リンの過剰摂取が気になる方は、なるべく食卓への加工肉の登板回数を減らすほうがいいでしょう(写真:株式会社うめ海鮮@フォト|和食・洋食・フードフォト専門/PIXTA)
昔といまを比べると、腎臓病の常識は大きく変わりました。たとえば、以前は「腎臓が弱い人は運動なんかしないで安静にしているほうがいい」「腎臓病になったら非常に厳しい食事制限に耐えなくてはならない」「腎臓病はいったん悪くしたらよくならない」といったことが当たり前とされていました。
しかし、これらはすべてウソ。いまは腎臓病の人も適度な運動をするほうがいいとされていますし、食事もちょっとした工夫で普通の人と変わらないものが食べられるようになっています。もちろん「腎臓病はよくならない」というのも誤りで、「腎臓リハビリ」というメソッドを実行すれば、着実に進行を抑えたり病状を回復させたりできるようになっているのです。
この「腎臓リハビリ」のメソッドの提唱者として、従来の腎臓治療の“誤った常識”を大きく変えてきたのが上月正博・東北大学名誉教授。上月教授は、新著『腎臓大復活』の中で、腎機能を強化して人生をよみがえらせていくためのノウハウを惜しみなく紹介しています。
以下では、その上月教授が「腎臓寿命を延ばすための食事のひと工夫――リン対策編」について解説します。
リンは単純に「減らせばいい」わけではない
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近年、慢性腎臓病を進行させて腎臓寿命を縮めてしまう原因として注目されているミネラルがあります。
それが「リン」です。たぶん、聞いたことはあっても、何に含まれていてどんな働きをしているのか、皆目見当がつかないという人が多いのではないでしょうか。
しかし、リンは実は「スーパーやコンビニで売られているほとんどの食べ物に入っている」というくらい多くの食品に含まれているのです。無自覚にリンの多い食品を口にしていると、気づかないうちに腎機能が低下してしまうかもしれません。
そのため、「腎臓リハビリ」でも食事療法の柱の1つとしてリンの過剰摂取を防ぐノウハウを指導しています。今回はそのリン対策の工夫を紹介していきましょう。
リンは骨や細胞を維持する役目を果たしていて、人体にとって絶対に欠かせない物質です。しかし、体内で過剰になると細胞毒のように働いて、老化を進ませたり病気を引き起こしたりする原因になります。とくに腎臓への影響は大きく、普段からリンの多いものばかり食べていると、ネフロンがダメージを受けて腎機能低下が進んでしまうことが分かっているのです。
しかも、リンは非常に多くの食品に含まれているうえ、無味無臭のため、知らず知らずのうちにいつの間にか過剰摂取をしてしまっていることが少なくありません。
無機リンの体内への吸収率は90%以上
リンは「有機リン」と「無機リン」とに分かれています。この2つは「有機リン→それほど問題のないリン」「無機リン→大きな問題を引き起こすリン」と考えてもいいでしょう。
有機リンは、肉、魚、乳製品、卵、野菜、穀物などに幅広く含まれているリンで、なかでもたんぱく質系食品の含有量が多めです。もっとも、有機リンの体への吸収率は20~60%とさほど高くはありません。ですから、有機リンに関してはそれほど神経質になる必要はないでしょう。
また、有機リンのなかでも納豆、豆腐、油揚げなどの大豆たんぱく質に含まれているリンは、体内で吸収されることは少なく、大半は便とともに体外に排出されるので、多く摂取しても問題ありません。大豆製品は「食べてもいいリン」と覚えておくといいと思います。
一方、無機リンは、加工食品などの食品添加物中に多く含まれているリンです。この無機リンの体内への吸収率は90%以上。口から入った食品添加物中のリンはすべて吸収されていくと思ったほうがいいでしょう。すなわち、こちらは普段の食生活で「極力減らしておきたいリン」ということになります。
ところが、日本においてはわたしたちが日常的に食べているものの多くに食品添加物が使用されているのです。とくに食品添加物使用量が多いのが加工食品で、たとえば、加工肉、水産加工食品、カップ麺、即席麺、冷凍食品、菓子パン、スナック菓子、おつまみ類、プリンやゼリー、ケーキなどのスイーツ、漬物、調味料、清涼飲料水……。このように、ありとあらゆる加工食品に添加物が使用されているのです。
要するに、わたしたちの体に過剰に入ってくるリンのほとんどは、こうした加工食品の食品添加物によって侵入してくるということ。ですから、腎臓を守るためのリン対策は、食品添加物由来のリンをいかに減らすかの工夫が中心となるのです。
では、食品添加物のリンを減らすための具体的な対策を5つほど紹介しましょう。
〈リン対策の工夫①〉ソーセージ、ハム、ベーコンなどの加工肉を控える
ソーセージ、ハム、ベーコンなどの加工肉には食品添加物が多く使われているものが目立ちます。加工肉は調理が簡単なこともあってつい頼ってしまいがちですが、リンの過剰摂取が気になる方はなるべく食卓への登板回数を減らすほうがいいでしょう。
また、かまぼこ、ちくわ、つみれ、はんぺんなどの水産加工食品にも添加物が使われているものが少なくありません。しかも、加工肉も水産加工食品もたいてい塩分含有量が多め。つまり、これらの食品は「リンも多いし、塩分も多い」という点で、腎機能低下が気になる人にとっては「要警戒マーク」をつけざるをえないところがあるのです。
〈リン対策の工夫②〉「元の素材が分かる食品」を買う
加工食品の多くは、いったんすり潰してから別のかたちに成形されていて、元の素材の「出自」に首をひねるようなものがほとんどです。一方、野菜、きのこ、果物などは「元の素材やかたち」のままの姿で食卓に上るケースが多いですよね。たとえカットしてあっても、もともとの「出自」はだいたい分かります。
ですから、スーパーなどで買い物をする際は、なるべく「元の素材やかたちが分かるもの」を中心に購入して、「分からないもの」は少なめにしてはどうでしょう。それだけでもリンの多い加工食品を減らすのに役立つはずです。
リンを落とすために「ひと手間」をかける
〈リン対策の工夫③〉「下ゆで」や「湯通し」でリンを落とす
食品のリンを落とすために、ぜひ実践してほしいのが「お湯にくぐらせる習慣」です。
たとえば、ソーセージなどの加工肉は、炒める前に熱湯で10秒ほど下ゆでをするだけでだいぶ添加物を落とすことができます。ちくわやつみれなどの水産加工食品も使う前にさっと湯通しするといいでしょう。
また、即席麺の場合は、麺とスープを別々に調理するのがおすすめ。麺を先にゆでて、ゆで上がったら麺をざるに取り、ゆで汁は捨てます。そのうえで、別につくって沸かしておいたスープにゆでた麺を合体させるのです。さらに、カップ麺の場合は、スープの素と麺が別々になっているタイプを選んで、麺にお湯を注いだ後、そのお湯をいったん捨てて、改めてお湯を入れ直す方法をとるといいでしょう。
こうした「ちょっとしたひと手間」をかけるだけで、リンをだいぶ減らせるはずです。

お湯でリンを落とす工夫(イラスト:『腎臓大復活』より)
〈リン対策の工夫④〉「日持ち」「色」「値段」に注意しておく
加工食品には、たまに驚くくらい賞味期限が長いものがあります。ただ、何カ月も何年も日持ちがするということは、それだけ保存料や防腐剤などの添加物が使われているということに他なりません。缶詰の場合は別ですが、とんでもなく日持ちがする加工食品の購入には慎重な姿勢をとるべきでしょう。
また、食品の色もポイントです。およそ食べ物とは思えないようなどぎつい色をしていたり、不自然なほどに鮮やかな色をしていたりする食品は、着色料や発色剤などを使用している可能性大。なるべく買うのを控えておいたほうがいいでしょう。
それと、値段が安すぎるものにも注意を払うべきです。同じ種類の食品なのに値段にかなりの開きがあるものは少なくありません。ただ、値段が安いものはコストを下げようとして安易に添加物に頼ってしまっている傾向が高いようです。逆に、値段が高いものには添加物に頼らずに提供しようと努力しているケースが目立ちます。このあたりは値段に正直に反映されていることが多いので、気をつけて選ぶことをおすすめします。
〈リン対策の工夫⑤〉「○○料」「○○剤」の表記が多いものは買わない
買い物をする際は、手に取った食品をカゴに入れる前に「食品表示ラベル」を見る癖をつけておくようにしてください。ラベル中に「リン酸塩」「リン酸化合物」「メタリン酸」「ポリリン酸」といったように「リン」の表記があったなら、リン添加物が使われているという証拠です。ただ、なかにはリンが使用されているのに「リン」と書かれていない添加物もあります。これには「かんすい」「酸味料」「香料」「乳化剤」「pH調整剤」「強化剤」「加工デンプン」などの添加物が相当します。
たぶん、「こんな添加物の名前なんて、いちいち覚えていられない」という人が多いと思うので、私は「ラベルをパッと見て、『○○料』『○○剤』という表記が多いものはカゴに入れない」というスタイルをとることを推奨しています。これを徹底するだけでも、日々食卓に上るリンを減らすことにつながっていくはずです。
手間を惜しまないことが腎臓の健康につながる
いかがでしょう。とにかく、リンは知らず知らずのうちに口に入ってきてしまうことが多いので、こういった「ちょっとしたひと手間」を習慣づけておくのとおかないのとでは、ゆくゆくリン摂取量に大きな差が生じるはずです。ぜひみなさんは、手間を惜しむことなく、リンの過剰摂取を防いでいくようにしてください。そのうえで腎機能の低下を防ぎ、腎臓寿命を延ばしていくようにしましょう。



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