意外と知らない「航続距離」の世界
燃費性能を示す客観的な指標である「WLTCモード燃費(カタログ燃費)」は、クルマ選びの際に大いに参考とすべきものです。
しかし、実際にクルマを使うなかでは、航続距離も重要です。
たとえば、「日本で一番売れているクルマ」であるホンダ「N-BOX」は、WLTCモード燃費が21.6km/Lで、タンク容量が27Lであることから、理論上の航続距離は583kmとなります。
一方、N-BOXと比較されることの多い「フィット」のガソリン車は、WLTCモード燃費は18.7km/LとN-BOXに劣るものの、40Lのタンク容量を持つことから、航続距離は748kmにもおよびます。
そのため、長距離走行が多いユーザーや近隣にガソリンスタンドが少ない地域に住むユーザーにとっては、N-BOXではなくフィットのガソリン車を選ぶほうがメリットが大きいかもしれません。
ただ、航続距離はカタログなどに明確に記載されているわけではありません。
そこで今回は、諸元表に記載された「WLTCモード燃費」「タンク容量」「充電電力使用時走行距離」などをもとに、航続距離のランキングをつくってみました。
なお、対象は「2026年3月現在に新車で購入可能な国産車」です。
【第10位】ホンダ「ZR-V」(1260km)
8〜10位は主力ハイブリッドモデルがずらり
第10位には、2.0Lのハイブリッドを搭載するホンダのミドルクラスSUV「ZR-V」がランクインしました。
ZR-VのWLTCモード燃費は22.1km/Lと、30.2km/Lのフィットや24.2km/Lの「シビック」よりやや劣ります。
ただ、タンク容量はフィットとシビックが40Lであるのに対し、ZR-Vは57Lと大きく上回っていることが、航続距離にも反映されるかたちとなりました。
なお、2026年2月に登場した「CR-V」(ハイブリッド)は、WLTCモード燃費が19.8km/L、タンク容量が57Lであることから、航続距離は1129kmとなっています。
第9位にランクインしたのは、ステーションワゴンのトヨタ「カローラツーリング」です。
1.8Lのハイブリッドを搭載したカローラ ツーリングは、ベースグレードにあたる「X」のWLTCモード燃費が29.5km/Lともっとも良好です。
タンク容量は全グレード共通で43Lとなっていることから、航続距離は1269kmという計算になります。
これは、東京ー大阪間を往復しても余裕があるほどであり、まさに「ツーリング」の名を表していると言えそうです。
【第8位】トヨタ「カローラスポーツ」(1290km)
第8位は、同じくトヨタのハッチバック「カローラスポーツ」です。
搭載されているパワートレインやタンク容量は第9位のカローラツーリングと同様ですが、重量の違いなどからWLTCモード燃費は30km/Lとなっています。
このわずか0.5km/Lの違いが、カローラ スポーツとカローラ ツーリングのあいだに20kmの航続距離の差を生むこととなりました。
【第5位】トヨタ「ランドクルーザー70」(1313km)
5〜7位には“意外なモデル”もランクイン
カローラ スポーツを僅差で上回って第7位にランクインしたのは、トヨタ「ヤリス」のハイブリッド車でした。
1.5Lのハイブリッドを搭載する「X」は、WLTCモード燃費が36.0km/Lと国産車でもトップクラスの性能を誇ります。
そして、その燃費性能に36Lのタンク容量が組み合わされることで、航続距離は1296kmとなりました。
なお、ヤリスのガソリン車は、WLTCモード燃費が20.2km/L、タンク容量が40Lであるため、航続距離は808kmとなっています。
【第6位】トヨタ「カローラ」(1299km)
カローラツーリングとカローラスポーツがランクインするのであれば、やはりセダンの「カローラ」もランクインするのは必然です。
搭載されるパワートレインが1.8Lのハイブリッド、タンク容量が43Lであるという点はそのほかのカローラシリーズと共通していますが、セダンというボディタイプが奏功したのか、WLTCモード燃費は30.2km/Lと「三兄弟」のなかではトップです。
そのため、航続距離も1299kmとカローラツーリングとカローラスポーツをわずかに上回る結果となりました。
【第5位】トヨタ「ランドクルーザー70」(1313km)
意外に思われるかもしれませんが、第5位には「ランドクルーザー70」がランクインしました。
2.8Lのディーゼルエンジンを搭載するランドクルーザー70のWLTCモード燃費は10.1km/Lと、お世辞にも良好とは言えません。
しかし、130Lという乗用車としては随一のタンク容量により、多くのエコカーをしのぐ航続距離1313kmを記録しています。
ランドクルーザー70が活躍する地域では数百kmにわたってガソリンスタンドがないことも多く、航続距離の長さが生命線となります。
そういう意味では、この航続距離は「どこへでも行き、帰ってこられるクルマ」であるランドクルーザーシリーズのコンセプトを体現していると言えそうです。
【第2位】マツダ「CX-80」(1421km)
2〜4位は? “エコカーの代名詞”が1位ならず、マツダが大健闘
第4位には、2026年2月に登場したばかりの「RAV4 PHEV」がランクインしました。
2.5Lのプラグインハイブリッドシステムを搭載する「Z」では、WLTCモード燃費が22.2km/L、タンク容量が55Lとなっており、ハイブリッド走行のみで1221kmの航続距離を実現しています。
そこに、151kmへと大きく数値を伸ばした充電電力使用時走行距離を加算すると、RAV4 PHEVとしての航続距離は実に1372kmにもおよびます。
ちなみに、RAV4のハイブリッド車(「アドベンチャー」)の航続距離は、WLTCモード燃費が22.9km/L、タンク容量が55Lで1260kmとなっています。この数値は10位のZR-Vと同じですが、小数点以下の差でわずかにトップ10圏外となりました。
【第3位】トヨタ「プリウス」(1402km)
第3位にランクインしたのは、エコカーの代名詞的存在であるトヨタ「プリウス」です。
2023年1月に発売された現行モデルでは、スポーツカーのような低く流麗なルックスが話題となりましたが、歴代プリウスに見られる高い燃費性能も健在です。
プリウスのパワートレインには、2.0Lのハイブリッドと1.8Lのハイブリッド、そして2.0Lのプラグインハイブリッドが設定されていますが、航続距離がもっとも長いのは1.8Lのハイブリッドを搭載した「U」です。
「U」のWLTCモード燃費は32.6km/L、タンク容量は43Lであることから、航続距離は1402kmとなっています。
ただし、「U」はトヨタのサブスクリプションサービスである「KINTO」の専用グレードである点には注意が必要です。
トヨタのラインナップがほとんどを占めるなかで、第2位にランクインしたのはマツダ「CX-80」です。
「ラージ商品群」の最後をしめくくるモデルとして2024年に登場したCX-80は、国産車離れした堂々たるボディが特徴の3列シートSUVです。
タンク容量もその大きさに見合う74Lが確保されているうえ、パワートレインにはWLTCモード燃費19.2km/Lを誇る直列6気筒ディーゼルとマイルドハイブリッドを組み合わせたパワーユニットを備えています。
これらの組み合わせによって航続距離は1421kmにもおよび、マツダの本社がある広島から東京までの約800kmを余裕で走り抜けることが可能です。
【第1位】トヨタ「クラウンセダン」(1476km)
1位は誰もが知る国民的なクルマだった!?
栄えある第1位に輝いたのは、トヨタ「クラウンセダン」のハイブリッド車です。
WLTCモード燃費は18.0km/Lとまずまずですが、82Lという大型の燃料タンクを備えていることもあって、航続距離は1476kmとなります。
これは、1日の走行距離が30km程度の場合、およそ1か月半にわたって無給油で走行できる計算となります。
ビジネスシーンで利用されることの多いクラウンセダンだからこそ、給油の頻度が少ないということは大きなメリットになると言えそうです。
これらのランキングを見ると、航続距離の長いモデルは、燃費性能の良さだけではなくタンク容量の大きさも兼ね備えていることがわかります。
ちなみに、輸入車をくわえてもこのランキングに大きな変動はなく、航続距離の長さが国産車の大きな強みとなっているようです。
航続距離の長さは、給油の少なさに直結します。ガソリンスタンドが年々減少しつつあることを考えると、今後は航続距離もクルマ選びのひとつの基準となっていくのかもしれません。
(終わり)


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