皇室典範改正案が衆議院本会議で可決され、参議院での審議を経て今の国会で成立する見通しです。この改正案が成立した場合、皇室は将来どのように変わるのか、専門家の指摘やシミュレーションをもとに日本テレビ社会部・皇室担当の森浩一デスクと確認していきます。
■「将来の女系・女性天皇の可能性を取り除く意図が透けて見える」

改正案の中でも野党からの異論が残っているのが「旧11宮家から15歳以上の未婚の男系男子を養子に迎える」という案です。「養子本人に皇位継承権はない」としていますが、「養子の子孫の男子に皇位継承権を与える」とした部分が特に問題視されています。
本来、皇室典範改正の議論は「皇族数の減少をどう食い止めるか」というものだったはずが、「皇位継承」についても踏み込んだ内容となったため、野党から批判の声があがりました。
皇室制度に詳しい所功京都産業大学名誉教授は「何が何でも男系男子による継承を守り抜く、将来の女系・女性天皇の可能性を取り除くという政府・与党や保守的な党派の意図が透けて見える」と指摘しています。
さらに、今の皇室典範では皇太子、皇太孫以外の皇族には皇籍離脱が認められていますが、改正案では養子として皇室に入った人には皇籍離脱を認めないとしています。この点も所氏は問題視しており、養子の男系男子の子どもに「皇位継承権」を与えるための「露骨な拘束」だと指摘しています。
皇族になると選挙権や職業選択の自由などが失われますが、何かあっても一般国民に戻ることが許されないということになります。
■「30年後」のシミュレーション

今回の改正案では「見直しは30年後に行う」と付則に盛り込まれています。所氏は、この改正案のままで進んだ場合、30年後の皇室がどうなるかのシミュレーションを行いました。
それによりますと、30年後の2056年、天皇陛下は96歳、皇后さまは92歳、愛子さまは54歳になられています。仮に愛子さまが結婚したあと皇室に残られたとしても、その夫も子どもも「一般国民」のままで、たとえ男のお子さまが生まれても「皇位継承権はありません」。
一方、悠仁さまは49歳で、もし即位していれば天皇となられています。仮に結婚され男のお子さまが生まれていれば、悠仁さまに次ぐ皇位継承者となりますが、もし男の子が生まれなければ、今の天皇家の流れは途絶えることになります。
■「『木に竹を接ぐ』非常に危うい」

旧宮家から養子として入った皇族はどうなるのでしょうか。改正案では、養子に入った旧宮家の男系男子が一般国民の妻を迎えた場合、その妻は皇族となります。さらに養子に子どもが生まれた場合、その子どもは男女問わず「皇族」となり、男の子であれば「皇位継承権」を得ます。
もし悠仁さまに男のお子さまがいなければ、この養子の子孫が将来の天皇となりうるのです。この点について所氏は次のように話しています。
所功 京都産業大学名誉教授
「一言で言ってしまうと現在の本流の皇室が消えれば、傍流の伏見宮系・旧宮家子孫の皇室が、新たに作られて、それが『木に竹を接ぐ』形で、できてしまうという非常に危ういことになることを今制度化しようとしているんだと」
■天皇陛下と旧宮家は36〜38親等の隔たり

先週金曜日の衆議院の委員会で、宮内庁の緒方次長は「天皇陛下と旧宮家の間には36親等から38親等の隔たりがある」ことを明言しました。
また、養子となってもその人物と配偶者が男の子が生まれることを期待されるプレッシャーがなくなるわけではありません。所氏は「そういう過酷な運命を押し付けるような事柄がどれほど非人間的なことかもっと思いやる必要がある」とも指摘しています。
改正案が「国民の理解」を得ているかどうかも重要なポイントです。天皇陛下も先月の記者会見で、制度については言及を控えたいとしつつ「国民の皆さんの理解が得られるものとなることを望んでおります」と述べられています。
■「象徴天皇とは何かを念頭に」

国民は皇室のあり方にどういうことを期待しているのでしょうか。元宮内庁長官の羽毛田信吾氏は2001年からおよそ11年、宮内庁次長、長官として上皇さまを支え、象徴天皇としての在り方を間近で見つめてきました。今回の改正案については答える立場にないと前置きした上で、こう話しています。
羽毛田信吾 元宮内庁長官
「皇位継承の問題にしろ、それから皇族数確保の問題にしろ、やっぱりその根っこのところでは象徴天皇を今後も引き継いでいかなければならない。象徴天皇というのは何であるか。常にきっちり念頭に置いて検討していかなければならないだろうと思いますね。もちろん血統ということも大事ですけれども」
羽毛田氏は、将来の皇室を考える上で大切なのは「象徴天皇について国民の理解と共感を得ることだ」と話しています。そして、忘れられない「象徴天皇としての姿」として、上皇さまが東日本大震災の直後のお見舞いで丁寧に被災者に寄り添う姿や、戦没者慰霊で各地を訪れ祈りを捧げ、平和の尊さを身をもって示そうとされた姿をあげ、「こうした象徴天皇像こそが多くの国民が期待する在り方だ」としています。
■改正後も議論は可能

改正案が今の国会中に成立した場合、今後は議論の余地がなくなるわけではありません。先週の衆議院の議論では木原官房長官が次のように明言しています。
木原稔 官房長官
「将来の皇位継承の在り方について、立法府における将来の検討を先取りしたり縛るような趣旨ではない」
この言葉通りであれば、今後、国会で改めて「皇位の安定的継承」の方策について議論することは可能で、衆議院の付帯決議にも「引き続き検討する」と盛り込まれています。つまり「男系男子主義を守るのか、女系・女性天皇を容認していくのか」ということも含めて議論し、皇室典範をさらに改正することも不可能ではありません。
憲法が定めるように、天皇制は「日本国民の総意」に基づく国の根幹に関わる問題です。法案が成立したから終わりということではなく、国民一人ひとりが皇室制度をしっかりと見つめ、おかしいと思ったら声を上げていくことも必要だと考えられます。
(7月13日放送『news every.』より)


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