防衛費「GDP比3.5%」報道が波紋 軍拡で戦争リスク高まる?…専門家の見解割れる | きばいやんせ!鹿児島

防衛費「GDP比3.5%」報道が波紋 軍拡で戦争リスク高まる?…専門家の見解割れる

【写真・画像】防衛費「GDP比3.5%」報道が波紋 軍拡で戦争リスク高まる?…専門家の見解割れる 1枚目

政府が防衛費のさらなる大幅増額や「GDP比3.5%」への引き上げを検討していると報じられ、波紋が広がっている。厳しい安全保障環境の中で防衛費をどこまで増やす必要があるのか、それとも軍拡競争が逆に戦争リスクを高めてしまうのか。『ABEMA Prime』では専門家を招き、防衛費増額の妥当性と抑止力、そして外交のあり方について議論した。

■防衛費は何に使われている?

防衛研究所上席研究官の高橋杉雄氏

報道で浮上した「GDP比3.5%」や「5年で70兆〜80兆円規模」という数値について、防衛研究所上席研究官の高橋杉雄氏は「決定事項ではなく、あくまで報道段階のもの」と説明。防衛省は金額ありきではなく、必要な防衛能力を積み上げた結果として予算額が決まるという考え方をとっており、今後財務省とのすり合わせを進めていく見通しだという。

高橋氏は、これほどの防衛力強化を必要とする日本の厳しい安全保障環境について、核ミサイル開発を進める北朝鮮や、台湾有事が起きた際に南西諸島が攻撃を受ける可能性などを挙げた。

また、近年の防衛費増額における切実な現場実態についても説明した。2022年に決定された5年で43兆円の防衛費のうち、35%という最大の割合が割り当てられたのは「武器・弾薬、燃料、整備部品」といった維持費だった。従来は予算不足から、複数の機体から部品を抜き取って1機を飛ばす「共食い整備」も行われていたといい、この5年間でまずはそうした状態を元に戻すことに重点を置いてきたと説明した。

さらに、少子化に伴い自衛官の数が20年後には現在の23万人から13万人へと約4割も減少する見通しに触れ、中国が過去4年で航空自衛隊全体に匹敵する300機以上の戦闘機を増強する中、限られた人材と予算でいかに効率的な抑止力を構築するかが最大の課題であると語った。

■財源なき増額への疑問と「米国の思惑」

新外交イニシアティブ(ND)事務局長の巖谷陽次郎氏

一方、新外交イニシアティブ(ND)事務局長の巖谷陽次郎氏は、防衛費増額のプロセスについて、日本国内で議論を積み重ねた結果ではなく、アメリカからの要請が大きく影響しているとの見方を示した。2020年のトランプ政権下で当時のエスパー国防長官から同盟国などに防衛費を「GDP比少なくとも2%」に増やすよう求められたことについても触れ、その後日本国内でも防衛費増額がイシュー化(争点化)したと指摘。今回の3.5%という数字についても米国のNATOに防衛費増額を求めてきた流れが日本にも波及しているとの見方を示した。

また、財源の不透明さについても懸念を表明。2%への引き上げ段階でさえ増税議論や戦後避けてきた防衛費への国債充当が行われている現状に触れ、さらなる増額に対してどのような財源を充てるのかをきちんと議論する必要があると訴えた。

米国が日本に防衛費増額を求める背景について、高橋氏は対中国の軍事バランスを挙げた。米国単独では世界各地への対応で限界があり、当事国である日本や台湾、韓国がまず一義的な責任を負うべきだという米側の思惑があるとした。同時に、米中の艦船数が10対7である場合、米軍が半分を東アジアに割けば5対7となるが、日本がこの差である「2」を埋めれば7対7となり、抑止につながるとの考えを示した。

■軍拡は戦争を招くか? 問われる「外交」の実効性

image

防衛力強化をめぐり、巖谷氏は「安全保障のジレンマ」に警鐘を鳴らす。自国を守るための軍拡が他国の恐怖を煽り、相互の軍拡競争を加速させてしまうリスクだ。巖谷氏は過去の学術研究を引いて軍拡競争が戦争へ発展する割合の高さを示し、中国の軍事費が額自体は大きいもののGDP比では比較的低い水準にあると指摘。日本については、GDP成長率が低い中で防衛費のGDP比を2%、さらに3.5%に引き上げていくことについて「いかにちょっと異常かっていうのを考えたい」と疑問を呈し、その上で、常設の枠組みを通じた対話による外交的解決の模索を提言した。

これに対し高橋氏は、学術データの扱いや欧州の事例を挙げて反論した。軍拡データに関しては、元々の政治的対立から戦争の予兆を感じて軍事費を増やした結果として戦争に至ったケースも多く、軍事費の増加と戦争の因果関係を単純化すべきではないと指摘した。

さらに欧州の常設外交機構(OSCE)についても、OSCE発足後にボスニアやウクライナなど加盟国の中で紛争が相次いだと指摘。一方、アジアでは「朝鮮半島や台湾海峡があるのにもかかわらず、冷戦が終わってから戦争は起きていない」とした。さらに欧米からよく聞くという『OSCE至上論』に対しても、「自分たち(欧州)は平和を維持できていないではないかと指摘し続けている」と述べ、常設の外交枠組みさえあれば平和が保たれるという見方に疑問を呈した。

(『ABEMA Prime』より)

コメント