ガラス工芸作家 谷口栄さん(55)
和と洋の融合などが特徴の「綾ガラス」を作り出した黒木国昭さん(81)に30年以上師事し、4月に2代目「黒木国昭」を襲名した。「綾ガラスの魅力を引き継ぎ、次世代につないでいきたい」と日々、宮崎県綾町の工房で汗を流している。
綾ガラスへの思いを語る谷口さん
同県小林市須木出身で、高校卒業後に就職のため上京し、家族の看護のため帰郷。アルバイトをして暮らしていた24歳の頃、知人を介して先代の工房を紹介された。
先代は日本の文化や伝統、自然などの美しさを、西洋のガラスを通して表現。花器や食器、インテリア用品などの作品を制作した。
もの作りができる職人にあこがれていたことと、同じ須木出身だった縁もあり、1994年に入門。ガラス工芸は未経験だったが、指導を受けながら技術の習得に励んだ。
ガラスの造形は、一度工程が始まったら後戻りができない世界。「一つ一つの工程をタイミング良くこなすことが大事。ガラスをコントロールするというより、ガラスの行きたい方向に寄り添う感覚」という。
先代は91年、卓越した技能者を厚生労働省が表彰する「現代の名工」に、ガラス工芸作家として初めて選ばれるなど偉大な存在だった。弟子に対しては「目で見て覚えろ」というタイプ。日本の風土がはぐくんだ美意識を、ガラスという西洋の素材を通じて伝えようとする先代の姿勢から学び、頭角を現していった。
先代から2代目襲名の打診を受けたのは、去年のことだ。重圧を感じて迷ったが、「評価はまわりがすること。今まで通り、自分の目の前のことを着実にやっていけばいい」と引き受けた。今年2月には、県の伝統工芸士に認定された。
感性や技術を受け継いでも、作品には作家が生きた環境が表れるというのが持論だ。自身が得意なのは動物や花、神獣などの造形や、ガラスの内側に模様を入れる技術だと自負があり、「(先代との)表現の違いを見せていかないと、作品を買ってくれるお客さんもつまらないんじゃないか」と思っている。
それでも、師匠である先代への尊敬の念は変わらない。「『自分とガラスがなじめば、いい仕事ができる』と言われてきた。今、その入り口に立ったくらいの感覚」。自身の作品づくりに取り組みながら、後継者を育てたいとも考えている。「先代の感性や技術を、次世代につなげたい。それができる3代目を見つけたい」と力を込める。(小園雅寛)
伝統工芸の要としての役割期待
県によるとこれまで県内で認定された「現代の名工」は28人。県の伝統工芸士には169人が選ばれている。
現代の名工は職人の地位向上や技能伝承を目的に創設された国の表彰制度で、大工や機械工、美容など幅広い分野で卓越した技能を持つ人が対象。県の伝統工芸士は伝統的工芸品の製造に15年以上従事し、高い伝統的技術や技法を有するとともに、その維持、発展に努めている人が認められる。
県国際・経済交流課によると、県の伝統工芸士は綾ガラスのほか木工や竹工芸、漆器、囲碁用品、剣道具の制作などを手がける人たち。県内伝統工芸の要としての役割が期待されている。


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