列島誕生以来、地震・噴火・津波などの自然災害の脅威に絶え間なくさらされてきた災害大国・日本。いくつもの巨大災害が、日本史上にその名を残してきた。平安時代を揺るがした「貞観の大津波」、近世では「宝永の富士山噴火」や「安政南海地震」、近現代では「関東大震災」や「阪神淡路大震災」、そして「東日本大震災」……。歴史を大きく塗り替えた自然災害はなぜ発生し、日本にどのような影響を与えてきたのか。浮かび上がる「歴史の法則」とは――壮大なスケールで日本史を捉えなおす新連載!
本記事は、『日本史を地学から読みなおす』(鎌田浩毅・著)を一部抜粋・再編集したものです。
旧石器時代から縄文時代へ
約30万年前にアフリカで出現した人類(ホモ・サピエンス)は、5万年前ごろにアフリカを出て、世界中へと拡散していきました。そして約3万8000年前、人類はようやく日本列島にやってきました。最初の日本人たちです。
当時の人々は石を打ち欠いてつくった打製石器や、動物の骨や角からできた骨角器を使い、狩猟・採集生活を送っていました。この時代は、旧石器時代とよばれています。
およそ7万年前から、地球全体が寒冷な時期(氷期)に入りました。日本も例外ではありません。最も寒冷化が進んだ2万5000年前ごろの日本の年平均気温は、現在よりも10度以上低かったと推定されています。
寒冷化のピークを過ぎた2万年前ごろからは、少しずつ温暖化が進んでいきます。そして約1万年前にようやく氷期は終わり、現在と同じような気候になりました。そんな状況の中、日本では1万6000年前ごろから人々が土器を使い始めます。土器に縄を押しつけて模様をつけていたことから、当時の土器は縄文土器とよばれています。縄文時代の始まりです。
縄文時代の日本人たちも、シカやイノシシを狩ったり、貝や魚を獲ったり、木の実を採集したりして生活する狩猟・採集生活を送っていました。ただし、基本的に移動生活を送っていた旧石器時代に対して、縄文時代になると徐々に定住生活をするようになります。年々気候が温暖になる中で、人々は狩猟・採集がしやすく暮らしやすい場所を見つけて、定住するようになったと考えられています。
巨大噴火によって消滅した縄文人
日本各地で人々が定住生活を送り始める中で、巨大な自然災害が縄文人たちを襲います。それが今から7000年も前に起きた「鬼界カルデラ」の超巨大噴火です。
鬼界カルデラは、鹿児島県の南方約50キロメートルのところにあり、大半が海に沈んでいます。カルデラの大きさは、南北約18キロメートル、東西約20キロメートルにおよびました。
7300年前、この地で海底火山の超巨大噴火が発生したのです。火砕流は猛烈なスピードで海をこえ、鹿児島県南部に到達しました(図「鬼界カルデラの巨大噴火」)。
鬼界カルデラの巨大噴火(JAMSTECウェブサイトを基に作成)
当時、この地域には独自の模様の縄文土器をつくる人々が暮らしていました。しかし、火砕流から逃れることはできず、鹿児島県南部に暮らしていた縄文人たちは壊滅的な被害を受けます。
その後、この地に移り住んできた縄文人たちがつくる土器の模様は、以前とは異なるものになりました。かつてこの地で育まれていた独自の縄文文化が、噴火によって完全に失われてしまったのです。
7300年前の噴火で発生した火山灰は、風に乗って東北地方にまで到達しました。また、膨大な噴出物が海面を動かし、巨大な津波を発生させたこともわかっています。鹿児島県南部には30メートルもの高さの津波が到達したと推定されています。
カルデラをつくるような超巨大噴火は、この7300年前の鬼界カルデラの噴火以降、世界のどこでも発生していません。鬼界カルデラの超巨大噴火は、世界的に見ても最も新しいカルデラ噴火であり、過去1万年間に起きた噴火の中で最大規模の噴火なのです。
日本に8つもある「巨大カルデラ火山」
日本には、巨大噴火の痕跡であるカルデラが数多く存在しています。その中でも、過去10万年以内に形成され、今後も活動の可能性がある巨大カルデラ火山が8つも存在します。それはすでに紹介した阿蘇、姶良、鬼界の3つに、屈斜路、支笏、洞爺、十和田、阿多を加えた8つです(図「日本の主な火山と巨大カルデラ」)。
日本列島に人類が住み着いたあとに発生したカルデラ噴火は、2万9000年前の姶良カルデラの噴火と、7300年前の鬼界カルデラの噴火の2つです。しかし、歴史をさかのぼると、日本列島では、平均しておよそ7000年に一度の頻度で、カルデラができるほどの巨大噴火が発生してきました。
7300年前の鬼界カルデラの例でわかるように、ひとたびカルデラ噴火が起きると、火口周辺の生物たちは全滅し、津波や火山灰の影響は日本全土におよびます。現代の日本でそのような噴火が起きたときの人的被害および経済的な損失はきわめて甚大です。
日本で最も新しいカルデラ噴火が起きてから、すでに7300年が経過しています。確率的には、新たなカルデラ噴火が起きてもおかしくない時代に突入しているのです。
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本連載では、地球科学者が100万年スケールで激動の日本列島を描き、歴史から学ぶべき教訓をお伝えしていく。


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