親が施設に入ったり、相続で実家を引き継いだりして、気づけば「空き家オーナー」になっていた…。そんな40代・50代の相談をよく受けるようになりました。総務省の調査では、1993年から2023年までの30年間で空き家数は約2倍。人口減少や高齢化による空き家の増加は深刻化しています。
治安悪化や地域衰退の原因となるため、管理が行き届いていない空き家は「管理不全空家」として土地の固定資産税の軽減措置が外れ、最大6倍の税負担になるほか、相続登記を怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。実家を空き家にしないために、4つの選択肢で整理します。
気づけば「空き家オーナー」になっていた
「まさか自分が空き家を持つことになるとは思っていなかった」。
そう話すのは、53歳のAさん。昨年、父親が介護施設に入居したことで、地方の実家が突然、誰も住まない家になりました。取り壊すには費用がかかる。売るにも踏ん切りがつかない。かといって管理する時間もない。気づけば、草が伸び放題の「空き家オーナー」になっていたといいます。Aさんのような状況は、今や決して珍しくありません。
総務省の調査によると、全国の空き家数は2023年時点で約900万戸。実に住宅全体の約13.8%が空き家という状況です。団塊世代の高齢化と人口減少が重なり、今後もこの数は増え続けると見込まれています。2043年には日本の空き家率が約25%に達すると予測され、「実家の空き家問題」は他人事ではありません。
2023年12月13日に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」により、「管理不全空家」という新たな区分が創設されました。これまでは、倒壊の危険があるなど深刻な状態になって初めて「特定空家」に指定され、固定資産税の優遇措置が外れる仕組みでした。しかし改正で、「このまま放置すれば特定空家になる恐れがある」段階の空き家も「管理不全空家」として行政が指導・勧告できるようになったのです。そして、勧告を受けると固定資産税の「住宅用地の特例」が解除され、税負担が最大6倍になる可能性があります。
さらに、2024年4月から相続登記が義務化されました。「相続を知った日から3年以内」に手続きを完了しなければ、10万円以下の過料が科される可能性もあります。
なぜ「6倍」になるのか
「6倍」と聞いて驚かれる方も多いと思いますが、これには土地の固定資産税の仕組みが関係しています。
通常、住宅の土地には「住宅用地の特例」が適用され、小規模住宅用地(200㎡以下)であれば固定資産税の課税標準額が1/6に軽減されています。
ところが「特定空家」や「管理不全空家」として勧告を受けると、この軽減措置が外れます。つまり、これまで1/6に抑えられていた課税標準額がそのまま適用されるため、最大で約6倍の税負担になるのです(更地には非住宅用地の評価額の関係で4.2倍程度)。
管理不全空家に認定されるまでには、いきなり税金が跳ね上がるわけではありません。
1.自治体による調査・認定
2.所有者への助言・指導
3.勧告(←ここで土地の固定資産税6倍が確定)
4.命令
5.行政代執行
つまり、勧告を受ける前に対処すれば、増税は防げます。
遠方に住んでいて頻繁に様子を見に行けないという方こそ、状態を今一度しっかり確認することが必要です。
空き家の対処法「4つの選択肢」
空き家の対処法は、大きく4つに分かれます。自分の状況に合わせて、早めに検討を始めることが肝心です。
①売却する
最も根本的な解決策が売却です。所有権を手放すことで、固定資産税・火災保険・維持管理費といった毎年かかるコストをゼロにでき、まとまった現金を得ることができます。
空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)が使えることがあります。相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋またはその敷地を売却した場合、一定の要件をクリアする必要はあるものの、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができます。
さらに、買主が取り壊しや耐震改修を行うケースでも特別控除が適用できるようになりました。これにより、売主が解体費用を負担せずとも売却しやすくなっています。
②賃貸に出す
「思い出のある実家をすぐには手放せない」という方に検討してほしいのが賃貸活用です。入居者が家を管理・使用してくれるため、管理不全空家の認定リスクを大きく下げることができます。さらに家賃収入が得られれば、固定資産税や修繕費の一部を賄うことも可能です。
ただし、賃貸化にはリフォーム費用や管理の手間、借り手がつくかが大きなネックになります。需要があれば収益資産に、なければ売却、もしくは後述するバンク活用への判断材料にもなります。
③空き家管理サービスを利用する
「当面は売らない。でも管理できない」という場合に有効なのが、専門業者への管理委託です。不動産会社や警備会社、NPOなどが提供する空き家管理サービスを活用すれば、遠方に住んでいても定期的な管理が可能です。
サービス費用の相場は月額3,000円〜1万5千円程度です。毎月空き家の外観だけを確認するプランもあれば、家屋の中に入り、換気や通水、庭の草木の手入れをしてくれるプランもあります。
注意点として、管理サービスはあくまで「現状維持」のための費用です。空き家を維持するためには、固定資産税・保険料・修繕費なども加わることを念頭に置いておきましょう。長期的に活用予定がないなら、売却・バンク活用を早めに検討する方が経済的に合理的です。
④空き家バンクに登録する
売却や賃貸の「通常市場」では買い手・借り手が見つかりにくい地方の物件に有効なのが、自治体が運営する空き家バンクの活用です。
空き家バンクとは、空き家の所有者と移住希望者・利活用希望者をつなぐ、自治体が運営するマッチングプラットフォームです。国土交通省でも各自治体の情報を横断検索できるポータルサイトを整備しています。
通常の不動産市場では価値がつきにくい古い物件でも、移住者や地域活性化を目指す人々に届く可能性があります。また、自治体によっては登録された空き家の改修費用に補助金が出るケースもあります。
ただ、空き家バンクへの登録=すぐに売れる・貸せるわけではありません。マッチングには時間がかかる場合があるため、登録しながら管理サービスも並行して活用する、という組み合わせが現実的です。
動き出すなら「親が元気なうち」
空き家問題の根本的な難しさは、「いざとなってから動こうとすると、選択肢が狭まっている」 ことです。親が施設に入居してから慌てて売却しようとしても、名義の問題や相続の手続きが絡んでくることがあります。親が元気なうちに、家をどうするかを一緒に話し合っておくことが、何より大切な「先手」になります。
「実家どうする?」という話題は切り出しにくいかもしれません。でも、帰省の折に「もし将来住む人がいなくなったら…」と柔らかく話してみることが、家族全員の安心につながります。
税金の問題だけでなく、実家の将来を早めに家族で共有しておくこと。それが40代50代が取れる最も大切な「空き家対策」かもしれません。


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