血圧の薬の種類別の副作用はどのようなものがあるでしょうか。メディカルドック監修医が降圧薬の種類別の副作用について解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
※この記事はメディカルドックにて『「血圧の薬で起こる副作用」はご存知ですか?種類別の症状や対処法を医師が解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
血圧を下げる高血圧の薬(降圧薬)とは
高血圧(降圧薬)の薬は、高血圧によって将来起こるリスクを減らすために処方されます。まずは薬について、基本的なことを押さえておきましょう。
血圧が高いと起こる健康リスクとは
血圧が高いと、血管の壁に常に強い圧力がかかり続けます。そのため、血管は厚く硬くなって動脈硬化が起こり、結果的に下のような重い病気になるリスクが高まります。
部位
おもな病名
脳
脳出血、脳梗塞、くも膜下出血
心臓
心筋梗塞、狭心症
腎臓
腎硬化症、慢性腎不全
高血圧はこれらの重い病気に対して、発症の直接的な原因にも、血管をボロボロにすることで間接的な原因にもなります。
ただし、血圧が高いだけでは、何の不調もあらわれない方は少なくありません。そのため、高血圧は「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」とも呼ばれています。
そのため、正しく血圧の薬を服用し、現在・将来両方の健康リスクを下げることが非常に大切です。
血圧を下げる降圧薬の主な種類
降圧薬にはいくつかの種類があり、患者さんの体質や合併症、血圧の状態に合わせて使い分けられます。日本でよく使われる薬は以下の通りです。
薬の種類
おもなメカニズムや特徴
カルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)
・血管を広げて血圧を下げる
・心臓を守る効果もある
ACE阻害薬/ARB
・血圧を上げるホルモンのはたらきを抑えて血圧を下げる
利尿薬
・体内の余分な水分・塩分を尿として排出し、血液量を減らして血圧を下げる
β(ベータ)遮断薬
・心臓の過剰なはたらきを抑え、脈をゆっくりにして血圧を下げる
これらの薬は単独で使われることもあれば、複数を組み合わせて使われることもあります。
血圧の薬の種類別の副作用
ここでは、代表的な4つの種類の降圧薬について、それぞれ特徴的な副作用を解説します。副作用は全員の方にあらわれるものではありませんが、気になる症状が出ている場合は主治医へ相談してみてください。
利尿薬:脱水・頻尿・低カリウム血症
利尿薬は、腎臓に作用してナトリウム(塩分)と水分を尿として排出させる薬です。
「尿を出す」というメカニズム上、トイレの回数が増えたり(頻尿)、水分が不足して脱水気味になったりすることがあります。また、尿といっしょに体内のカリウムやナトリウムが排泄されることで起こるミネラルバランスの崩れ(電解質異常)も見逃せない副作用です。尿といっしょにカリウムも排出するタイプは「低カリウム血症」、カリウムを排出しないタイプは「高カリウム血症」に注意が必要です。
低カリウム血症や高カリウム血症になると、手足のしびれや力が抜ける感じ、脈の乱れなどがあらわれることがあります。血液検査で分かることもありますが、気になる症状があらわれたら主治医へ早めに伝えましょう。
また、特に夏場や運動後など、汗をかいたときは脱水のリスクが高まります。水分制限がなければ、こまめに少量ずつの水分を摂ることを心がけましょう。外出時はトイレの場所を早めに確認しておくと安心です。
Ca拮抗薬:顔のほてり・むくみ・動悸
カルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)は、血管の筋肉を広げて血圧を下げる薬です。全身の血管が広がるため、血流が良くなって顔が赤くなったり(ほてり)、頭痛が起きたりすることがあります。また、急に血圧が下がると、体は反射的に心拍数を上げて血圧を戻そうとして動悸を感じることもあります。
また、カルシウム拮抗薬に特有の副作用として挙げられるのが、歯茎が腫れて盛り上がる歯肉肥厚(しにくひこう)です。先ほど解説したむくみは、心臓や腎臓が悪くなったわけではなく、薬によって血管が広がったことが原因です。
ACE阻害薬/ARB:咳・かゆみ・腎機能への影響
ACE阻害薬やARBは、血圧を上げるホルモン(アンジオテンシンⅡ)のはたらきを抑えて血圧を下げる薬です。心臓や腎臓を保護する作用もありよく使われる薬ですが、咳や血管浮腫によるかゆみに注意が必要です。
空咳やかゆみは、ACE阻害薬が効果を発揮する際に、乾いた咳や顔や舌の腫れ(血管浮腫)を起こす「ブラジキニン」という物質が体内で増えるために起こります。空咳は基本的にACE阻害薬でのみ起こる副作用ですが、血管浮腫はARBでも注意が必要です。
また、とくに腎機能が落ちている方や年配の方は、体内のミネラルバランスが崩れてカリウムが増えすぎることがあります。カリウム値は定期的な血液検査で確認しますが、力の入らない感じやしびれが続く場合は主治医へ伝えてください。
β遮断薬:だるさ・太る・抑うつ感
β(ベータ)遮断薬は、交感神経の働きを抑えて心臓を休ませる薬です。不整脈や心不全の方によく使われる薬ですが、だるさをはじめとする副作用が出ることもあります。
たとえば、体の代謝に影響を与えるため、体重が増え、太りやすくなることがあります。これは糖や脂質の代謝が変化するためで、とくに長期間使用する場合は体重管理が重要です。
また、気分が沈む、眠れない、悪夢を見る、だるいといった報告もあります。なお、気管支喘息の既往がある方が服用すると、息苦しさが悪化する可能性のあるものもあるため、呼吸器系の持病がある方は呼吸器系への影響が少ないβ遮断薬が処方されます。
β遮断薬は種類が多く、高血圧以外の持病や脈の状態なども見て、主治医は処方薬を決定しています。持病がある方は必ず伝えましょう。どの副作用も、気になる症状が出た場合は主治医へ相談してください。
「血圧の薬における副作用」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「血圧の薬における副作用」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
血圧の薬を飲んで副作用が起きることはありますか
伊藤 陽子(医師)
すべての薬には副作用の可能性があるため、血圧の薬で副作用が起こることはあります。
たとえば、薬が効きすぎて血圧が下がりすぎてふらついたり、薬の作用メカニズムによって咳やむくみが出たりすることが考えられます。しかし、副作用はすべての患者さんに起こるわけではありません。
副作用のリスクよりも、高血圧を放置して脳卒中や心筋梗塞になるリスクの方が高いため、処方された薬は基本的にしっかりと服用しましょう。ただし、気になる症状があらわれたら、主治医へご相談ください。
主な血圧の薬の副作用の症状は何でしょうか
伊藤 陽子(医師)
主な血圧の薬には、以下のような副作用があります。
・Ca拮抗薬:足のむくみ・ほてり・動悸・歯肉肥厚
・ACE阻害薬:空咳
・利尿薬:脱水・頻尿・ミネラルバランスの崩れ
・β遮断薬:徐脈・だるさ・気管支喘息の悪化
・すべての血圧の薬:血圧低下によるめまいやふらつき。
また、薬がからだに合わないとアレルギー反応が出て、かゆみや発疹が出る可能性もゼロではありません。薬の服用後に気になる症状があれば、主治医へご相談ください。
高血圧の薬は副作用で認知症リスクが高まる恐れがあるのでしょうか?
伊藤 陽子(医師)
「血圧の薬で認知症リスクが高まる」は、基本的には誤解です。
むしろ、高血圧そのものが認知症の大きなリスク因子です。高血圧を放置すると、アルツハイマー型認知症や血管性認知症のリスクが高まることが分かっています。
ただし、薬が効きすぎて血圧が下がりすぎると、注意が必要なケースもあります。脳血流を調節する機能が低下している高齢者では、血圧が下がりすぎると脳への血流が不足して認知機能に悪影響を及ぼす可能性や、起立性低血圧と認知機能低下の関連を示す報告もあるためです。
一番大切なのは、医師の指導のもとで血圧を適正なコントロールすることです。自己判断で薬をやめず、適切に管理することが、認知症予防につながります。
降圧剤を飲んでいる人がグレープフルーツジュース以外に注意すべき食事はありますか?
伊藤 陽子(医師)
降圧剤を飲んでいる方は、グレープフルーツジュース以外に以下のような食事に注意しましょう。
・グレープフルーツと同様にカルシウム拮抗薬の作用を強める可能性のある、夏みかん・ブンタン・はっさくなど
・カルシウム拮抗薬の作用を弱める可能性のある、セントジョーンズワート(健康食品)
・血圧を上げる可能性のある、塩分の多い食事
・肥満を招き血圧を上げやすくする、脂質の多い食事
ただし、柑橘類でもみかんやネーブル、レモン、バレンシアオレンジなどは、降圧剤への強い影響を心配する必要はありません。基本的には、バランスよく栄養を摂り、食べすぎないことが大切です。気になる点は主治医や、医療機関に在籍していれば管理栄養士へ相談してみましょう。
まとめ 血圧の薬における副作用が起きたら主治医へ相談しよう!
どの薬にも副作用が起こる可能性はあるため、血圧の薬でも副作用が起こる可能性はあります。
代表的な副作用は、血圧降下によるふらつきやめまい、カルシウム拮抗薬のむくみや動悸、ACE阻害薬の空咳などですが、どのような副作用が起こるかは人によって異なります。
薬を服用していて気になる症状が出た場合は、自己判断で薬をやるまえにまずは主治医へ相談しましょう。
「血圧の薬における副作用」で考えられる病気と特徴
「血圧」から医師が考えられる病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
循環器系
高血圧を放置すると、脳や心臓、血管などの重い病気のリスクが上昇します。高血圧を指摘されたら、必ず内科や循環器内科を受診しましょう。
「血圧の薬における副作用」の関連症状
「血圧」から医師が考えられる症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- ふらつき
- めまい
- だるさ
- 頭痛
以上のような症状がみられた場合、血圧上昇による症状、もしくは使用している降圧剤による副作用の両方の可能性が考えられます。まず気になる症状がある場合には主治医に相談してみましょう。自己判断は時に危険な場合もあるため、電話で確認をするか外来を受診することをお勧めします。
参考文献
- 厚生労働省.重篤副作用疾患別対応マニュアル.低カリウム血症
- 厚生労働省.重篤副作用疾患別対応マニュアル.血管性浮腫
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この記事の監修医師

伊藤 陽子 医師
浜松医科大学医学部卒業。腎臓・高血圧内科を専門とし、病院勤務を経て2019年中央林間さくら内科開業。相談しやすいクリニックを目指し、生活習慣病、腎臓病を中心に診療を行っている。医学博士、産業医、日本内科学会総合内科専門医、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本医師会認定産業医、公認心理師。


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