お酒をやめるとどうなる?メディカルドック監修医が男女別のやめた後の変化ややめる方法などを解説します。
お酒が飲みたくなる原因

お酒を控えたいと思っていても、飲酒への衝動を抑えにくいことがあります。まずは、その背景を確認しましょう。
ストレスを和らげるために飲んでしまう
不安やストレスを感じるたびにお酒を飲むと、つらい気持ちを和らげるために飲酒へ頼りやすくなります。一時的に気分が落ち着いても、根本的な問題は解消されません。飲酒量やタイミングを調整しにくくなり、心理的な依存につながる場合があります。
眠るためにお酒に頼ってしまう
寝酒をすると眠りにつきやすく感じる場合がありますが、眠りは浅くなり、睡眠リズムも乱れます。夜中に目が覚めたり、翌日に疲労感が残ったりすることで、再び寝酒に頼る悪循環が生じます。
飲酒を続けると脳の働きが変化する
長期間にわたって飲酒を続けると、脳内では興奮を促す働きが強まり、リラックスにつながる働きが弱まります。この状態で飲酒をやめると、不安や手の震え、発汗などの離脱症状が現れ、再び飲みたいという衝動が強くなる場合があります。
アルコール依存症になる
大量の飲酒を長期間続けると、アルコール依存症を発症することがあります。仕事や家庭生活に支障が生じていても、自分の意思だけでは飲酒を抑えにくくなります。飲酒量を減らせない場合は、病院で相談してください。
キンドリング効果
断酒と再飲酒を繰り返すと、脳の神経が興奮しやすくなります。これはキンドリング効果と呼ばれ、離脱症状や飲酒への強い欲求が徐々に強まるようになります。過去に離脱症状があった方は、自分だけで断酒を進めないでください。
お酒を飲み続けるとどんな病気を発症する可能性がある?

長期間の飲酒は、肝臓だけでなく、脳や血管など全身に影響します。ここでは、主な病気を紹介します。
アルコール関連肝疾患
長期間にわたってアルコールを分解し続けると、肝臓への負担が増え、脂肪肝や肝炎、肝硬変などのアルコール関連肝疾患につながります。女性は男性よりも、少ない飲酒量や短い期間で肝障害が進みやすい傾向があります。治療の基本は断酒です。病気の進行度に応じて、栄養管理や内科的な治療を行います。
高血圧
過度な飲酒は血圧を上げ、高血圧の発症や悪化につながります。少量の飲酒でも、高血圧のリスクが上がる可能性があります。治療の基本は、減酒または断酒です。あわせて、減塩や適度な運動などの生活習慣を見直し、必要に応じて降圧薬を使用します。
がん
アルコールや、分解中に生じるアセトアルデヒドは、細胞にダメージを与えます。飲酒によって、大腸がんや食道がん、乳がんなどの発症リスクが高まります。お酒を飲むと顔が赤くなる方が飲酒を続けると、食道がんなどのリスクが上がります。普段の純アルコール量を把握し、飲酒量を減らすことが対策の基本です。必要な検診も受けてください。
ウェルニッケ脳症
ウェルニッケ脳症は、慢性的な大量飲酒や栄養不足などによって、ビタミンB1が不足して発症する病気です。錯乱、眼球運動の異常、歩行時のふらつきなどが現れます。疑われる場合は、速やかな治療が必要です。点滴や筋肉注射によって、ビタミンB1を補充します。
アルコール依存症
アルコール依存症は、大量の飲酒を長期間続けることで脳の働きが変化し、飲酒量やタイミングを自分で調整できなくなる精神疾患です。お酒をやめたいと思っていても、自分の意思だけではやめにくくなります。治療では、飲酒状況や離脱症状のリスクを確認し、外来または入院で断酒に取り組みます。必要に応じて、薬物療法や心理的な支援、リカバリーサポートグループへの参加などを組み合わせます。
【男性】お酒をやめるとどんな変化がある?

お酒をやめると、日常生活で感じやすい変化から、将来の病気の予防につながる変化まで多く期待できます。
睡眠の質が改善しやすくなる
飲酒すると眠りにつきやすく感じる場合がありますが、睡眠は浅くなります。断酒によって睡眠リズムが整うと、日中の集中力や疲労感にも変化が現れるようになります。
血圧が安定しやすくなる
お酒をやめると、アルコールによる血圧上昇の影響が減ります。食生活や運動習慣もあわせて見直すことで、生活習慣病の予防につながります。
筋肉量の低下を防ぎやすくなる
高齢の男性では、過度な飲酒が筋肉量や身体機能の低下に関係します。断酒に加えて食事や運動も見直すことで、サルコペニアや転倒、骨折の予防につながります。
がんの発症リスクを下げられる
男性では、飲酒によって大腸がんや胃がん、前立腺がんなどの発症リスクが高まります。断酒は、長期的ながんの予防につながります。
事故やトラブルを避けやすくなる
過度な飲酒は、運動機能や判断力を低下させます。断酒することで、転倒や交通事故、公共の場でのトラブル、貴重品の紛失などを避けやすくなります。
【女性】お酒をやめるとどんな変化がある?

女性でも、男性と同様に睡眠や血圧の改善、事故やトラブルの予防が期待できます。ここでは、女性がお酒をやめることで期待できる主な変化を紹介します。
肝臓への負担を減らせる
女性は男性よりもアルコールを分解できる量が少ない傾向があります。そのため、少ない飲酒量や短い期間でも、アルコール関連肝硬変などの肝疾患につながる場合があります。お酒をやめることで、アルコールを分解する肝臓への負担が減ります。断酒は肝機能の悪化を防ぎ、肝疾患の進行を抑えることにつながるのです。
乳がんの発症リスクを下げられる
女性では、少量の飲酒でも乳がんの発症リスクが高まります。お酒をやめることで、アルコールに関連する乳がんの発症リスクを下げることにつながります。
女性ホルモンへの影響を減らせる
女性ホルモンの一種であるエストロゲンの働きも、女性がアルコールの影響を受けやすい要因の一つです。飲酒によってホルモンへの影響が続くと、心身の不調につながる場合があります。お酒をやめることで、アルコールによるホルモンへの影響を減らし、心身の状態を整えやすくなります。
出血性脳卒中のリスクを下げられる
飲酒量が増えると、男女ともに出血性脳卒中の発症リスクが高まります。特に女性では、少量の飲酒でも発症リスクが上がる可能性があります。お酒をやめることで、アルコールによる血圧上昇を抑え、出血性脳卒中の発症リスクを下げることにつながります。
赤ちゃんへの影響を避けられる
妊娠中の飲酒は、胎児性アルコール・スペクトラム障害などにつながる可能性があります。授乳中も、アルコールは母乳へ移行します。妊娠中や授乳中に飲酒を控えることで、胎児や乳児へのアルコールの影響を避けられます。
お酒をやめると血圧にどんな変化がある?

断酒直後と、離脱期を過ぎた後では、血圧の変化が異なります。ここでは、その影響を順に紹介します。
断酒直後は血圧が上がることがある
長期間にわたって大量に飲酒していた方が急に断酒すると、自律神経が過剰に働き、血圧の上昇や脈拍の増加がみられる場合があります。手の震えや発汗、動悸などを伴う場合は、病院で相談してください。
離脱期を過ぎると血圧が安定しやすくなる
離脱症状が落ち着くと、アルコールによる血圧上昇の影響が減ります。長期的には、血圧が下がり、安定しやすくなることが期待できます。
長期的には心疾患のリスクを減らせる
飲酒中や飲酒後に入浴や運動をすると、血圧が大きく変動する場合があります。断酒によって、飲酒に伴う血圧の乱高下を避けられ、心血管疾患のリスクを減らしやすくなります。
お酒をやめる方法

お酒をやめる方法は、飲酒量や離脱症状のリスクによって異なります。自分の状態に合った方法を選んでください。
飲酒量を記録する
普段飲んでいるお酒の種類や量、時間帯を記録します。飲酒が増えやすい場面や、ストレスとの関係を把握しやすくなります。
飲む量を決めて休肝日を設ける
すぐに断酒することが難しい場合は、飲酒量の上限を決め、休肝日を設けます。ビールや日本酒などに含まれる純アルコール量も確認し、無理のない範囲で飲酒量を減らしていきましょう。
炭酸水やノンアルコール飲料へ置き換える
炭酸水やノンアルコール飲料を選び、飲酒の合間に水を飲むと、お酒を飲むペースを抑えやすくなります。飲酒が習慣になっている場面では、代わりの飲み物を用意してください。
家族や周囲の支援を受ける
断酒を続けるには、家族や支援者へ相談することも必要です。地域のリカバリーサポートグループへ参加し、孤立しない環境をつくることも選択肢です。
必要に応じて病院で治療を受ける
大量飲酒を続けている方が急に断酒すると、手の震えや幻覚、けいれん、振戦せん妄などの重い離脱症状が生じることがあります。病院では、必要に応じて薬物療法を行います。一人では飲酒量を減らせない方や、過去に離脱症状を経験した方は、早めに相談してください。
「お酒をやめるとどうなる」についてよくある質問

ここまでお酒をやめるとどうなるかについて紹介しました。ここでは「お酒をやめるとどうなる」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
お酒をやめて3日〜1週間後にはどんな変化がありますか?
林 良典(医師)
お酒をやめて数日から1週間ほど経過すると、飲酒による眠りの浅さが改善し、朝の目覚めや日中の疲労感に変化を感じる方も少なくありません。また、アルコールによる脱水が減ることで、身体のだるさが軽くなる場合もあります。
ただし、日常的に大量の飲酒を続けていた方は、断酒後6〜24時間ほどで、不安や発汗、手の震え、吐き気などの離脱症状が現れることがあります。混乱や幻覚、けいれんを伴う場合もあるため、自己判断で断酒せず、病院で相談してください。
お酒をやめて1ヶ月後にはどんな変化がありますか?
林 良典(医師)
断酒から1ヶ月ほど経過すると、睡眠リズムが整い、日中の集中力や疲労感が改善しやすくなります。アルコールによる肝臓への負担が減ることで、肝機能の数値が改善する場合も多いです。血圧も安定しやすくなります。
一方で、飲酒したいという気持ちがなくなるとは限りません。断酒を続けるには、ストレスや不眠への対処法を身につけ、再飲酒のきっかけを把握することが必要です。
まとめ お酒をやめると体への負担を減らせるが、無理な断酒には注意
お酒をやめることで、肝臓への負担が減り、血圧や睡眠の改善が期待できます。がんや脳卒中、高血圧など、飲酒に関係する病気の発症リスクを下げることにもつながります。女性は男性よりもアルコールの影響を受けやすく、肝疾患や乳がん、妊娠・授乳期への影響にも配慮が必要です。
長期間にわたって大量の飲酒を続けていた方は、急にお酒をやめると重い離脱症状を起こす可能性があります。自分の意思だけでは飲酒量を減らせない場合や、手の震え、発汗、幻覚、けいれんなどがある場合は、病院へ相談してください。
「お酒」と関連する病気
「お酒」と関連する病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
肝臓の病気
アルコール性脂肪肝
アルコール性肝硬変
お酒は肝臓だけでなく、脳や血管、全身の臓器に影響します。飲酒量が増えている方や、健康診断で異常を指摘された方は、早めに病院で相談してください。
「お酒」と関連する症状
「お酒」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
手の震え
発汗
不眠
歩行時のふらつき
大量の飲酒を続けている方が急にお酒をやめると、離脱症状が現れる場合があります。幻覚やけいれん、意識の混乱がある場合は、速やかに病院を受診してください。
参考文献
新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドラインに基づいたアルコール依存症の診断治療の手引き 第1版|日本アルコール・アディクション医学会、日本アルコール関連問題学会
医療機関でのアルコール健康障害への早期介入と専門医療機関との円滑な連携に関するガイドライン|厚生労働省
この記事の監修医師

林 良典 医師
【出身大学】
名古屋市立大学
【経歴】
東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。
【資格】
医学博士、公認心理師、総合診療特任指導医、総合内科専門医、老年科専門医、認知症専門医・指導医、在宅医療連合学会専門医・指導医、日本緩和医療学会認定登録医、禁煙サポーター


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