厚生労働省が2026年8月5日に公表した被保護者調査(令和8年5月分概数)によると、生活保護を受けている人は197万237人でした。前年の同じ月に比べ2万624人、1.0%の減少です。
生活保護というと生活費の話が中心になりがちですが、医療保険の扱いも変わります。
国民健康保険法第6条第9号は、生活保護法による保護を受けている世帯に属する人を国民健康保険の被保険者としないと定めています。後期高齢者医療も、高齢者の医療の確保に関する法律第51条第1号で同じ扱いです。
この記事では、保護が始まると医療保険の資格がどう動くのかと、医療費がどう支払われるのかを見ていきましょう。
ココがポイント
1. 生活保護を受けると国民健康保険の被保険者から外れる
はじめに、医療保険の資格がどうなるのかを確認します。
1.1 国民健康保険法第6条第9号に定められている
国民健康保険法第6条では、被保険者としない人を号ごとに定めています。その第9号が「生活保護法による保護を受けている世帯(その保護を停止されている世帯を除く。)に属する者」です。
保護が始まると国民健康保険の資格を失い、保護が廃止されると再び加入することになります。世帯に属する人という書き方ですので、判定は世帯単位です。
1.2 後期高齢者医療も同じ扱いになる
75歳以上の方などが加入する後期高齢者医療制度についても、高齢者の医療の確保に関する法律第51条第1号に同じ内容が書かれています。生活保護法による保護を受けている世帯に属する人は、後期高齢者医療の被保険者としないという規定です。
どちらの制度も、保護を停止されている世帯は除かれます。停止と廃止では扱いが違いますので、この点は条文どおりに読む必要があります。
保護の開始と廃止にあわせて、医療保険の資格が動きます1/2

出所:e-Gov法令検索「国民健康保険法」および同「高齢者の医療の確保に関する法律」をもとにLIMO編集部作成
2. 医療費は医療扶助として直接医療機関に支払われる
では、生活保護を受給する世帯は医療をどう受けることになるのでしょうか。
2.1 本人負担はなく、保険料の納付もない
厚生労働省によると、医療サービスの費用は生活保護の扶助のひとつである医療扶助でまかなわれ、費用は直接医療機関へ支払われます。本人負担はありません。
国民健康保険や後期高齢者医療の被保険者ではなくなりますので、その保険料を納めることもなくなります。窓口で自己負担を払い、保険料を納めるという流れとは、お金の動き方が変わるわけです。
2.2 介護サービスの費用も介護扶助として直接支払われる
介護についても同じ考え方で、介護サービスの費用は介護扶助として直接介護事業者へ支払われ、本人負担はありません。
ほかの扶助は、生活扶助が基準額で、住宅扶助が定められた範囲内で実費というように、種類ごとに支給の形が決まっています。扶助は全部で8種類あります。
扶助の種類によって、支給の形が変わります2/2

出所:厚生労働省「生活保護制度」をもとにLIMO編集部作成
3. 年金は収入として認定され、差額が保護費になる
医療保険とあわせて、年金との関係も見ておきましょう。
3.1 年金や手当は先に活用することが前提
厚生労働省によると、生活保護は世帯単位で行い、世帯員全員がその利用し得る資産、能力その他あらゆるものを最低限度の生活の維持のために活用することが前提です。
このうち「あらゆるものの活用」について、厚生労働省は「年金や手当など他の制度で給付を受けることができる場合は、まずそれらを活用してください」と説明しています。年金を受け取れる方は、先に受け取ることになります。
3.2 年金がある分だけ保護費は少なくなる
そのうえで、世帯の収入と厚生労働大臣の定める基準で計算される最低生活費を比べ、収入が最低生活費に満たない場合に保護が適用されます。支給される保護費は、最低生活費から収入を差し引いた差額です。
年金は収入として認定されますので、年金額が多いほど保護費は少なくなります。年金と保護費を足して受け取れる、という形ではありません。
4. 被保護世帯の55.3%は高齢者世帯
実際にどのような世帯が受けているのかも、数字で確かめておきます。
4.1 令和8年5月の被保護実世帯数は164万1803世帯
冒頭でふれた197万237人は、厚生労働省の被保護者調査(令和8年5月分概数)による数字です。同じ資料で世帯の数をみると、被保護実世帯数は164万1803世帯でした。
前年の同じ月から3953世帯、0.2%の減少です。保護率は人口百人あたり1.60%でした。
4.2 高齢者世帯90万3908世帯のうち単身は84万4908世帯
世帯類型別にみると、総数163万3375世帯のうち高齢者世帯が90万3908世帯で55.3%を占めます。このうち単身世帯が84万4908世帯、2人以上の世帯が5万9000世帯です。なお世帯類型別の集計は保護を停止されている世帯を含まないため、総数が先ほどの164万1803世帯とは異なります。
高齢者世帯を除く世帯は72万9467世帯で44.7%となっており、内訳は障害者・傷病者世帯が25.5%、その他の世帯が15.8%、母子世帯が3.4%でした。高齢の単身世帯が多いという形は、保険料の窓口にいた頃の感覚とも重なります。
5. 【確認したいこと】相談の窓口は福祉事務所の生活保護担当
自分が対象になるかどうかは、資料だけでは判断できません。
5.1 町村部では都道府県が福祉事務所を設置している
厚生労働省によると、生活保護の相談・申請窓口は現在住んでいる地域を所管する福祉事務所の生活保護担当です。福祉事務所は市(区)部では市(区)が、町村部では都道府県が設置しています。
福祉事務所を設置していない町村に住んでいる場合は、町村役場でも申請の手続きができるとされています。一部、福祉事務所を設置している町村もあります。
5.2 医療保険の資格については保険の窓口でも確かめられる
保護の開始や廃止にともなう国民健康保険・後期高齢者医療の資格の切り替えは、住んでいる市区町村の保険の担当窓口でも確認できます。保険料の精算が生じることもありますので、日付を控えておくと話が早く進みます。
あわせて、ご自身の年金の見込額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で先に確かめておきましょう。収入がいくらになるかが分かってから相談したほうが、話の見通しが立ちやすくなります。
6. まとめにかえて
生活保護を受けている世帯に属する人は、国民健康保険の被保険者としないと国民健康保険法に定められています。後期高齢者医療も同じ扱いで、いずれも保護を停止されている世帯は除かれます。
医療費は医療扶助として直接医療機関へ支払われ、本人負担はありません。介護サービスの費用も同じように介護扶助でまかなわれます。
年金は収入として認定され、最低生活費との差額が保護費になります。判断に迷ったら、住んでいる地域の福祉事務所の生活保護担当と、市区町村の保険の担当窓口に相談してみてください。
自治体で国民健康保険と後期高齢者医療の保険料を計算していた頃、資格の得喪はいつも日付との勝負でした。保護の開始日や廃止日がずれると、保険料の計算もやり直しになります。


コメント