もし日本企業が「中国から完全撤退」したら何が起きる? 日本経済への意外な影響 | きばいやんせ!鹿児島

もし日本企業が「中国から完全撤退」したら何が起きる? 日本経済への意外な影響

チャイナリスクの高まりや米中対立の激化に伴い「日本企業は一刻も早く中国から完全撤退すべきだ」という議論を目にすることがある。

中国経済の減速や米中対立、経済安全保障をめぐる規制の強化など、進出企業を取り巻く環境が以前より厳しさを増しているのは確かだ。

実際、日本企業の間でも中国への依存度を下げ、生産や調達先をASEAN(東南アジア諸国連合)やインドなどへ分散させる動きが進んでいる。

しかし仮に脱中国を一気に進め、現在中国で事業を展開する日本企業が「明日すべての事業を引き払った」としたら、日本経済と私たちの生活には何が起きるのだろうか。

中国は日本にとって巨大な市場であると同時に、製品や部品、原材料を供給する重要な生産・調達拠点でもある。

今回はあえて「日本企業が中国から一斉に撤退する」という極端なケースを想定し、その影響を見ていこう。

日用品や家電にも影響? 中国から一斉撤退した場合

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画像:上海港・洋山深水港のコンテナターミナル Bruno Corpet CC BY-SA 3.0

最初に大きな影響が予想されるのが、日本企業のサプライチェーンである。

現在、日本は衣類や日用品、家電製品、電子機器をはじめ、さまざまな部品・原材料を中国から輸入している。

もちろん中国から輸入されている製品のすべてを、日本企業の現地法人が生産しているわけではない。
そのため日本企業が中国から撤退したからといって、中国からの輸入品が一斉に店頭から消えるわけではない。

それでも中国国内に構築されてきた日本企業の工場や取引網、部品調達網を短期間で切り離せば、影響は小さくないだろう。

生産拠点を日本国内や東南アジアなどへ移すには、新たな工場や設備だけでなく、現地の取引先や物流網、人材、品質管理体制なども整えなければならない。
製品によっては代替調達先をすぐに確保できない可能性もある。

そのため、仮に多数の企業が同時に撤退すれば、一部の製品や部品で供給不足や調達コストの上昇が発生し、その影響が製造業や小売業へ広がる可能性がある。

つまり「中国から撤退すれば、それで中国リスクがなくなる」というほど単純ではなく、撤退や生産移転そのものにも、相応の時間とコストがかかるのである。

失うのは工場だけではない「巨大な中国市場」

画像:中国で販売されているトヨタ・マークX Dinkun Chen CC BY-SA 4.0

第二の影響は、中国を製造拠点としてだけでなく、巨大な消費市場としても失うことだ。

これまで自動車メーカーをはじめ、多くの日本企業が中国を重要な市場として事業を展開してきた。

中国経済は不動産不況や消費の低迷など構造的な問題を抱えており、かつてのような高成長を期待しにくくなっている。
それでも世界有数の経済規模と人口を持つ巨大市場であることに変わりはない。

仮に日本企業が一斉に撤退すれば、現地で得ていた売上や利益だけでなく、長年かけて築いてきた中国での事業基盤も失うことになる。

もちろん影響の大きさは企業によって異なるが、中国事業への依存度が高い企業ほど打撃は大きく、その影響が日本国内の事業や雇用にまで及ぶ可能性もある。

つまり中国からの「完全撤退」は、単に海外の工場を閉めるということではなく、企業によっては世界有数の巨大市場そのものを手放すことになるのである。

「完全撤退」ではなく、いま進んでいるデリスキング

画像:経済産業省総合庁舎本館 文部乱 CC BY-SA 4.0

では、日本企業は中国との関係を今後も変えずに維持すべきなのだろうか。

実際に進んでいるのは「中国に依存し続ける」か「完全撤退する」かという二者択一ではない。
中国との取引を続けながら、依存度を下げていく「デリスキング(リスク低減)」である。

日本企業の海外展開を見ると、中国への投資がなくなったわけではない一方、タイやインドなどへの投資も拡大し、生産拠点の分散化が徐々に進んできた。

「令和7年版 通商白書」でも、日本は米国ほど中国との貿易を圧縮しておらず、デリスキングが日本の貿易全体に与えている影響は、現時点では限定的だと分析されている。

2025年度のJETRO調査でも、在中国日系企業の64.3%が今後の事業を「現状維持」と回答しており、「縮小・第三国への移転・撤退」は14.4%にとどまっている。

つまり中国市場を手放すのではなく、一つの国で問題が起きても事業全体が止まらないよう、生産や調達先を分散させていくのである。
いわゆる「チャイナ・プラス・ワン」も、こうした取り組みの一つだ。

チャイナリスクを無視することはできないが、長年築いてきた中国との事業基盤を短期間ですべて切り離せば、それ自体が新たな経済リスクとなる。

米中対立が長期化する中、日本企業に求められているのは「完全撤退」ではなく、中国との関係を維持しながら、どこまで依存度を下げられるかという難しい舵取りなのである。

参考:
経済産業省「令和7年版 通商白書」2025年
経済産業省「令和6年版 通商白書」2024年
日本貿易振興機構(JETRO)「海外進出日系企業実態調査」ほか
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部

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