通学の高校生が多い朝の肥薩おれんじ鉄道出水駅。鉄路は住民生活に欠かせない=1月16日、出水市
鹿児島県薩摩川内市と熊本県八代市を結ぶ第三セクターの肥薩おれんじ鉄道が持続可能な運行へ正念場を迎えている。2004年の九州新幹線一部開業に合わせ、JRから経営分離された並行在来線を担ってきた。発足当初からの赤字経営脱却が求められる中、近年は運転士不足が顕在化。沿線の人口減や鉄道施設の老朽化に歯止めがかからず厳しい状況が続く。住民の移動と街のにぎわいを支える地域鉄道の役割を考える。(連載「正念場のおれ鉄 かごしま地域交通②」より)
1月16日午前6時20分過ぎ、鹿児島県出水市の肥薩おれんじ鉄道出水駅。薩摩川内市方面行きの下り列車を待つ高校生が集まり始めた。到着した列車は3両編成。約160人が乗車できる。通常は2両のところ、昨年2月から続く運転士不足による減便の影響を和らげようと、9月以降は増両して対応している。
薩摩川内市の川内高校に通う2年の山野瑛斗(あきと)さんは「減便で不便になった。新幹線で通学するより安いし、移動手段には欠かせない」と話す。
出発時、数人だった車内は、駅に着くたびに学生が乗り込みにぎやかになった。5駅目の折口駅を過ぎる頃には80人ほどとなり、席はほぼ埋まっていた。
大学入学共通テストを翌日に控えていたせいか、参考書と向き合う姿が多く見られた。「寒さに負けず頑張って。受験の成功をお祈りします」。終点が近づくと、車内放送が流れた。地域の鉄道会社らしい粋な計らいに映る。
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おれんじ鉄道は、九州新幹線の整備に伴いJR九州から分離された不採算区間(熊本県八代-川内、117キロ)を引き継いだ。当初から厳しい経営が見込まれていた点は否めない。
2024年度の利用者は103万9000人、旅客運輸収入は3億5700万円。開業時の04年度188万1000人、5億2400万円と比べると、それぞれ45%、32%減っている。経常黒字は一度もなく、累積赤字は4億7400万円に上る。
国勢調査によると、鹿児島、熊本両県の沿線7市町の人口は05年が37万7000人だったのに対し、20年は13%減の33万人。中でも高校生は04年度1万3600人が23年度には7900人と4割減少した。利用者の約7割を通学定期が占めるだけに経営への打撃は大きい。
鹿児島側ではおれんじ鉄道の赤字を補填(ほてん)するため、県市町村振興協会の基金を活用した全県的支援を13年度から10年計画で実施した。期限を迎え、県と出水、阿久根、薩摩川内の沿線3市は、23年度から5年間の延長協力を取り付けた。ただし「今回限り」と条件が付いた。
“次”はない状況の下、一層の経営努力が迫られる。とはいえ、収入源の一つである観光列車の「おれんじ食堂」は運転士不足で昨春から運休したままだ。中村誠希社長は「増収しようにも人がいない」とこぼす。
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「おれんじ鉄道の存続は沿線の活性化に欠かせない」。両県と沿線7市町などは25年6月、鉄道を中心とした交通体系の将来像を示す地域公共交通計画(25~35年)を策定した。定期外利用者を23年度の24万2000人から最終年までに1.5倍の35万9000人に伸ばす目標を掲げる。
「正直、挑戦的な数字だ」と中村社長。沿線人口が右肩下がりの中、利用者の現状維持さえ危うい。「実現には利便性向上を積み重ね、沿線外から人を呼び込む工夫が欠かせない」と説明する。
計画にはバス事業者と運賃・ダイヤを調整する共同経営、駅周辺の二次交通充実を図る公共ライドシェアの採用、商工関係者と連携したツアー商品の企画などが盛り込まれている。いかに地域を巻き込めるかが課題だ。


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