毎年11月14日は「世界糖尿病デー」です。この日は世界中で有名な建物がブルーにライトアップされ、糖尿病という疾患を啓発するのが目的です。糖尿病を知ることで皆さんの健康を見直す機会となる各種イベントが行われます。
調べてみると、「世界肝炎デー」は7月28日ですし、「世界エイズデー」は12月1日です。これらの日に合わせ、日本でも啓発活動やチャリティーイベントが行われているので、知っている方も多いかもしれません。
「慈恵WKD2022」の集合写真。そらまめ君人形に向かって右が筆者。多くのボランティアが集まってくれました
◇臓器の名前でアピール
それでは腎臓にまつわる日はないのでしょうか? 実はあるのです。それも糖尿病や肝炎やエイズのように「病気の名前」ではなく、「臓器の名前」そのままで「World Kidney Day:WKD(世界腎臓デー)」と言います。Kidney(キドニー)は腎臓のこと。ボクシングなどの格闘技では腎臓のある位置を打ち、ダメージを与えるのをキドニーブローと称します(反則です)。腎臓の病気の名前で言えば例えば「世界腎炎デー」とか「世界腎不全デー」とかにしても良かったのでしょうが、そこは「よく分からない臓器」ですので、臓器の名前の方がより良いと思います。私としてはいろいろな病気を引っくるめてさまざまな啓発活動もできるのでとてもありがたい限りです。
◇世界統一のライトアップを
ちなみに、WKDの日のライトアップは国際腎臓学会の記載を調べる限り、「オレンジ」または「赤と青」を用いるということになっているようです。ただ、現時点では、世界中で統一されてライトアップされるようなムーブメントはまだ行われていない印象があります。
国内では九州地方の幾つかの病院では緑色のライトアップが行われるようです。いつの日か、世界中で腎臓のためにライトアップされている建築物を見てみたいものです。
◇初めての慈恵WKD
毎年、3月第2木曜日がWKDに当たるのですが、2026年は3月12日の木曜日がWKDです。
WKDには腎臓というよく分からない臓器を知ってもらおうと、大学病院や基幹病院ごとに工夫を凝らして、講演会やさまざまなイベントを開催するところが増えてきました。
私が所属する慈恵医大腎臓・高血圧内科では、22年3月に初めてWKDの啓発イベントを行いました。その頃、新型コロナウイルスのオミクロン株流行が始まった時期だったのですが、あまりどこの施設もやっていない時期であるからこそ、挑戦する意義も大きかったと思います。
◇多くの支援でイベント成功
慈恵医大がある東京都港区の保健所の担当の方がバックアップしてくださり、同区の施設や講堂を使用できるように用意してくださったので、スムーズに話が進み開催することができました。半年くらいかけて準備したでしょうか。当時のレジデント勉強会の有志(医師5年目)数人と共に、準備にかなりの時間を費やしてイベントを成功させたのを覚えています。どんなイベントを行うか、講演会の内容はどうするか、実際に尿検査をやるにはどうすれば良いか、そういったことを毎日のように議論し、路上でビラを配るために警察署に届け出したり、関連グッズや専用ホームページを作成したり、何度も会場の下見に行ったり、まるで高校生の時の文化祭のような気分を久しぶりに味わえました。何よりも、多くの区民の方や患者さん、通りがかりの方などが興味を持ってくださり、イベントは大成功に終わりました。
◇成人「8人に1人」が「5人に1人」に
22年のWKDの時には日本国内で成人の「8人に1人」が慢性腎臓病と言われていましたが、25年になると「5人に1人」になりました。わずか3年程度で1200万人が2000万人になっているわけです。
日本特有の長寿高齢化の影響があるかもしれませんが、今後も生活習慣病の患者数増加に伴い、慢性腎臓病の方は増えていくと考えられています。皆さんにもぜひ尿検査やGFR(糸球体ろ過率)のチェックをしていただき、少しでも気になることがあれば早めにお近くの腎臓内科医を受診するようにお願いいたします。
◇人をケアし、地球を守る
26年のWKDは「皆の腎臓の健康:人をケアし、地球を守る」というテーマで行われ、腎臓病予防が環境保護にもつながる、というメッセージを発信します。私たちも「慈恵WKD2026」を3月12日(木)〜14日(土)に設定し、区民や患者さんに向けて活動を行う予定です。お近くの方はぜひ、お越しいただければ幸いです。
◇36年ぶり、日本で大イベント開催
26年3月にはもう一つ、腎臓で大きなイベントがあります。国際腎臓学会のWORLD CONGRESS OF NEPHROLOGY(WCN)という年次学会が実に36年ぶりに横浜で開催されます。世界中から腎臓に関係する医師や研究者などが数多く集まる学会です。久しぶりの日本開催とあって、日本腎臓学会を中心に鋭意準備中であり、腎臓内科医の中では大きな盛り上がりを見せています。こちらの学会に関しても、また機会があればお話ししたいと思います。(了)

松本 啓(まつもと・けい)
東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科医師。2002年、同大学卒業。大学院時代から横尾隆教授に師事し、腎臓再生医療の研究に没頭。現在は腎炎、生活習慣病(特に糖尿病、肥満症、高血圧症)、透析医療、腎移植などを中心に臨床と研究を行う。医学生や大学院生の教育にも力を入れる。主な資格は腎臓専門医、透析専門医、再生医療認定医など。


コメント