2024年に端を発した「令和の米騒動」。2025年までのわずか1年でコメの価格は6割以上暴騰した。政策対応は刻々と打ち出されているものの、先行きはなお不透明――日本人の主食であるコメを「買えるかどうか」を気にしながら節約を強いられる日々が続いている。
農業は国防そのものだ。世界の供給網が揺らげば、四方を海に囲まれた島国・日本は一気に脆弱になる。国難を乗り切るためにもっとも大切なのが「食料安全保障」なのだ!
コメが買えない、高い、この異常事態をどう乗り切るのか?そして、この未曾有の危機の裏側には何があるのか…。この国の食料問題の「暗部」と闘い続ける東大教授・鈴木宣弘の告発と提言の書『もうコメは食えなくなるのか』より一部抜粋・再編集してお届けする。
『もうコメは食えなくなるのか』連載第19回
『総理就任でコメ政策の「石破茂ビジョン」は封印!?…動かぬ農政・消え行く田園に対し、2030年までの5年で必要な“転換の決断”』より続く。
日本人の一部はすでに飢餓状態
FAO(国連食糧農業機関)が作成している「HUNGER MAP」(飢餓地図)をご存じだろうか。国連機関の一つであるFAOが、国別に総人口に対する栄養不足の人の割合を調査し、色づけした世界地図を毎年発表している。
『もうコメは食えなくなるのか』より
▼白 0~2.5パーセント未満
▼ピンク 2.5~4.9パーセント
▼濃いピンク 5~9.9パーセント
▼橙色 10~24.9パーセント
▼薄い茶色 25~39.9パーセント
▼茶色 40~60パーセント
▼灰色 データなし
地図を見ると、アフリカ諸国は特に深刻であり、飢餓状態に陥っている人口比が濃いピンク、橙色、薄い茶色、茶色である国が多い。
驚くべきことに、2019~2021年版の「HUNGER MAP」で日本列島にピンク色(人口比で2.5~4.9パーセントが飢餓状態)がつけられた。北米やヨーロッパ、ロシア、中国などと違い、日本は世界で栄養不足人口が多い国の仲間入りを果たしてしまったのだ。
「日本は世界に冠たる先進国だ」と威張っているのは、もはや日本人ぐらいなのかもしれない。「日本はこれから食料危機に見舞われて飢餓に陥る」のではなく、日本人の一部はすでに飢餓状態に陥っている。それくらいの危機感をもって、現況に目を向けなければならない。
アメリカ型の格差と貧困がなだれこんできた
日本が飢餓国の仲間入りを果たした理由は、国民の所得が大きく低下したせいだ。所得を大きく伸ばす富裕層が増えると同時に、最低限の人間的な生活を営めない貧困層が増大している。いったん「一億総中流」を実現したはずの日本に、アメリカ型の格差と貧困がなだれこんできたのだ。
厚生労働省は毎年「国民生活基礎調査」を実施している。この統計のうち、世帯別所得の中央値(データを数字が小さい順に並べたときに、ちょうど真ん中の値)を年次別に見てみよう。
▼1985年 418万円 ▼1986年 430万円
▼1987年 435万円 ▼1988年 453万円
▼1989年 471万円 ▼1990年 500万円
▼1991年 521万円 ▼1992年 549万円
▼1993年 550万円 ▼1994年 545万円
▼1995年 550万円 ▼1996年 540万円
▼1997年 536万円 ▼1998年 544万円
▼1999年 506万円 ▼2000年 500万円
▼2001年 485万円 ▼2002年 476万円
▼2003年 476万円
▼2004年 462万円
▼2005年 458万円
▼2006年 451万円
▼2007年 448万円
▼2008年 427万円
▼2009年 438万円
▼2010年 427万円
▼2011年 432万円
▼2012年 432万円
▼2013年 415万円
▼2014年 427万円
▼2015年 427万円
▼2016年 442万円
▼2017年 423万円
▼2018年 437万円
▼2019年 調査なし。
▼2020年 440万円
▼2021年 423万円
▼2022年 405万円
▼2023年 410万円
※パンデミックの影響により、2020年実施予定の調査は中止された
バブル期の1980年代後半から世帯所得は確実に上がり続け、バブル崩壊直後の1993年と1995年には、統計史上最高の550万円の中央値を記録している。ところが見てのとおり、それから30年かけて世帯所得の中央値は140万円も下がっているのだ。
『「備蓄米」を求め、スーパーの行列に徹夜で並ぶ…30年間世帯所得が下がり続けてきた日本の、痛切な“困窮の実態”』へ続く。
コメが買えない、高い、この異常事態をどう乗り切るのか?
この国の食糧問題の「暗部」と闘い続ける東大教授の告発と提言!
アメリカの陰謀「胃袋からの属国化」――地域産業、地域農業を潰し、日米のお友達企業の利益ばかりを追求する「悪魔の農政改革」の深層!
「『日本人がコメが食えない時代が訪れる』と悲観ばかりしていられない。自分が今いる場所で、できることをすぐに始める。そこから『食』の未来への希望がきっと見出せるはずだ」
(本文より)
農業こそは国防。「食料は国防だ」と言うと、「戦争に備えてロジスティックス(兵站)を確保しなければならない」という勇ましい議論だと勘違いされがちだが、そうではない。世界各国が食料危機に陥れば、日本人が食べる食べ物が足りなくなったときに融通してもらえなくなる。そうなれば、四囲を海に包囲された島国・日本はおしまいとなる。
国難を乗り切るためにもっとも大切なのが「食料安全保障」なのだ!
(目次)
はじめに 日本を襲った四つの衝撃
序 章 「令和のコメ騒動」序曲
第一章 減反政策という桎梏
第二章 ミニマム・アクセス米とトランプ大統領
第三章 政治家が示すべき稲作ビジョン
第四章 農業は国防
第五章 日本農業 希望の灯
おわりに


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