「腎臓に効果的な歩き方」がちゃんとできている人はそう多くありません(写真:freeangle/PIXTA)
昔といまを比べると、腎臓病の常識は大きく変わりました。たとえば、以前は「腎臓が弱い人は運動なんかしないで安静にしているほうがいい」「腎臓病になったら非常に厳しい食事制限に耐えなくてはならない」「腎臓病はいったん悪くしたらよくならない」といったことが当たり前とされていました。
しかし、これらはすべてウソ。いまは腎臓病の人も適度な運動をするほうがいいとされていますし、食事もちょっとした工夫で普通の人と変わらないものが食べられるようになっています。もちろん「腎臓病はよくならない」というのも誤りで、「腎臓リハビリ」というメソッドを実行すれば、着実に進行を抑えたり病状を回復させたりできるようになっているのです。
この「腎臓リハビリ」のメソッドの提唱者として、従来の腎臓治療の〝誤った常識〟を大きく変えてきたのが上月正博・東北大学名誉教授。上月教授は、新著『腎臓大復活』の中で、腎機能を強化して人生をよみがえらせていくためのノウハウを惜しみなく紹介しています。
以下では、その上月教授が「腎臓の寿命を延ばすための運動のやり方(ウォーキング編②)」について解説します。
多くの人が「もったいない歩き方」をしている
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ウォーキングは腎機能を強化したり長持ちさせたりするための「特効薬」と言って間違いありません。
私がこれまで普及に努めてきた「腎臓リハビリ」メソッドにおいてもウォーキングがいちばんの柱になっていて、実際、「腎活性ウォーキング」を行うことで多くの患者さん方が腎機能の数値を改善したり、腎臓寿命を延ばしたりすることに成功されています。
しかしながら、近所をウォーキングしている方々の様子を見ていると、残念ながら「腎臓に効果的な歩き方」がちゃんとできている人はそう多くありません。つまり、あまり効果的とは言えない「もったいない歩き方」をしている方々が大半を占めているのです。
私がいつも「ああ、もったいないなあ」と思うのは、「だらだら歩き」「とぼとぼ歩き」をしている方々です。
最近はウォーキング人口がだいぶ増えてきて、街中や公園を歩いている中高年をよく目にするようになりました。街中では高齢夫婦が連れ立って歩いているのもよく見かけますし、早朝の公園では、近所の仲良しグループなのか、何人かの仲間と連れ立って楽しくしゃべりながら歩いている方々もよく見かけます。
しかし、そうやって歩いている人のほとんどは早歩きとは程遠いゆったりペースです。背中を丸め気味で、腕もあまり振らず、歩幅も狭く、ひざも伸びていない人が目立ちます。おしゃべりしながらだと自然にこういう歩き方になってしまうのかもしれませんが、大半の方々が「だらだら歩き」「とぼとぼ歩き」と形容したほうが似つかわしい歩き方をしているのです。
こうした歩き方では、せっかくのウォーキングの効果はほとんど得ることができません。もちろん、家でじっとしているよりは「だらだら歩き」であっても歩くほうがずっとマシだとは思います。
でも、腕を振って姿勢よく歩いたり、速いスピードで歩いたりする力があるのにもかかわらず、それをしないのは非常にもったいない。十分な健康効果を得られないままソンをしているようなものであり、そのため私は「残念ウォーキング」と呼ばせていただいています。
腎臓の健康には「息切れするかしないか」
そもそも、ウォーキングの運動効果をもっとも引き出せるのは「息切れするかしないかのレベルの早歩き」です。これは「隣の人とどうにかこうにか話せるくらいの状態」であり、「隣の人とラクにしゃべったり笑い合ったりできるような状態」ではあまりに運動強度が低すぎて、ウォーキングの効果を引き出すという点ではたいへん非効率的なのです。
腎機能を改善させたり腎臓寿命を延ばしたりするには、多くの血液を腎臓に巡らせてたっぷりの酸素や栄養を届けていくことが重要なポイントであり、そのためには、「息切れするかしないかのレベル」の運動強度を保って歩かなくてはなりません。そして、そうした効果をもっとも効率よく引き出せるようにつくられたのが「腎活性ウォーキング」であるわけです。
ですから、みなさんの場合も、もし健康の向上が目的で歩いているのであれば、なるべく早い段階で「残念ウォーキング」を卒業して、「腎活性ウォーキング」を身につけるようにすることをおすすめします。
では、ここで「腎活性ウォーキング」の歩き方をくわしく紹介しておきましょう。まず、大事なのは歩くフォーム。
次の①~⑦のポイントを守ったフォームで早歩きをするのが腎臓を守る効果を最大に引き出す方法と考えてください。
① あごを引き、正面を見て視線はやや遠めに
② 背すじを伸ばして、肩の力を抜く
③ 腕をL字に構えて前後に大きく振る
④ 下腹に力を入れて胸を張る
⑤ 後ろ足のひざをしっかり伸ばしながら歩く
⑥ つま先で蹴り出してかかとから着地する
⑦ 歩幅を広めにとって、リズムよくスピーディに歩く

1日に4113歩以上が腎臓に効きます【腎活性ウォーキング】(図解:『腎臓大復活』より)
ほんの10分程度で全身がポカポカに
いくつか補足しておきましょう。
「腎活性ウォーキング」では、常によい姿勢で歩くことを意識してください。下腹に力を込めて胸を張れば、自然に頭が上がって背すじがピンと伸びるはず。その姿勢をキープしつつ、やや体の後ろ寄りに重心を置いて、腰から前に進んでいくようなつもりで足を出していくといいでしょう。
また、腕はL字に構えて前後に大きく振る。この際、腕を横振りさせないよう気をつけてください。腕を後ろへ振ったときにグッと力を入れてひじを引くと、自然に大きく腕を振れるようになり、推進力がついてスピーディに歩けるようになるはずです。
さらに、足の運びは、つま先で力強く蹴り出して、かかとから着地するのが基本。後ろへ蹴り出す際はひざをまっすぐ伸ばすように意識しましょう。そのうえで、歩幅をなるべく広めにとりながらサッサッとリズミカルに足を出し、息切れしない範囲でできるだけスピードを上げるようにしていくのです。
歩く時間と回数の目安は「1日30~60分のウォーキングを週3~5回」。1週間の目標はトータルで150~180分です。この目標はそんなに高いハードルではありませんが、年齢的・体力的に不安がある方は、短い時間からスタートして、徐々に時間や回数を増やしていくようにしてください。
とにかく、これらのポイントを守って歩くと、ほんの10分程度で全身の血行がよくなって体が内側からポカポカしてくるはず。このように、血流をしっかり促進させるウォーキング習慣が腎機能を守り、腎臓寿命を延ばすことへとつながっていくのです。
もっとも、みなさんの中には、夫婦間の絆を深めたり、近所の仲良しグループのコミュニケーションを深めたりするためにウォーキングをしているんだという方も少なくないでしょう。
単に、みんなとおしゃべりするのが楽しいから歩いているんだという方もいらっしゃるかもしれません。
もちろん、和気あいあいと歩いてコミュニケーションを深めることも大切です。ただ、複数人で一緒に歩くと、人それぞれペースが違うのでどうしても遅い人のペースに合わせることになってしまいますよね。それでは、個々人の運動効果はなかなか上げることができません。きっと、コミュニケーション目的で歩いている人の中にも「せっかく歩いているのに、ちょっともったいないなあ」と感じている人は多いはずです。
そこで提案なのですが、夫婦で歩いたり近所の仲間と歩いたりするのであれば、まず近所の公園などへ一緒に歩いていき、公園の入り口でいったんばらばらに分かれて、公園内ではひとりひとり自分に合ったペースでウォーキングするようにしてはいかがでしょう。そして、あらかじめ終了時間を決めておいて、ウォーキング終了後、再び公園入り口で落ち合って一緒に帰るのです。
このやり方であれば、公園内で「腎活性ウォーキング」を十分行うことができますし、行き帰りの道すがら、おしゃべりでコミュニケーションを深めることもできますよね。つまり、「おしゃべり歩き」+「腎活性ウォーキング」の一挙両得。どうせ時間を割いて歩くのであれば、このように合理的に時間を使ってウォーキングをするようにしてはいかがでしょうか。
ウォーキングが「万能薬」と言える理由
私は、人間の健康にとって、ウォーキングほど高い効果を広範囲にもたらしてくれる運動はないと考えています。
腎臓だけではありません。ウォーキングは体のさまざまな臓器の健康レベルを引き上げてくれますし、糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満などの病気を防ぐのにも大きな効果を発揮してくれるのです。まさに私たちにとって「万能薬」のような運動と言っていいのではないでしょうか。
でも、その人のウォーキングのやり方や取り組み方によって、「万能薬」の効果をどれだけ引き出せるかが大きく変わってくることも事実です。ぜひみなさんは、「腎活性ウォーキング」をはじめとした体によい歩き方を身につけて、「万能薬」の効果を最大限に引き出してください。そして、日々歩くことによって腎臓寿命を引き延ばし、この先の自分の人生を明るく照らしていくようにしましょう。
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上月 正博 東北大学名誉教授、山形県立保健医療大学理事長・学長



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