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腎臓は、血液を濾過(ろか)し、体内で生じた老廃物を尿として排泄(はいせつ)する役割を担っている。また、体内の水分量などを調節したり、ホルモンを分泌したりする働きもあり、生命の維持に欠かせない臓器だ。
こうした腎臓の機能が低下し、末期腎不全の状態になると、腎代替療法を受けることになる。腎代替療法には、血液をいったん体外に取り出して透析機器を通じて濾過する血液透析、自分の腹膜を使った腹膜透析、腎臓移植がある。
日本では、現状、ほとんどの患者が血液透析を選んでいる。基本的には週3回、通院し、毎回4時間の透析を受ける。それによって、たくさんの患者が命をつなぎ、社会復帰をかなえてきた。
しかし、腎不全の患者の高齢化が進み、透析を始める平均年齢は71.7歳と上がっている。透析を始める人が年間3万6千人いる一方で、亡くなる透析患者は3万8千人いる。東邦大医療センター大森病院の酒井謙・病院長(腎臓内科学)は「透析を必要とする患者さんの主体は高齢者になり、残された時間を透析で生きていくのか、あるいはしないのかを選択したり、透析をしてみたものの体の状態によって続けられなかったりする人が増えてきた」と話す。そうした人たちにどんな医療を提供するのか、議論が進められてきた。
透析の開始や見合わせの手順、学会が提言
日本透析医学会は、2014年と20年に公表した提言の中で、シェアード・ディシジョン・メイキング(共同意思決定)をベースにした、透析の開始や見合わせの手順を示した。透析をしない場合や中止した場合には、腎不全の症状への対症療法や緩和ケアが主体となる。
酒井さんによると、腎不全の患者に対する緩和ケアは、だるさや足のむずむず感など、腎機能低下によって生じる症状に早期から対処することが重要だという。さらに、スピリチュアルなケアも大切だ。患者の価値観や人生観を聞き取りながら、なぜ透析をしないのか理由を明らかにすること、症状の進展によって気持ちが揺らぐことも許容することが大切だという。そして、最終的に、透析をせずに尿毒症の症状が強くなったとき、最大限の症状緩和を試みる。症状緩和のために透析を行うこともある。
これまで、腎不全の患者に対する緩和ケアの体制は整っていなかった。診療報酬の取り扱い上、専門的な緩和ケアや緩和ケア病棟の対象に腎不全は含まれないなど、制度的な壁があった。今年6月の診療報酬改定では、末期腎不全の患者も緩和ケアを受けやすくなるよう、算定の対象が見直される。
酒井さんは「実際に患者さんがいいケアを受けられるようにするには、医療従事者の教育も必要になる。自己決定を支えられるような医療提供体制を地域から作っていくことが重要だ」と話す。日本透析医学会は、緩和ケアの包括的な手順について、今後、公表予定の新たな提言にまとめる。
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