたい」


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